安全だと考えられてきた豊胸技術だが、従来のシリコーン製ではなく、美容目的のジェル状の充填剤を使ったケースで、乳腺炎やガンの発症件数が増えており、安全性への信頼が揺らいでいるという。
11月27日付
『AP通信』は「豊胸素材の安全性への問題が露呈」との見出しで以下のように報道している。
世界的に見て豊胸技術の安全性は信頼されてきた。2008年~2015年米食品医薬品局(FDA)には年間200件の苦情が報告されているが、数十万件にのぼる手術件数の中では僅かな数である。
しかし昨秋、状況が一変し、豊胸手術に関する問題報告件数が急増。昨年後半で4千以上、今年前半には8千件の報告があった。...
全部読む
11月27日付
『AP通信』は「豊胸素材の安全性への問題が露呈」との見出しで以下のように報道している。
世界的に見て豊胸技術の安全性は信頼されてきた。2008年~2015年米食品医薬品局(FDA)には年間200件の苦情が報告されているが、数十万件にのぼる手術件数の中では僅かな数である。
しかし昨秋、状況が一変し、豊胸手術に関する問題報告件数が急増。昨年後半で4千以上、今年前半には8千件の報告があった。異常を訴えた女性達は、疲労感、偏頭痛、自律神経疾患など比較的軽い症状だが10年以上の長期に渡る健康問題に悩まされたという人もいる。
このような被害を訴えるまでなぜ時間がかかるのか。豊胸充填剤業者は、患者を特定し経過観察する義務があるが、多くの報告を数千人単位で一つの報告としており、被害件数が公にはならないのだという。FDAは2011年、豊胸に関連性するとされる特殊なガンの詳細な調査を開始。安全性は高まったようだが、データへの隠ぺい体質が問題視されている。昨年中旬FDAは業者に対し、患者1人1人の疾患データを過去に遡って報告するように指導。充填剤大手、Mentor社とAllergan社は、製品の安全性は信頼でき、過去の問題事例は直接の因果関係がみられないとしている。
今年8月、豊胸注入物や人工股関節、心臓弁など、160以上の種類のハイリスク充填器具の異常報告を4半期ごとに集計報告を認めた。(死亡や損傷の場合を除く)まとめ集計を認めることで公衆衛生上影響はないとしている。
問題の一部は、FDAのガイドラインがあいまいな点。問題の報告は30日以内としながらも、業者の判断にゆだねられている。業者の資金の範囲内の研究、データ不足には懸念の声がある。
豊胸技術は、破損や漏れ等患者の不満が表面化した1990年代に一度ブームは下火になったが、2006年市場にシリコンが復活、現在豊胸を受ける人の4分の3以上は、病気による再建でなく、美容を目的とする。
同日付米国『NBC』は「医師、患者がガンの原因となる豊胸用ジェルに警鐘」との見出しで以下のように報道している。
豊胸により、未分化大細胞リンパ腫と呼ばれる血液のガンを発症する人が数百人に一人いるという。FDAは、ガンを発症した豊胸充填剤に関係する報告を調査中。未分化大細胞リンパ腫発症例では400以上の報告があり、そのうち9人は死亡しているという。
豊胸する女性たちは、乳腺切除や美容のため、乳房再生を選択する。19年間充填剤を入れていた女性は、ずっと問題がなかったが3年前、胸の痒みと痒みが発生、ある日起きたら胸がバレーボールのような大きさになり充血していた。病院では感染による乳腺炎だと言われたという。抗生剤だけでは効かず、医師はその後数回通院するまで、リンパ種との関連を認めなかったという。形成外科医が豊胸充填剤の除去するよう女性を説得し、数十か所に小さな腫瘍が見つかったという。
米形成外科学会によると、2017年には40万件の豊胸手術が行われており、2000年と比べ40%増である。ガンの羅漢リスクは3千8百~3万人に1人の割合だという。
オーストラリアの報告では、千人に1人の豊胸者がガンを発症。オーストラリアの充填剤は米国製の物とは異なる。フランスの国立衛生当局も、充填剤の使用を控えるよう勧告している。米国内の問題としては、病院同士の連携、データ共有不足が挙げられる。形成外科医と治療を行うガン専門医との連携も乏しく、データを統合する枠組みが確立していないのが問題だと指摘される。一番の解決法は、充填剤を使わない事。医師がもっと患者にリスクを説明することも必要。
閉じる