軍事政権に揺れるタイ (2016/05/13)
タイでは軍事クーデターから2年が経過し、軍事政権プラユット首相が示す民政復帰に向けたロードマップ(工程表)に従い、新憲法草案の国民投票を8月7日に控えており、反対派は予断を許さない状況である。軍に250議席の決定権を与えるとする憲法案は可決されれば今後も軍政が続くと懸念されている。度重なる反政府デモ活動家の拘束・逮捕や表現の自由への弾圧から、反政府派拠点で東北地方の赤シャツ隊(タクシン派支持基盤)もひっそりとしている。人権問題への批判から米国との関係が冷え込む中、フェイスブックはタイ市民の個人データをタイ政府から保護する方針を発表、いかなる国家政府にも個人情報を開示しないとしている。
5月13日付
『ロイター通信』は「タイ反政府派が国民投票を控えて沈黙」との見出しで以下のように報道している。
・軍の勢力を増強させると批判される憲法草案に関して議論する余地も暫定政権は禁止している。この軍事暫定政権を批判するデモに参加した十数名は2週間拘束され、解放後も政治的活動を制限される。
・3月、軍事政府は兵士に市民を逮捕や拘束できる権限を与え、軍部がその資産の差し押え、家宅捜索、逮捕、尋問できる法令を定めた。...
全部読む
5月13日付
『ロイター通信』は「タイ反政府派が国民投票を控えて沈黙」との見出しで以下のように報道している。
・軍の勢力を増強させると批判される憲法草案に関して議論する余地も暫定政権は禁止している。この軍事暫定政権を批判するデモに参加した十数名は2週間拘束され、解放後も政治的活動を制限される。
・3月、軍事政府は兵士に市民を逮捕や拘束できる権限を与え、軍部がその資産の差し押え、家宅捜索、逮捕、尋問できる法令を定めた。これを受け米国務省は軍事政府の権限を国政に留めるよう促した。米国は軍政発足以後はタイの民政化への先行きを案じ両国関係を縮小。
・表現の自由を取り締まる行為は8月の新憲法案の国民投票で国民の意思を問う用意が軍政にあるのかとの批判を生む。軍政部報道官はその批判を否定し、「国民は思う存分反論できる」と述べている。
・軍政府は政権掌握以来、東北部のイサーン地方に目を光らせてきた。広大な当地はタクシン元首相のお膝元でその支持者ら「赤シャツ」隊の基盤となっている。以前イサーン地方で道路脇や軒先でよく見られた赤い旗はクーデター以来見受けられず、反軍事政府派が受けているような仕打ちを恐れひっそりしている。態度矯正プログラムに呼ばれた者は二度と違反しないという誓約書に署名すれば解放されるをという。
・先月政府は、デモや抗議活動などをした再犯者に対し「再教育キャンプ」での態度矯正に踏み込むと発表。
・赤シャツ隊によると、抗議側はクーデター以後、明確な指導者は殆どおらず、国民投票への抗議が難航しているという。赤シャツ隊が名乗っていた反独裁民主戦線(UDD)の報道官は、「出来る事といえばTVに出て公正な国民投票を訴えたり、Tシャツ等にメッセージを書いたり、国民投票でノーと言うことだ」という。
・政府は国民投票を議論するために軍部候補生を全国各地に派遣するとしており、これは選挙規定に抵触しないとしている。」
5月11日付
『ヤフーニュース』(AP通信引用)は、「フェイスブック、タイユーザーのデータは政府に渡らないと公言」との見出しで以下のように報道している。
・フェイスブックは、ソーシャルネットワークがタイ軍事政権から個人情報を守り切れていなかったという懸念の高まりから、タイのユーザーの個人データを保護する方針。
・フェイスブックアジア太平洋局報道官の声明では、「アカウント情報とシステムの安全を期し、タイ政府に情報は与えない。規定に従いタイ政府のデータ要求やサイトのブロック要請を公表し、対処する。最新システムとツールにより情報を守り、いかなる政府国家にも個人データへのアクセス件を与えない」とした。
・先月末、プラユット首相をからかったフェイスブックの投稿がコンピュータ犯罪法にあたるとして8人が当局に逮捕された。更に重刑の王室侮辱罪に問われ別の2人が起訴。警察が証拠として個人的メッセージのやりとりにアクセスしていたと見られている。
・人権ウォッチによると、扇動により軍政府はこれまで46人を逮捕。
・「フェイスブック内での政治風刺で国民を弾圧するとはタイに政治的議論がないということだ」と人権ウォッチアジア代表ブラッド・アダム氏。
・フェイスブックでの度々の投稿から逮捕者が出ており、大手ソーシャルネットワークの使用を見送る活動家も出てきている。オンライン上のプライバシーが侵害されており、メッセージアプリ「LINE」も監視されるとの懸念から、電報やその他の媒体に移行するユーザーもいる。」
同日付タイ
『バンコクポスト』(AFP通信引用)は、「米国がタイの活動家の母親逮捕を批判」との見出しで以下のように報道している。
・息子が反軍政派の40歳の女性が王室侮辱罪で逮捕された。弁護士によると、王室を批判したフェイスブックの投稿に一言だけ「そう」と肯定をしたという。
・これを米国が批判。かつて親タイだった米国は軍事政府の度重なる市民拘束に苛立ちを見せる。
・米国務省東アジア太平洋担当局カーチナ・アダムス報道官は、「このような行為は、自制的で物が言えない状況を生む。活動家やその親族の逮捕尋問が相次ぎ、表現の自由においてタイが国際的基準に達しないと判断される事が懸念される。」と批判している。
5月12日付トルコ
『Turkish Weekly』は、「元タイ首相、軍事政府は国民に改革案をゆだねるべき」との見出しで以下のように報道している。
・2008年~2011年首相を務めた民主党のアピシット・ウェチャチワ氏は、2年前発足した軍事政府は保守的思考が広がっているが改革を進めるには「国民を巻き込む」 ことが必要だと主張。
・ロードマップに従うよう主張する軍政府に、民政復帰を目的とした国家実現のためには永久に権力に固執してはいられないはずだと自信を持って述べた。一方、選挙後に軍政府が権力を持ち続けると懸念。
・オックスフォード出身の同氏は、タイ経済と社会が旧成功モデルの限界に達し、中間層の時代に入ったとし、経済復興のために「新たな思考」の必要性を強調。政策面での政治的構造改革が必要で、それを自覚し行動しないと再び停滞してしまう、とした。
閉じる
トルコの最大手新聞社が政府管理下に(2016/03/07)
トルコのエルドアン政権に批判的だった最大手新聞社「ザマン(Zaman)」が4日、デモ隊との衝突の末、政府の治安部隊に占拠され政府管理下に置かれることとなった。政府は当新聞社がイスラム説指導者フェトフッラー・ギュレン氏との関わりがあるとし度々取締を行ってきた。占拠後の日曜の第一紙では、当紙は政府批判から政府支持に一転。報道の自由が脅かされるとしてアメリカ等各国が批判している。EUは難民問題を協議するサミットを控え、トルコの協力を仰ぐため強い批判は出来ないでいる。
3月6日付
『ロイター通信』は「トルコ反政権紙が政府管理下に入り政府支持に転換」との見出しで次のように報道している。
・国内最大手ザマン紙が政府管理下に置かれた翌日の日曜、政権批判は消え、単調な論調に転換。エルドアン大統領と米国のイスラム説教師フェトフッラー・ギュレン氏間の長期に渡る対立の記事を単調につづるもので表紙には大統領の国際女性デーの開幕式に関する記事が掲載。
・ホームページはオフライン状態で「読者の皆さんには一刻も早くより高品質で客観的なサービスを提供します」と掲載されている。...
全部読む
3月6日付
『ロイター通信』は「トルコ反政権紙が政府管理下に入り政府支持に転換」との見出しで次のように報道している。
・国内最大手ザマン紙が政府管理下に置かれた翌日の日曜、政権批判は消え、単調な論調に転換。エルドアン大統領と米国のイスラム説教師フェトフッラー・ギュレン氏間の長期に渡る対立の記事を単調につづるもので表紙には大統領の国際女性デーの開幕式に関する記事が掲載。
・ホームページはオフライン状態で「読者の皆さんには一刻も早くより高品質で客観的なサービスを提供します」と掲載されている。
・警察は同社のギュレン氏への資金供与を調査中である。
・ザマンの編集者らは概ね長期政権のエルドアン大統領を支持してきたが、外交政策や政府のギュレン氏支持者経営の学校閉鎖計画をめぐり反対勢力が拡大した。土曜、編集長は解雇処分となった。
同日付米
『VOA』は「占拠されたトルコ反政権紙は路線変更」との見出しで次のように報道している。
・政府管理下におかれた新聞社は最新紙で明らかに政府支持に傾いた記事を掲載。表紙には笑っているエルドアン大統領の写真が目立つ。「メディアの自由を封じるな」と叫んだ数百人のデモ隊への催涙ガスやゴム弾発砲による当社の動揺に関する記事は殆ど見られなかった。
・米ジャーナリスト保護委員会はトルコ政府の決定に抗議。政府がスパイ行為、陰謀、名誉棄損の嫌疑でジャーナリストを拘束できるとする法の解釈を悪用しているとし、世界でジャーナリストの拘束数が最多の国の一つにトルコを指定。
・人権団体は「トルコ政府は憲法に従い報道の自由を擁護するべき」と声明。
・トルコはNATOの一員として地理的に東洋と西洋の架け橋であり、シリア内戦や難民問題等において米国と欧州の重要な同盟国であるため、各国はトルコの人権問題に強く批判を出来ない、とトルコ政府批評家は言う。
同日付仏
『France 24』は「EUはトルコの反エルドアン紙占拠に逼迫」以下のように報道している。
・ザマン紙は政府管理下に入った後の第一紙で政府支持路線を採用。トルコのメディアの自由が歪められる恐れを浮き彫りにした。当紙の表紙ではエルドアン大統領への痛烈な批判が常となっていたのだが、政権支持の記事で埋まっていた。
・EUはトルコとの難民危機対策についての緊急サミットを控えトルコ情勢への批判は弱腰に。当問題でのトルコの協力を得るため報道の自由を当国に迫るには大きなプレッシャーに直面。
・アフメト・ダウトオール首相は政府の新聞社の掌握関与を否定し「合法な手続き」だとしている。
同日付トルコ
『Turkish Weekly』は以下のように報道している。
・米国務省をはじめ報道の自由や人権団体が、撤回を求めてトルコ政府を強く批判している。EU当局は声明を出していない。」
同日付ロシア
『スプートニック』は「トルコ首相はメディアグループの占拠への政府の関与を否定」との見出しで次のように報道している。
・トルコのアフメト・ダウトオール首相はフェザ・メディアグループの占拠を否定、TVの取材で、「政府はこの問題に関与していない。これは司法機関の決定により施行されたものだ。トルコの報道の自由を疑う必要はない。(新聞社は)マネーロンダリング容疑で起訴されたとした。」と述べた。
・トルコの動きは米国、ロシア等多くの国やEU、国境なき記者団などの国際機関で批判されている。トルコは昨年の「国境なき記者団」による報道の自由度指数で180か国中149位であった。
閉じる
その他の最新記事