英国のテリーザ・メイ首相と欧州連合(EU)のジャン=クロード・ユンケル委員長は昨年12月初め、英国がEU離脱(Brexit)にあたり支払う「清算金」など離脱条件でようやく合意した。これで英国とEUとの通商協議など第2段階の交渉に入れることになったが、2018年10月までのわずか10カ月間で難交渉がまとまる保証はない。交渉が不調に終われば、2019年3月末に「サドンデス離脱」の危険もある。そして、交渉の行方次第では、外資流出によるポンド危機など、英国経済は致命的な打撃を受けかねない。そこで、溺れる者は藁をも掴もうとしてか、英国は、米国の離脱で苦境にあえぐ環太平洋経済連携協定(TPP)グループが、域内外関係なく差し出してきた手を握ろうとしていると報じられている。
1月3日付米
『CNBCニュース』:「英国、Brexit後を睨みTPP加盟を検討か」
英
『フィナンシャル・タイムズ』紙の1月2日報道によると、英国はBrexit後を睨んで、TPP加盟を検討しているという。
英国のグレッグ・ハンズ貿易相(編注;閣外国務大臣)は同紙のインタビューに答えて、全く可能性がない訳ではないとコメントした。
TPPグループは昨年初め、米国のドナルド・トランプ大統領の同グループ離脱宣言を受けて崩壊寸前にあったが、残った11ヵ国が継続交渉を続け、11月に米国抜きのTPP成立を目指すことで合意している。...
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1月3日付米
『CNBCニュース』:「英国、Brexit後を睨みTPP加盟を検討か」
英
『フィナンシャル・タイムズ』紙の1月2日報道によると、英国はBrexit後を睨んで、TPP加盟を検討しているという。
英国のグレッグ・ハンズ貿易相(編注;閣外国務大臣)は同紙のインタビューに答えて、全く可能性がない訳ではないとコメントした。
TPPグループは昨年初め、米国のドナルド・トランプ大統領の同グループ離脱宣言を受けて崩壊寸前にあったが、残った11ヵ国が継続交渉を続け、11月に米国抜きのTPP成立を目指すことで合意している。
なお、もし英国がTPPに加盟するとなると、太平洋にも南シナ海にも面していない域外国として初の参加となる。
同日付フランス『欧州ニュース』:「英国、TPPに注目」
英国のリアム・フォックス国際貿易相(編注;閣内大臣)は、Brexit後の通商体制堅持のため、TPPへの加盟を検討する等様々な検討を進める意向であると表明した。
2日間の中国訪問中の同相は、『ロイター通信』のインタビューに答えて、Brexit後の英国の貿易を拡大させるための手段として、TPP加盟がどれ程有益となるか、TPPグループ代表と非公式に協議していると明かした。
なお、同相の中国訪問は、英国にとって5番目に大きい貿易相手国としての中国と、Brexit後の二国間貿易協定締結に向けての事前交渉だと言われている。
また同相は、Brexit後の世界貿易機関(WTO)における貿易協定について見直す意向であるとも表明した。
一方、1月5日付中国『チャイナ・デイリィ』:「英国は依然EU加盟国であることを自覚すべき」
英国メディア報道によると、英国はBrexit後を睨んで、今や11ヵ国となったTPPへの加盟の可能性について非公式協議を始めたという。
しかし、ここで注意すべきは、2019年3月29日にBrexitが完了するまでの移行期間において、依然EU加盟国である英国は、EU規程に基づいて域外国・グループとの協議をすることは許されないということである。
米国抜きで全く迫力のなくなったTPPグループは、英国の加盟検討を評価するかも知れない。しかし、Brexit前に英国がEUと協議せねばならない新たな通商協議は非常に困難を伴うとみられ、TPPグループと正式協議が可能となる2019年4月には、英国自身が疲労困憊してしまっている可能性がある。
ともかく、Brexit後にはEUとの関係が悪化すること必至な英国にとって、TPPは渡りに船であろうが、穿った見方をすれば“溺れる者は藁をも掴む”と言えなくもない。
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