南シナ海をめぐる動きに関し、7月にはフィリピン、米国、ベトナムでそれぞれ反中国運動が起こり、また、日本も、同海域産出の天然ガスをベトナム公社から買付ける契約を締結する等、依然騒がしい状況が続いている。そして8月においても、日米が同海域で大掛かりな共同海上訓練を実施し、日本として、同海域における中国政策に対抗する動きをみせている。一方、中国も、日本の動きに警告を発するだけでなく、2013年11月に東シナ海上空に勝手に設定した防空識別圏(ADIZ、注後記)に進入したとして、米軍大型爆撃機に対して緊急発進(スクランブル)をかける等、引き続き強硬姿勢を貫いている。
9月3日付
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』配信):「南シナ海をめぐる最近の動き」
* 日米が共同海上訓練
海上自衛隊が保有する最大級の艦船が8月末、米軍の原子力空母“ロナルド・レーガン”
率いる空母打撃群とともに、南シナ海周辺で共同海上訓練を実施した。
同訓練に参加したのは、2隻のミサイル駆逐艦を伴ったヘリコプター搭載護衛艦“かが”
で、8月31日付の『ジャパン・タイムズ』紙報道によると、編隊航行、演習工作、海上補給、連絡将校の情報交換等を実施したという。
海上自衛隊の艦船による同海域での訓練参加によって、日本として、中国による海洋進出に対抗していく意向を更に鮮明化したものとみられる。
これに対して中国国防部(省に相当)は先週、日本は平和憲法を変更し、“かつての拡大主義”を復活させようとしていると非難する声明を発表した。
なお、安倍晋三首相はこれまで、中国の南シナ海進出に懸念を表明しており、昨年には、ヘリコプター搭載護衛艦“いずも”を3ヵ月間同海域に張り付ける作戦を実施させている。
* フィリピン海軍フリゲート艦が座礁
フィリピン海軍は、同海軍フリゲート艦“グレゴリオ・デル・ピラール”が8月29日
夜半、南シナ海スプラトリー(南沙)諸島内のハーフムーン礁(フィリピン西端のパラワン島西沖100キロメーターの環礁で、フィリピンが実効支配)周辺で座礁したと発表した。
同礁は、中国が人工島を建設して軍事拠点化を進めている海域の東端にあるため、フィ
リピン高官は、誤解を生まないよう中国側に事態を通知したとする。
フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相は、中国側から救助の申し出があったが、
自分たちで対応可能だと回答したと表明した。
なお、座礁したフリゲート艦は、米国沿岸警備隊から譲り受けた3隻の中古船の1隻で、フィリピン海軍が保有する最大級の戦艦である。
* 中国が米軍B-52爆撃機にスクランブル発進
中国国防部報道官の呉謙(ウー・チャン)大佐は8月30日、米軍のB-52大型爆撃機
が8月23日に東シナ海上空のADIZに進入してきたため、中国軍機がスクランブル発進して警告したと発表した。
一方、米太平洋空軍によると、グアムのアンダーソン空軍基地所属の当該機2機が、南シナ海における第96遠征爆撃訓練のため、8月27及び30日に東シナ海上空を“通常飛行”したに過ぎないと表明している。
更に米軍の発表では、B-52爆撃機は原子力空母“ロナルド・レーガン”率いる空母打撃群との訓練に参加していること、また、これらの作戦は、2004年3月から展開しているインド太平洋爆撃機持続配備作戦に基づく活動で、航行の自由を確保するための、国際法にも叶った作戦であるとしている。
(注)ADIZ:海洋に面した国が安全維持のために、領空を越えた公海上空に設定する一定の空域。この空域への侵入に関する事前報告を要求し、違反時には国内法上の処罰を適用する。
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