クリスマスシーズンには毎年多くの巡礼者や観光客がイエス・キリストの生誕地とされるベツレヘムの町を訪れる。しかし今年は、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスのために、ベツレヘムは誰もいないクリスマスの降誕祭を迎えることになる。巡礼客や観光客がいなくなったことで、町の経済も深刻な打撃を受けている。
ドバイの
『アルアラビーヤ』によると、ベツレヘムは毎年クリスマスシーズンに、世界中から何十万人もの巡礼者を歓迎している。しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のための規制の影響を受け、巡礼者や観光客が来なくなり、レストラン、ホテルや土産物店も閉しまっている。
ベツレヘムのホテル協会代表であるElyasal-Arja氏は、ベツレヘムは2019年に約300万人の観光客を受け入れたと述べている。しかし、この地域への海外からの主要な入り口点となっているイスラエルがコロナ対策のために観光客を禁止し、ヨルダン川と交差する西岸の国境が外国人に対して閉鎖されたため、今年はその数はゼロに近いと述べた。
あるホテルオーナーは「都市の60%は観光業に依存している。観光客がいなくなったことで、私たちの収入もなくなった」と話している。
イエスが生まれたとされている場所に建てられた「降誕教会」の近くに位置するアンバサダーホテルは、地元観光客が利用してくれることを期待して、1階部分のみの限定オープンに踏み切った。しかしホテル側は、度重なるロックダウンでヨルダン川西岸地区の経済は荒廃しており、どの程度の人が来てくれるのかは不明だとしている。
独『DWNews』によると、パレスチナ自治区ではここ数週間新型コロナウイルスの感染率が再び上昇し、死者数が増加しているという。パレスチナ自治政府は、いくつかの州でロックダウンを課し、領土全体で夜間と週末の外出禁止令を延長した。その結果、クリスマスイブの伝統的な真夜中のミサは一般市民には非公開で行われることになった。ミサの様子は毎年のようにテレビで生中継される。
キリスト降誕教会から数百メートル離れた別の教会の牧師は、「通常であれば、日曜日には、世界中の巡礼者や訪問者でいっぱいになる。」しかし今年はクリスマスのミサは、ストリーミングで配信し、教会堂には少人数の信者がソーシャルディスタンスを守りながら参加することになると説明している。そして、「もしかしたら、このすべての中に何か象徴的なものがあるのかもしれない。イエスは困難な時代に生まれた。もしかしたら、クリスマスの間、これまでのような華やかさから離れて、クリスマスの真の意味を発見するのに役立つかもしれない」と述べている。
レストランとゲストハウスを経営するパレスチナ人のファディ・カッタンさんも同じことを言っている。「クリスマスの意味は、今年はコミュニティを大切にすることだと思う。私たちがパンデミックから何か学ぶことがあるとすれば、それは他人を思いやること、隣人を思いやること、困難に直面してきた人、収入を失った人、命を失った人、家族の一員を失った人を思いやることだ」と語った。
「今年のクリスマスに料理をするなら、少し多めに作って。子羊を丸ごと一匹料理することはやめて、例えば羊肉を2つ料理して、1つは困っている人に贈ってあげて。それが私にとってはクリスマスの精神だ。」と語った。
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若者の失業と原油安にあえぐ中東産油国サウジアラビアは月曜、2030年までに石油への「依存」から離れ、新時代を築くため社会経済の構造的改革を盛り込んだ包括案「ビジョン2030」を発表した。世界最大の国営石油会社「サウジアラムコ」の新規株式公開(IPO)で資金を調達、政府系ファンド投資を拡大することで利益を歳入に充て、原油輸出に偏る財政からの脱却をめざす。
また、人口の半分が25歳未満で国民の7割が公務に就いているサウジでは、若者の失業率改善のため、組織効率化、民営化で雇用拡大を目指す。
4月26日付カタール
『アルジャジーラ』は「サウジアラビアが2030年計画を発表」との見出しで以下のように報道している。
・当計画はサウジアラビアの構造改革計画(NTP)であり、石油への依存から脱却し新しい時代に備えるものである。
・計画を押し進めているムハンマド・ビン・サルマン副皇太子によると、当計画は、資産売却、増税、歳出削減、準備金の管理方法、組織効率化、民間部門の活用に関する改革案を盛り込んでいるとする。2兆ドルの公的投資金により石油脱却後の経済を押し進めるとし、ブルームバーグ紙によると、2020年までに半額を外国投資とすることを目標とする(現在5%)。
・来年、国営石油会社サウジアラムコの株5%を新規株式公開する。
同日付
『ヤフーニュース』(AP通信引用)は「サウジアラビアが石油依存経済の改革案を公表」との見出しで以下のように報道している。
・サルマン国王はTV報道された声明で当改革構想「ビジョン2030」が内閣の承認を得たと発表、国民に成功に向けた団結を呼びかけた。詳細は統括役の国防相兼任の副皇太子が国営放送アルアラビーヤのインタビューで述べた。 副皇太子が議長を務める経済政策担当委員会はサウジの化石燃料への依存を変え、雇用を生み海外投資を増やす事に注力してきた。
計画では、サウジ国民が恩恵を受け、政治的安定に寄与していた年間610億ドルのエネルギー助成金等の歳出をカットする。
・水への関税引き上げのいきさつにオンラインで抗議した市民の声を発端とし、今週、国王が水エネルギー相を罷免していた。政党が無く抗議が禁止されている当国で、インターネットは国民の声を届ける限られた方法の一つ。
・新ビジョンには女性の活用の重要性が強調されているが、社会改革を促進する具体策は見られない。昨年女性は投票権と地方選挙への参政権が認められたが、運転は禁止さており、海外旅行には男性親族(通常夫や父親)の許可を要する。
・原油安によりサウジは昨年1千億ドルの赤字、今年は870億ドルの赤字見込、昨年は歳入の7割が原油から。
・IMF中東中央アジア代表は、経済多様化を目指す当ビジョンは、「サウジの様な経済国に当に必要な改革。最大の問題はどうこの感覚的で意欲的目標を現実的変革に落とし込んでいくか。」だとする。
・サウジの人口の半分以上は25歳未満で、数年後仕事や大きな家が必要となる。現在、国民の7割が公務に従事、歳出が賃金に回させており、民間セクターの雇用が必要。
4月25日付
『ロイター通信』は「サウジの皇太子が石油依存を終結させる画期的プランを発表」との見出しで以下のように報道している。
・政府系ファンドを現在の6000億リヤル(1600億ドル)から7兆リヤル(2兆ドル)に投資拡大する。
・ムハンマド副皇太子は海外メディアの記者会見で「我国は商品価格変動や海外市場に今後振り回されないようにする」と述べた。ビジョンへの質問に自信を持って回答、特に若者(失業や経済停滞を憂慮)にアピールするようにコメント。
・2014年に原油価格が下降する前にもエコノミストによりサウジの政策と経済構造を不安定だと指摘されていたが、原油収益の減少を受け改革が早まった。
サウジの石油備蓄権を持つ国営石油会社サウジアラムコの僅か1%の売り上げでも世界中のIPOで最大規模となる。アラムコの子会社も上場予定で、民営化で不透明性が懸念されていた運営の透明性を高め汚職を防止することも期待。
・国民の中には教育改革、女性の権利拡大等を期待した声もあったが、今回は石油依存脱却の経済構造改革に主眼が置かれた。
4月26日付米
『ブルームバーグ』は「石油以後のサウジアラビアの生活の青写真は?」との見出しで以下のように報道している。
・青写真は、アラムコ新規株式上場、政府系ファンド、軍事産業、脱石油経済、助成金、政府内改革が含まれる。
・サウジは軍事費が多大で、軍用費の一部にメスを入れ始めている。サウジの軍事施設は大理石の床、壁には最高級の装飾や加工が施されている。(米軍施設はむき出しのパイプ、天井、セメント仕立てで実用的。)
・政府構造改革に伴い、最高裁を撤廃し政治安全保障諮問委員会を発足するなど政府改革も進めている。
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