6月26日にドイツで始まった主要7ヵ国首脳会議(G-7サミット)では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が4か月を過ぎて長期化する中、ロシアに対する圧力の強化やウクライナへの今後の支援、侵攻を背景に世界的に懸念が高まる食料危機への対応等が主要な議題となる。そして同会議冒頭、ジョー・バイデン大統領(79歳)が、エネルギー資源の次にロシアの資金源となっているロシア産金の輸入禁止を提唱している。
6月26日付
『AP通信』は、「バイデン大統領:ウクライナ軍事侵攻に伴う対ロシア制裁として新たにロシア産金の輸入禁止を提唱」と題して、G-7サミットの冒頭、ジョー・バイデン大統領が、原油・天然ガスの次にロシアの資金源となっているロシア産金の輸入禁止について強調すべきだと提唱したと報じている。
ジョー・バイデン大統領は6月25日、ウクライナ軍事侵攻の制裁で更にロシアを経済的に追い込んで孤立させるため、G-7サミットにおいてロシア産金の輸入禁止という新たな制裁を科すことの合意形成を要望した。...
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6月26日付
『AP通信』は、「バイデン大統領:ウクライナ軍事侵攻に伴う対ロシア制裁として新たにロシア産金の輸入禁止を提唱」と題して、G-7サミットの冒頭、ジョー・バイデン大統領が、原油・天然ガスの次にロシアの資金源となっているロシア産金の輸入禁止について強調すべきだと提唱したと報じている。
ジョー・バイデン大統領は6月25日、ウクライナ軍事侵攻の制裁で更にロシアを経済的に追い込んで孤立させるため、G-7サミットにおいてロシア産金の輸入禁止という新たな制裁を科すことの合意形成を要望した。
G-7首脳は6月25日、3日間にわたり開催されるG-7サミットにおいて、ウクライナ戦争で引き起こされた世界的なインフレーション問題や対ロシア制裁を如何に強化していくか等について協議する予定である。
バイデン政権高官によると、ロシア産金はエネルギー資源の次にロシアにとっての資金源であることから、これを断つことでロシアを更に苦境に追い込めるという。
バイデン大統領提言に対して、英国のボリス・ジョンソン首相(57歳、2019年就任)は、“ロシアのオリガルヒ(新興財閥)に直接的に打撃を与え、かつ、プーチン大統領による戦費捻出を困難とすることが可能となる”と称賛した。
同首相は、“これ以上プーチンの無謀を許さないため、プーチン政権の資金源を断つことが必要だ”とも付言した。
ホワイトハウスがリリースした2020年のデータによると、近年のロシア産金輸出高は190億ドル(約2兆5,650億円)とエネルギー資源取引高の次に多く、全世界の金取引高の約5%に相当するという。
そして、ロシア産金の90%相当額がG-7加盟国向けて、その中でも実に90%余りに当たる170億ドル(約2兆2,950億円)が英国向けである。
一方、ロシア産金の米国向けは、2019年に2億ドル弱(約270億円)だったが、2020年及び2021年には100万ドル(約1億3,500万円)以下まで減少している。
G-7サミットの今年の議長国のドイツが、加盟国の合意事項について6月28日に取りまとめることになるが、バイデン政権高官によると、ロシア産金の輸入禁止措置についても正式に合意文書に謳われることになるという。
なお、ウクライナ首都キーウのビタリ・クリチコ市長(50歳、元プロボクサー、2014年就任)によると、ロシア軍がG-7サミット開始の数時間前、3週間ぶりにキーウに向けてミサイルを撃ち込んできたという。
同日付『ユーロニュース』(1993年開局の欧州ニュース専門局、本拠フランス・リヨン)は、「G-7首脳、最も新しい対ロシア制裁としてロシア産金の輸入禁止措置を発表予定」として、G-7首脳らが対ロシア制裁強化の一環で、ロシア産金の輸入禁止措置を決定すると報じている。
G-7首脳はG-7サミットの初日となる6月25日、ウクライナ戦争によって引き起こされたエネルギー供給危機や世界的インフレーションを如何に対応していくか協議する予定である。
そして、対ロシア制裁を強化する一環で、G-7首脳は、新たにロシア産金の輸入禁止措置について決定する意向である。
ロシアにとって金取引は、原油・天然ガスに次ぐ資金源となっていることから、新たな制裁を発動することで、益々ロシアへの打撃となることを期待している。
なお、英国は、ロシア産金取引高190億ドル(180億ユーロ)の約90%に当たる、170億ドル相当の金を輸入しているが、ジョンソン首相は、“プーチンは無謀な戦争を続けるために資源を浪費している”とし、“今こそ彼の自己満足の行動を止めるため、その資金源をもっと枯渇させる必要がある”と強調する発言をしている。
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バルト海の入り口に位置する人口600万人近い小国デンマーク。ロシアの攻勢が始まって以来、戦争とプーチン大統領の行動が自国の安全保障に及ぼす影響を懸念している。デンマーク政府は、6月1日に欧州連合(EU)の防衛政策への参加を問う国民投票を行うことを発表した。
仏誌
『レゼコー』は、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻でデンマークが大きく舵を切ろうとしていると報じている。これまでEUの防衛政策には参加しない方針を取ってきたデンマークだが、ロシアのウクライナ侵攻後11日間のうちに、左派右派をあわせた5つの政党が3項目の防衛計画をまとめ上げた。
3月6日に発表された計画では、第一に2033年までに防衛予算をGDPの2%に引き上げることが合意された。これは、同国が米国とNATOの要請により、2024年までに達成することを約束していた閾値である。現在、防衛費はGDPの約1.4%を占めている。2%に達すると、年間180億クローネ(約3100億円)を追加で支出することになる。この財源は、他の予算項目の削減ではなく、公的債務によって賄われることになっている。
第二に、6月1日、デンマーク人は、欧州連合内で自国が享受している例外措置の一つである共通防衛政策に関する条項を葬るよう求められる。この例外規定は、1992年にデンマークがマーストリヒト条約に「ノー」を突きつけたことに端を発しており、この条約は国家主権を侵害すると考えられていた。当時、他の加盟国は、単一通貨、警察・司法協力、そして欧州防衛政策への参加からデンマークを除外することを認めた。しかし今年の3月4日に発表された世論調査では、EU防衛政策への協力に、有権者の49%が賛成し、27%が反対している。
第三に、デンマークはロシアのガスからできるだけ早い独立を目指すことが合意された。
フランスの欧州ニュースサイト『ユーロニュース』によると、現在デンマークは、例えばロシアに対する経済制裁には参加している一方で、軍事展開には参加していない。しかしフレデリクセン首相は「プーチンのウクライナへの不必要で残忍な攻撃は、ヨーロッパに新しい時代、新しい現実を告げた。ウクライナの闘いは、ウクライナだけの闘いではなく、我々の信じる価値観、民主主義、人権、平和、自由など全ての力を試すものである。」と語った。
米シンクタンク「ジャーマン・マーシャル・ファンド」の研究員であるブルーノ・レテ氏は、EUの玄関口にあるウクライナでの戦争は、27カ国にとって「目覚まし」の役割を果たしたと述べている。ドイツからデンマークまで、各国の首都が防衛戦略を見直し、地政学的環境をより意識するダイナミックが作られたという。
今回、EUは初めて、攻撃を受けている国のために殺傷力のある武器の購入に資金を提供する。欧州条約は、EUが共通予算を通じて軍事企業に資金を提供することを禁じている。そこで、加盟国は、「欧州平和ファシリティ」と呼ばれる国際基金を通してウクライナに5億ユーロ(約643億円)を提供することで合意した。
ドイツも、これまでは紛争地へ殺傷力のある武器を送ることを拒んできた。しかし今回、ウクライナ政府に対戦車兵器1000台と対空ミサイル500発を提供することを決定している。
フィンランドとスウェーデンという伝統的な非同盟国も、ロシアの侵攻に対抗するウクライナ軍を支援するために武器を提供している。EU非加盟国のスイスでさえ、中立性を一部放棄してロシアに金融制裁を課している。
フォン・デア・ライエン欧州委員長は先週、欧州議会で「欧州の安全保障と防衛は、この20年間よりもこの6日間の方がより進化している」と述べた。
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