安保関連法案が可決されてから10日近く経つ。この法案の可決により日本の武器輸出がかなり緩和されたと言っていいだろう。賛否両論あるであろうが、日本企業が軍需産業に力を入れていくことが考えられる中、今後の産業の行方を各メディアは以下のように伝えている。
9月28日付
『ブルームバーグ・ビジネス』では、投資家たちは日本の軍需産業の成長は「言うは易く行うは難し」と見ており、軍需産業の大手2社である三菱重工業と川崎重工業は今年に入ってから時価評価額で約6500億円あまり減少しており、株価も12%下落しているという。これはゴールドマン・サックス証券の分析によるものである。
このような市場の状況にもかかわらず、ゴールドマン・サックスのキャシー・松井氏は日本の軍需産業は成長性があるとしているという。...
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9月28日付
『ブルームバーグ・ビジネス』では、投資家たちは日本の軍需産業の成長は「言うは易く行うは難し」と見ており、軍需産業の大手2社である三菱重工業と川崎重工業は今年に入ってから時価評価額で約6500億円あまり減少しており、株価も12%下落しているという。これはゴールドマン・サックス証券の分析によるものである。
このような市場の状況にもかかわらず、ゴールドマン・サックスのキャシー・松井氏は日本の軍需産業は成長性があるとしているという。長期的に見ればアジア地域での国際的な緊張関係が日本の軍事力の輸出を押し上げるからである。同氏は「当該地域での緊張関係は一朝一夕に解決するものではなく、アメリカも日本の果たす役割に期待している」と述べている。安倍首相は武器輸出禁止の緩和、防衛費の増額、武器の開発・獲得の促進に乗り出しており「軍事関係の刷新、防衛費の増額はたとえ日本の首相がかわっても続く傾向である」と松井氏はみているという。
「ブルームバーグ・ビジネス」は日本自身の国防政策についても触れている。日本は沖縄周辺で基地の規模を拡大し、中国とは熾烈な領土争いを抱え、ロシアとは北方領土をめぐる微妙な関係にあるとする。特に空軍に関する問題は深刻で領空侵犯に対しての緊急発進はこれまでにない回数を記録しているという。松井氏は2012年の日本・中国間の尖閣諸島をめぐる論争や昨年のヴェトナム・中国間の海上の領土問題を踏まえれば、アジア諸国は防衛費の増額を余儀なくされると予測しているという。「日本企業がアジア諸国と輸出や開発面で協力関係が築ければ、日本の軍需産業は長期にわたって成長するだろう」と松井氏は述べたという。
三菱重工業は今年度日本の防衛省から213の発注を受けている。金額では2632億円であり、同時期の三菱重工業の利益の6.6%を占めている。これに次いで川崎重工業は1913億円分を受注しており、これは川崎重工業の総売り上げの13%を占めるという。
昨年度は国内総生産の1%だった軍事費は、今年度は増額すると予測するアナリストもいるという。世界銀行のデータによれば世界の軍事費の平均は国内総生産の2.2%だという。
岩井コスモ証券の西川氏によると、日本の軍需産業はピラッミッド型の構造をしており、三菱重工業と川崎重工業の下に航空関連だけでも2500社が存在するという。防衛費や軍需産業の拡大はこれらの会社にも波及効果をもたらす可能性が高いという。
そしてこのトップ2社は現在オーストラリアに潜水艦を納品する準備をすすめている。これはかなり大きなプロジェクトで360億ドル(約4兆3000億円)の契約で今年末には結果が出るという。
ではこの潜水艦の受注の可否の見通しはどうなっているのか。
9月28日付
『ザ・ディプロマット』はオーストラリアの首相がアボット氏からターンブル氏にかわったことにより、潜水艦の発注に変化が起きる可能性があると指摘する。
この潜水艦の発注にはドイツのティッセンクルップ社とフランスのDCNS社が名乗りをあげている。日豪はアボット首相と安倍首相の友好関係により、これまでにない良好な関係を築いてきた。日豪経済連携協定を締結し貿易面ではもちろん、軍事面でも軍事演習などを通して協力関係を築いてきた。だが首相がかわったことにより防衛大臣もケヴィン・アンドリュース氏から初の女性防衛大臣マライズ・ペイン氏に交代し、風向きが少しずつ変わりつつあるという。アボット氏は親日家として知られていたが、その基盤も危うくなった。潜水艦は自国の会社に発注すべきという強い意見もあり、新首相は前首相よりもオーストラリア国内事情に対してより敏感になっているという。
さらに日本は今までの武器輸出禁止により、武器輸出のノウハウや戦略がなく、フランスやドイツに比べてかなり不利だという。また、日本の潜水艦の技術は群を抜いているものの、コストがかかりすぎる可能性が高く、この点でもオーストラリアは二の足を踏むだろうとしている。
安倍首相にとって、日本の大手2社が潜水艦を受注できるかどうかは今後の軍需産業の成功を占う意味で非常に重要な意義を有しており、オーストラリア政府の出す結論が待たれるところである。
賛否両論あるであろうが、今後日本の武器輸出がニュースとなる機会は確実に増えるだろう。
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9月7日付
『ニューヨークタイムズ』紙はロイター電として、東芝は直近の事業年度で純損失を計上するとともに大胆な改革の実施を誓約し、ようやく130億ドルの決算スキャンダルを乗り越えようとしていると報じた。当期の決算発表は会計上の不備により2回延期され、最終期限までに決算書が提出されない場合には、上場廃止の可能性もあった。
東芝は2015年3月期決算について、378億円の純損失を計上した。当初5月時点では1200億円の純利益予想であったものを不適切会計問題により撤回し、見直したものである。...
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9月7日付
『ニューヨークタイムズ』紙はロイター電として、東芝は直近の事業年度で純損失を計上するとともに大胆な改革の実施を誓約し、ようやく130億ドルの決算スキャンダルを乗り越えようとしていると報じた。当期の決算発表は会計上の不備により2回延期され、最終期限までに決算書が提出されない場合には、上場廃止の可能性もあった。
東芝は2015年3月期決算について、378億円の純損失を計上した。当初5月時点では1200億円の純利益予想であったものを不適切会計問題により撤回し、見直したものである。資産価値について、南テキサスプロジェクトの事業価値をより保守的に評価したことなどが影響している。一方、米国を拠点とするウェスティングハウスの原子力事業については、繰延税金資産の取り崩しは必要ないとしている。
また、同社は2009年3月期以降、合計1550億円の利益の水増しがあったと公表した。
東芝は7月の会計調査で、ガバナンスの機能不全と従業員が上司に反対しにくい企業風土が指摘され、田中久雄社長をはじめ数名の取締役が辞任した。室町正志新社長は、年末までに半導体、パソコン、テレビ事業の再建計画を公表すると約束し、買収によるヘルスケア事業の拡大について再検討する意向を明らかにした。
9月7日付
『RTTニュース』は、東芝の不適切会計を調査する第三者委員会は、同社が過去7年間に1518億円の営業利益の水増しを認定したと報じる。2015年3月期は、前年602億円の純利益から378億円の純損失に転じ、1株当り損失は8.93円となった。
東芝は当期1株当たり4円の中間配当をおこなったが、決算報告が遅れたことにより期末配当は実施しない。また、2015事業年度については、不適切会計の影響を見極めるため、現時点では業績予想を開示しない。配当については中間配当を見送り、期末配当は未定としている。同ニュースは「日経ビジネス誌」の情報として、東京証券取引所が、東芝を9月下旬に“取引注意銘柄”に指定するとともに、約9千万円の制裁金を課すと報じている。
9月7日付
『ブルームバーグ・ビジネス』は、東芝が本年度決算で純損失を計上し、過去6年の業績の訂正を発表する一方、投資家の信頼を取り戻すため大胆な事業再構築を計画していると報じた。同社は、資生堂の前田新造前社長を会長に指名し、取締役を16名から11名に減らし、半数以上を社外取締役とする予定である。また、非現実的な目標を管理職に強いる企業風土の改革に乗り出すとともに、監査委員会の監視機能を強化する。政府の菅官房長官は、東芝が正しい情報開示をおこなわなかったことは大きな問題であり、今後も不適切会計の調査を継続すると述べた。金融財務当局は、同社が利益を水増し発表した期間に合計約1兆円の増資と社債を発行したことを調査しており、今後課徴金を命じられたり訴訟が起きる恐れがある。東芝は、当期決算で制裁金として84億円を引き当てている。
三菱UFJモルガンスタンレー証券のアナリストは「株価は悪材料を全て折り込んでいるが、東芝のバランスシートリスクは十分には解消されていない」と懸念を示している。
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