中国の習近平(シー・チンピ)主席は、今や毛沢東(マオ・ツォートン)・鄧小平(ドン・シャオピン)以来の共産党の核心と言われるほど、一強の存在となりつつある。そこで、中国においても“忖度”に伴う行為が行われているようで、習主席の体型が似ているとして、2013年に初めてネットで取り上げられた“クマのプーさん”について、突如ネット検閲の対象とされてしまった。2014年の安倍晋三首相と会談した際や、2015年の軍事パレードの車に立ち乗りしたときも、同様に“クマのプーさん”の画像が使われるに至り、これ以上党の核心を侮辱することは許さないと、ネット検閲官が“忖度”して取締りを始めたと考えられる。
7月16日付米
『CNBCニュース』:「クマのプーさんは中国ではブラックリスト入り」
英経済紙
『ファイナンシャル・タイムズ』は7月16日、今秋に開催される中国共産党第19回全国代表大会(中共19代)まで、ソーシャルメディアからクマのプーさん(注1後記)の画像の掲載を禁じる措置が取られている模様と報じた。
中国当局からは、この取り締りについて何ら公式見解はないが、中国版ツイッターの微博(ウェイボ―)ではプーさんの名前の検索が検閲され、また、メッセージアプリの微信(ウィーチャット)ではプーさんの画像が削除されているという。
もともとクマのプーさんがネットに登場したのは、2013年に習近平主席が訪米してバラク・オバマ大統領(当時)と会談した際、その体型と性格等から、習氏をクマのプーさん、オバマ氏をトラのティガー(注2後記)に見立てた画像がネットに掲載されて拡散し始めた。
更に、2014年に習主席が安倍晋三首相と握手したときの写真には、クマのプーさんがロバのイーヨー(注3)と握手している画像が一緒にネット掲載されていた。
そして極めつけは、2015年の軍事パレードの際、習主席が車に立ち乗りした映像が、クマのプーさんがおもちゃの車に乗っている絵と組み合わされてネットに掲載されており、政治分析サイトのグローバル・リスク・インサイトによると、これが“2015年で最も検閲された画像”となったという。
7月17日付英
『ザ・ガーディアン』紙(
『AFP通信』配信):「“何てことだ!”:クマのプーさんが中国ネット検閲の取り締まり対象に」
中国当局は、クマのプーさんを検閲の対象にしたことについて、何ら公式見解を発表していないが、習主席を“頭の悪いクマ”のキャラクターに似せたことを問題視したものと推測される。
中国においては、指導者がコミカルに描写されることに非常に神経質になっており、特に習主席については、今秋開催される中共19代において、党の核心としての地位が盤石になるかどうかの重要な時期となるため、かなり重要視されたものとみられる。
なお、中国のネットユーザーは、クマのプーさんが中国共産党にどんな悪いことをしたというのか、と行き過ぎた検閲に不平を漏らしている。
(注1)クマのプーさん:1920年代に書かれた英国児童小説の主人公のクマのぬいぐるみで、1960年代にディズニー・アニメのキャラクターとして世界的に有名になる。マイペースで食いしん坊。頭はあまり良くなく、字の読み書きもあまりできない。ハチミツが大好物。
(注2)トラのティガー:プーさんの友達で、明るくお調子者だが、思い込みが激しく、破天荒な性格。
(注3)ロバのイーヨー:陰気で悲観的な性格。いつも物事を悪い方へ考えてしまう癖がある。
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