アジア地域のニュース連合
『アジアニュース・ネットワーク』は、主要なアジア経済の政治家や専門家たちは、米国やロシアの両方との関係を維持することに関心を持っていることから、最善の対応方法を検討している、と報じている。特に、中国、日本、韓国の3大経済大国が、ロシアの石油、ガス、石炭の大口顧客であることからも、ロシアに対する制裁に大きな関心が寄せられている。しかし、中国はロシアの安全保障上の懸念を黙認している一方で、日本と韓国では、特に燃料価格の高騰、サイバー攻撃の可能性、米国との関係の持ち方などについて懸念が高まっており、対照的な反応となっている。
中国政府の利益に沿った論評を載せてきた中国日報は、王毅外相とロシアのラブロフ外相との会談を大々的に報道した。中国日報によると、王氏は、中国がすべての国の主権と領土を尊重すると述べた一方で、モスクワの「合理的な安全保障上の懸念」に理解を示したという。
大統領選を控えている韓国でも、有力な大統領候補者2人がこの問題に言及した。与党・民主党の李在明氏は、原油価格の高騰やバイデン政権による制裁など、戦争がもたらす経済的な影響に注目した。野党「国民の力」の尹錫悦氏は、ウクライナ危機は戦争の終結が必ずしも紛争の終結を意味しないことを示唆し、北朝鮮との架け橋を築こうと懸命になっている文在寅大統領への当てつけのような発言をした。
韓国紙コリア・ヘラルドは、サムスン電子やSKハイニックスなどの企業が、制裁によって通信機器やレーザー、センサー、チップなどの製品をロシアに販売できなくなる可能性があり、「巻き添え被害」を受けるかもしれないと報じた。また、特に北朝鮮が「新冷戦対決を最大限に利用しようと挑発をエスカレートさせる」可能性を考慮し、米国との同盟を「堅持」することの重要性を訴えた。
その他の東南アジア諸国では、ウクライナで働くフィリピン人、マレーシア人、タイ人などの自国民の帰還に大きな関心が集まっている。
なお、南アジアでは、パキスタンの首相が、ロシア軍がウクライナに侵攻しているにもかかわらず、モスクワ訪問を決定したことが注目されている。インドにとって、中国との関係が緊迫している今、パキスタンとロシアの関係が深まることを警戒している。インド政府はまた、最近設立されたクワッドのメンバーとしての米国との関係と、数十年にわたるロシアとの関係とのバランスを保つことに努めているという。
ジャカルタ・ポスト紙は、「プーチン大統領はすでに中国との同盟関係を確保しており、近いうちにインド太平洋地域にも緊張が及ぶと予想される」と報じている。
仏誌『レゼコー』は、東南アジア諸国連合(アセアン)加盟国でロシアに対して制裁を敢行したのはシンガポールにとどまり、他のほとんどの国は、政治的、経済的な理由から、ウクライナ側に立つことを拒否している、と伝えている。
アセアン諸国は先週末、何時間にもわたる外相会談を経て、ウクライナの紛争に関わるすべての当事者に対し「自制と対話の継続」を求める短い声明を発表した。侵略者を名指しすることも、あえてロシアに言及することもしなかった。ワシントンにある国防大学のアセアン地域の専門家、ザカリー・アブザ氏は、「極めて弱い声明だ」と述べ、「この地域の国々は、大国が突然、小国の領土保全と法の支配を疑問視するのを懸念しているはずだ」と、この地域における中国の圧力について指摘している。
ロシアの攻撃開始以来、ウクライナへの侵攻を公式に非難したアセアン諸国は、シンガポール、ブルネイ、フィリピンの3カ国にとどまる。シンガポール政府は、今のところモスクワに対して経済・金融制裁を敢行した唯一の国である。同国外相は2月28日、プーチンの言葉を引用して、「我々は、国が正当な理由なく他国を攻撃し、その独立が歴史的誤りと愚かな決断、の結果であったと主張することは受け入れられない」と正当性を主張した。
他の国々は、危機に対する「悲しみ」を表明したり、国民の救助に向かうと約束したりするだけにであった。ビルマにいたっては、ロシアの侵攻を「正当化」して歓迎した。また、ベトナム共産党政府は、ベトナム戦争以降ロシアとのつながりを強化し、ロシア軍需産業の最大の顧客のひとつとなっている。そして、南シナ海での中国との緊張関係に対抗するため、プーチンとの関係維持を優先している。
アブザ氏は、ラオスやカンボジアの独裁政権も、他の権威主義的な政権を批判する勇気を持っていないと述べる一方で、「タイ、マレーシア、インドネシアは、ロシアの攻撃を非難することによって失うものがほとんどないため、沈黙していることは驚くべきことだ」と指摘している。声を上げることで、二国間貿易に影響を与える可能性があると考えているのではないかと推測している。
アセアン諸国以外では、インドもロシアの侵略を非難することを拒否してきた。国連安保理でロシアに対してウクライナからの撤退を求める決議案が採決された際、棄権した。インドのモディ首相は、中国の台頭に対抗する戦略上、長年にわたって築いてきたロシアとの関係を台無しにしたくないと考えている可能性がある。
閉じる
中国経済をこれまでの輸出、投資主導から消費主導に転換して行く上で重要な課題は、金融危機後政府の景気刺激策で膨らんだ鉄鋼・石炭等の生産設備を削減することであるが、例えば鉄鋼に関して言えば、向う5年間で1億~1.5億トンの設備削減を目標としている。今年の初めにこの計画を建てたものの、国有企業や政府官僚がなかなか動かず、これが李克強首相の手腕に対する習近平主席の不満に繋がっているという噂が聞こえている。習近平主席は、設備削減で一時的には混乱を生じても、中国経済を長期安定成長路線に乗せる「新常態」へ導くためには供給サイドの改革が不可避であるという信念を持っているようであり、その動きは徐々に出てきているようである。
8月15日付英文版
『上海日報』は、「過剰生産設備削減への新たな手段」という見出しで、中国政府は過剰生産設備削減のために、環境安全やエネルギー効率に関する厳しい基準を適用したり、厳しい融資規制を導入すると報じた。8月12日に中国工業情報化省が発表した政策によれば、今後過剰設備を有する鉄鋼、石炭、セメント、ガラス、アルミニウムの業界に対し新しい政策を適用する。一つはリストラに取り組む企業向け融資を優先し、消極的な企業向け融資は削減する。またエネルギー効率の悪い企業は、6ヶ月間で改善が見られない場合閉鎖されるし、継続して大気・水質汚染基準を超える企業は課徴金が発生し、最悪のせ場合閉鎖もありうるという。政府は更に設備削減が遅延している地方政府として、内蒙古自治区、福建省、広西壮族自治区を上げたと報じている。
8月11日付英文版
『上海日報』は、「鉄鋼過剰設備削減進捗」という見出しで、中国当局者によれば中国の鉄鋼過剰生産設備削減の努力は着実に前進していると報じた。中国は今年上半期に過剰設備を1,300万トン削減したが、これは2016年の目標の30%であり、ほぼ予想通りの出来であった。7月は更に今年の目標の17%を削減したが、下半期は削減が加速するだろうという当局者のコメントを伝えている。
8月12日付
『中国日報』は、「河北鋼鉄集団の設備削減、業界の変化を反映」という見出しで、河北省の河北鋼鉄集団の製鉄所で高炉労働者として働いていたある社員が、研修で新たな技能を身に着け品質検査部門で職を得たという記事を掲載した。設備削減以外の動きとして、同社によれば従来はインフラ建設のための付加価値の低い鉄鋼を需要に応じて大量生産することが目標であったが、今は自動車や家電製品用の高級高付加価値製品の生産にシフトしている。今年最初の4ヶ月で高級品の生産は前年比121%の増加になった一方、銑鉄等の低級品の生産は前年比11.33%落ちた。2020年までには高級品の比率を70%にまで持ってゆくという。また、河北省全体でも従来鉄鋼が最大の産業であったが、今年前半では設備機器の製造が第一位になったと報じている。
閉じる