米大統領本選挙を数週間後に控え、ラスベガスの会場で、民主党ヒラリー・クリントン前国務長官と共和党ドナルド・トランプ氏による3回目のテレビ討論会が開かれた。討論会では最高裁、中絶、移民、経済、海外の紛争地域、大統領の適性などの論点で議論が交わされた。世論調査では、クリントン候補がリードする中、女性セクハラ問題の拡大で窮地のトランプ候補による最後の巻き返しの機会であったが、有権者を動かすほどの奇跡は起きなかった。共和党からも支持が離れるトランプ候補とは対照的に、クリントン候補は共和党支持者や無党派層にも抜け目なくアピール。トランプ候補が「選挙結果を受け入れない」としたことやクリントン候補にプーチン大統領の「操り人形」だと言われたことに注目が集まった。
10月19日付
『ロイター通信』は「最終討論会でトランプが選挙結果を受け入れないと発言」との見出しで次のように報道している。
・3度目で最後の討論会で両候補は登場時はすぐに檀上に向かい、両者の間で握手はなかった。前回より政策中心となり、中絶、銃規制、移民等のテーマに沿って90分熱い討論をかわした。
・トランプ氏は11月8日の本選結果を受け入れるつもりはないと逆転の可能性を残し、「その時がきたら言おう。今は保留だ」と発言。
・最近のサイバーテロで情報機関(CIA)や米国務省がロシアによるものとした件で、トランプ氏はロシア批判を拒否していた。ロシアのプーチン大統領の影響をめぐり、クリントン氏はトランプ氏はプーチン大統領の操り人形だと批判。
・トランプ氏は、同氏の数々の女性蔑視問題はすべて「全くのうそ」で、「腐敗した」クリントン陣営の策略だと批判。評価を上げたかった陣営側が仕組んだものだとした。
・クリントン氏はトランプ氏の数々のレトリックをいつも「パターン」があるといい、暴力をうむような危険な方向にもっていく、米国はこんな国ではないはず、と述べた。
・支持率で勢いが劣るトランプ氏は挽回に必死。トランプ氏が不利になるよう選挙は不正操作されていると懸念、支持者らに不正投票しないよう世論調査機関を監視させていた。
同日付英
『BBC』は「トランプVSクリントン、大統領候補討論会はどちらの勝利?」との見出しで次のように報道している。
・共和党トランプ氏が候補にとり、支持を広げるため最後の呼びかけの機会となる討論会。変革者としての候補という立ち位置をキープし、セクハラ批判からの目をいかにかわすか力量が問われた。同氏が求めていた討論会だったが、結果必要が無かった。
・最高裁、銃規制、中絶、移民への議論がされた30分で、司会者、相手候補の発言に口を挟み、クリントン氏に「いやな女」等と発言。選挙結果も受け入れないと発言。
・一方、クリントン氏はメール問題への批判にも平静を保ち、話題を上手くかわしていた。
・「トランプ氏、「不正」な選挙結果を受け入れない」という新聞の見出しが明日朝米国に出回るだろう。トランプ氏はこれを主張したかったはずだが、国民やアメリカの民主主義には受け入れそうにない。
同日付米国
『ニューヨークタイムズ』は「ドナルドトランプは選挙結果を認めないとする」との見出しで以下のように報道している。
・クリントン氏のリードを阻止したいトランプ氏だったが、トランプ氏の選挙結果を受け入れないという発言の方が注目を浴びた。
・クリントン氏が大統領になれば、プーチン大統領の「操り人形」になると指摘され、トランプ氏はクリントン氏が「嘘つき」だとし、メール問題を持ち出した。クリントン氏は終始冷静で、治安対策にも力を入れる、と候補を決めていない共和党員と無党派層に支持をアピール。
・女性問題では、「ドナルドは女性を見下して自分を大きく見せているのよ」とクリントン氏。
・移民問題でトランプ氏は、クリントン氏は国境を開いて違法移民を受け入れようとしていると批判。「悪い奴らが運ぶドラッグの流入を食い止めるため強い国境を作らなければ」と主張。ビル・クリントン元大統領がNAFTA(北米自由貿易協定)調印を批判し、ヒラリー氏の開かれた国境支持発言を批判。
・女性が中絶を選ぶ権利を認めた最高裁判例について、トランプ氏はこれを覆す判事を最高裁に送り込み判事の判断にゆだねるとし、クリントン氏は中絶権を支持するとし、「政府は女性の決断に口をはさめない」、とした。それならとトランプ氏は、「お腹から出産前の子をいつでも引き出せるということか」、と食い掛かった。クリントン氏は、「どんな国になりたい?どんな権利が必要か?米国民はどんな権利がある?」と問いかける手法を使った。
・経済に関して、トランプ氏の内向き政策を批判され、トランプ氏は旧体制やクリントン氏を「ただ経験を積んだだけで15~20年何をやってきたのだ」と批判。クリントン氏はトランプ氏の攻撃への対処法を注意深く準備したようだった。両候補の過去を比べ、「市民を助けるため奔走した」自身に比べトランプ氏は、父から借金し、リアリティTVで美人コンテストの女性を太っていると嘲笑っていたと批判。
・クリントン氏は共和党支持者にも配慮を忘れなかった。トランプ氏が1980年代にレーガン元大統領を批判した件で、トランプ氏は更に批判を上乗りしたのに対し、クリントン氏は共和党の歴史に敬意を払い、「今夜TVを見ている民主党、共和党、全国民の見方だ」と呼びかけた。
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