米、対中追加関税発動(5月11日)
5月10日米国東部時間午前0時01分より、米国は中国製品に課していた制裁関税を10%から25%に引き上げる措置をとった。さらにこれまでは制裁関税を課されていなかった、約3000億㌦相当にも制裁関税を課すとして、詳細は13日に公表するとした。
実際には中国から10日以降に中国から米国向けに出荷された製品が引き上げられた制裁関税の対象になる。対象品目の大多数は船便によって輸出されていることから、実際の発動まではまだ2~4週間の猶予があり、米中の交渉の時間が残されていることになる。...
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5月10日米国東部時間午前0時01分より、米国は中国製品に課していた制裁関税を10%から25%に引き上げる措置をとった。さらにこれまでは制裁関税を課されていなかった、約3000億㌦相当にも制裁関税を課すとして、詳細は13日に公表するとした。
実際には中国から10日以降に中国から米国向けに出荷された製品が引き上げられた制裁関税の対象になる。対象品目の大多数は船便によって輸出されていることから、実際の発動まではまだ2~4週間の猶予があり、米中の交渉の時間が残されていることになる。ただし今回の発動は、劉鶴副首相が訪米して交渉を行っているさなかであったことを考えると、中国側もすぐには妥協できないものと思われる。
今回の発動が、一旦中国が譲歩した案件について、その約束を覆したことが原因だとされているということは、中国内で譲歩したことに対する反対勢力がいたということになり、今後の落としどころを見出すのは難しくなりそうである。
5月11日付の「人民日報」は改めて今回の制裁関税の引き上げに対し、米国への対抗措置をとると述べているが、具体的なことは述べられていない。また中国は誠意をもって貿易交渉にあたってきたが、いかなる米国からの圧力にも屈することはないし、原則的な問題に妥協することはできないし、中国の要求は総ての制裁関税の取り消しだ、とも述べている。
この記事のなかでは当然のことながら、米国が問題にしている「中国創造2025」のことや企業に対する補助金のことは書かれていない。かわりに関税の引き上げは、米国内でたとえば、米国大豆協会や、消費者団体、小売業界から反対の声があがっており、米国の消費者や勤労者、農民、企業の利益に衝撃を与えるものになろう、と述べている。
中国は今年建国70周年を迎える。国民に弱腰であるとの印象を与えないで、米国との妥協を図り、華々しく70周年を祝うことはできるのだろうか。
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中国も報復関税を(5月9日)
8日夜、新華社は以下の発表を行った。
米国が5月10日から中国からの輸入品2000億㌦の関税を10%から25%に引き上げることを発表した。両国の貿易摩擦をエスカレートさせるのは、両国や世界の不利益になるが、中国は非常に遺憾ながら、もし米国がこのような措置を実施するならば、中国側も報復措置を取らざるを得ない。
これより前、外交部報道官は、制裁関税の影響についての質問に対し、米国プリンストン大学の研究によると、米国の関税政策の影響で、米国の企業や消費者は2018年には毎月14億㌦の収入を失っていた、という事例を紹介し、影響は米国側が被ることになるとの発言をした。...
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8日夜、新華社は以下の発表を行った。
米国が5月10日から中国からの輸入品2000億㌦の関税を10%から25%に引き上げることを発表した。両国の貿易摩擦をエスカレートさせるのは、両国や世界の不利益になるが、中国は非常に遺憾ながら、もし米国がこのような措置を実施するならば、中国側も報復措置を取らざるを得ない。
これより前、外交部報道官は、制裁関税の影響についての質問に対し、米国プリンストン大学の研究によると、米国の関税政策の影響で、米国の企業や消費者は2018年には毎月14億㌦の収入を失っていた、という事例を紹介し、影響は米国側が被ることになるとの発言をした。さらに中国は労働節の休暇でも消費が順調であったことを紹介し、中国は影響をやりすごせるとしていた。
10日は米中の第11次の交渉の当日である。土壇場で追加関税を課さないという結論がでるのか、ぎりぎりの攻防が続けられることになる。
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ドラマや芸術作品まで…広がる表現への“統制”(5月8日)
中国では最近言論統制が強くなっている。その影響は政治的なことだけでなくテレビドラマや芸術作品の内容にまで広がっているよう。若者のあいだで大流行したドラマ「延禧攻略」。インターネットで配信され、視聴回数はのべ180億回の記録となった。社会現象にまでなった。
ドラマの舞台は清の時代の宮廷。宮女たちが権力闘争を繰り広げ、のし上がろうとする姿を描いている。高まる人気を背景に去年8月にはテレビでの放送も始まった。...
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中国では最近言論統制が強くなっている。その影響は政治的なことだけでなくテレビドラマや芸術作品の内容にまで広がっているよう。若者のあいだで大流行したドラマ「延禧攻略」。インターネットで配信され、視聴回数はのべ180億回の記録となった。社会現象にまでなった。
ドラマの舞台は清の時代の宮廷。宮女たちが権力闘争を繰り広げ、のし上がろうとする姿を描いている。高まる人気を背景に去年8月にはテレビでの放送も始まった。
ところが今年1月、共産党直系の新聞がこのドラマを批判する社説を掲載し波紋を広げた。
「宮廷文化の負の面を描くことの影響は軽視出来ない」「権力闘争は社会主義の価値観と合わない」と批判された。
社説を受け、このドラマのテレビ放送は途中で打ち切り、さらにネット動画の配信会社のあいだで共産党の意向を忖度してほかの宮廷ドラマの配信まで自粛する動きが広がった。締めつけの強化はインターネットの個人ユーザーにも及ぼうとしている。
日本のニコニコ動画に似た中国のサイトでは、政府を批判するようなコメントでも検閲を経ずリアルタイムで投稿されてしまう。このサイトについても共産党は直系のメディアを通じて1日数百万に上るコメント1つ1つを検閲するべきだと主張した。
さらに規制は芸術の分野にも及んでいた。数千人の芸術家が暮らす北京郊外の宋荘地区。2年前、突然政府の役人が来て作品を1つ1つ検閲された画家。フランスの画家、ドラクロワがフランス革命の民衆の放棄を描いた作品をモチーフにパンダの放棄を描いた作品を問題視された。政府の許可がないと展覧会を開くことも難しくなった。自分の描く絵の内容に当局がどう反応するか意識しながらキャンパスに向かうようになった。
ドラマや芸術にまで管理を強める共産党。中国社会はますます自由にモノが言えなくなっている。
中国では最近、社会主義の価値観と合わないという理由で例えばパソコンやスマホのゲームの内容などにも細かく検閲が入るようになっているそうで不満を募らせる人も増えているそう。
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米、対中追加関税10%から25%に(5月7日)
5日(北京時間では6日未明)、トランプ大統領は中国からの輸入製品に対し、現行の10%の関税を25%に引き上げると発表した。さらに現在追加関税が課されていない製品に対しても25%の関税をかけるとした。トランプ大統領は交渉が遅すぎる、との不満ももらしていた。
中国では5月1~4日まで労働節(メーデー)の連休であったが、その連休明けに中国経済を揺るがしかねない知らせが飛び込んできたことになる。...
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5日(北京時間では6日未明)、トランプ大統領は中国からの輸入製品に対し、現行の10%の関税を25%に引き上げると発表した。さらに現在追加関税が課されていない製品に対しても25%の関税をかけるとした。トランプ大統領は交渉が遅すぎる、との不満ももらしていた。
中国では5月1~4日まで労働節(メーデー)の連休であったが、その連休明けに中国経済を揺るがしかねない知らせが飛び込んできたことになる。当初は1月1日に追加関税をかけるとしていた米国との間で、中国は交渉を続けた結果、追加関税をかける時期は延期されてきた。週末にも米国代表団が北京を訪れ、5月9-10日には劉鶴副首相が訪米して交渉が行われる予定であった。交渉を続けた結果、4月中旬頃までは、米中交渉は関税以外の知的所有権や技術移転の問題では難航していたものの、関税については中国では楽観的な見方が主流であった。10%の追加関税は全面的に撤廃されるのか、一部残るのか、撤廃の時期はいつ頃かと、関税の撤廃の方法が問題になっているとされていた。
楽観的なムードが多かっただけに、中国としても、関税が25%になるという報道の対応に苦慮しているようである。7日の7:39にアップされた「人民日報」(web版)の記事のなかでは、トランプ大統領のツィッターで発表されただけで、米国通商代表部の発表はなかったことから、トランプ大統領の「いつもの気まぐれかもしれず」真意を分析しなければならないと書かれており、外交部の報道官も「関税をあげるという米国の脅しは、過去何回もあった」と語っていた。ただし追加関税を課す件については米国時間の6日通商代表部のライトハイザー代表も明らかにしているし、7日には官報でも発表されるという。
前述の「人民日報」の記事には「(中国は)貿易戦争をしようとも思っていないし、貿易戦争を恐れもしないが、必要ならば戦わざるを得ない」という態度は変えない、と述べ、さらに「我々に不利であっても、どんなおエライさんが言ったとしても、我々が譲歩できるとは思わない」と中国としては事を荒げはしないが、妥協もしない、と不退転の決意が述べられている。
中国としては「脅しに屈して譲歩した」と見られたくない。とくに国内的に弱腰の姿勢を見せることはできない。一方経済成長が鈍化しているなかで、大幅な追加関税のために経済情勢がさらに悪化する事態も避けたいところである。現在の中国共産党の正当性は、改革開放後の高度成長に担保されているからである。とくに本年は共産党の権威が揺らぎかねなかった六・四事件(天安門事件)から30周年であり、人々の不満を爆発させるような要因を取り除いておかなければならない。習近平主席にしてみれば、難しい選択を迫られている。
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中国の不気味な戦略(5月4日)
(中国の軍事力・南シナ海)
1990年代以降、中国はわずか20年余りで世界最大の海軍力を確立し、現在、南シナ海、東シナ海、黄海という三つの海域で制海権をほぼ手中にしている。黄海では4月29日から5月4日まで中国とロシア海軍による定例合同軍事演習「海上連合2019」が行われた。対潜水艦作戦などで連携し米国をけん制する狙いがある。南シナ海については米国国防総省が年次報告書の中で「2018年に中国が埋め立てた南沙諸島の各岩礁の軍事拠点化が完了した」と報告した。...
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(中国の軍事力・南シナ海)
1990年代以降、中国はわずか20年余りで世界最大の海軍力を確立し、現在、南シナ海、東シナ海、黄海という三つの海域で制海権をほぼ手中にしている。黄海では4月29日から5月4日まで中国とロシア海軍による定例合同軍事演習「海上連合2019」が行われた。対潜水艦作戦などで連携し米国をけん制する狙いがある。南シナ海については米国国防総省が年次報告書の中で「2018年に中国が埋め立てた南沙諸島の各岩礁の軍事拠点化が完了した」と報告した。具体的には対艦・対空ミサイルや滑走路、港などの建設が完了したということらしい。中国が南シナ海を核心的利益として重要視している理由は島々の領有権にあるというよりも、この海域にある海南島の中国軍海軍基地が、海洋進出をもくろむ中国にとっての軍事的な拠点となっていることが理由として大きい。海南島軍事基地では米国をにらんだ核抑止力への整備が着々と進められており、弾道ミサイルを搭載できる原子力潜水艦が常駐し、潜水艦を護衛する水上艦艇や戦闘機も配備しているという。戦略原潜の配備は中国核戦力の劇的な向上を意味するものであり、中国は60年もの歳月をかけて、複雑で高度な潜水艦建造技術を習得したとされている。南シナ海の広さと深さも潜水艦の隠密行動にはうってつけとみられている。米国の先制核攻撃に核で報復する「第二撃能力」を強化するため、海中から核攻撃ができるミサイル潜水艦部隊も中国は保有しており、米国は中国の戦略原潜の動向には特別に神経をとがらせているようにみえる。
(中国の軍事力・東シナ海)
日本にとっては一番、気になるのが東シナ海における中国の行動である。近年、中国は尖閣諸島への領海侵入を常態化させており、意図的に実効支配の状態を作りだしている。中国公船は大型化し、中国軍の艦艇や航空機が東シナ海を通過して太平洋に進出する動きも活発になってきている。これは日本にとって看過できないことである。こうしたことから日本政府は離島防衛強化との名目で、海上自衛隊の輸送艦に200人から300人の陸上自衛隊員を搭乗させ、尖閣諸島や南西諸島周辺で航行させることを検討している。ただ、中国軍に活動強化の口実を与えてしまう可能性もあるため、慎重に検討を進めていきたいとしている。
(中国の軍事力・宇宙、サイバー空間、北極圏)
米国国防総省の年次報告書は宇宙やサイバー空間、北極圏への中国の進出にも強い警戒感を示している。宇宙空間に関していえば2018年、中国は宇宙に38回ものロケット発射を成功させ、軌道に乗せた人工衛星は100基にも及ぶ。米国の宇宙支配をけん制するために、2014年7月には地上からミサイルを発射し、自国の衛星を破壊する実験にも成功させた。一方で米国に依存しない独自のGPS開発も強力に押し進めており「北斗衛星導航系統」のGPSサービスが2020年までに全世界をカバーする予定である。もうひとつ、中国の活動が懸念される舞台がサイバー空間である。年次報告書は「米政府機関を含め、世界中のコンピューターが標的とされている」と指摘している。このことは日本にとっても他人事ではない。ハッカー集団「APT10」が日本の官公庁のサイトを攻撃したのはつい最近のことだ。「APT10」は、産業スパイとして日本の先端企業を標的にするなど国家の意思を背景に、日本の防衛機密や先端技術を狙っている。6月にG20首脳会議、2020年には東京五輪・パラリンピックなどを控える日本にとって最大限の警戒が必要な案件となっている。北極圏進出については報告書は「資源獲得という目的に加えて潜水艦を配備する可能性がある」と指摘し懸念を示している。
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