<米国のダブルスタンダード>
6月13日付【
風の流れ:またもや起きた米国銃撃事件】等でも触れられたとおり、米国では相も変わらず惨い事件が発生しているが、その度毎に起きる銃規制については、実質的効果のある厳しい取り締りまで至っていない。
昨年来、Global iの中で何度か報じたとおり、米国内の銃が絡む事故・事件での死亡者は毎年3万人前後に上る(注;日本ではせいぜい6~10人)。
一方、6月6日付「世界のテロの犠牲者が若干減少」の中で触れたが、2015年に世界92ヵ国で発生したテロ事件による死亡者(自爆テロ犯人含む)は約2万8,300人であり、米国一国の銃犠牲者数より少ない。
このように、米国については、自国内の対応とその他の国への要求で“ダブルスタンダード”と取られかねない事象が少なくない。
例えば、中国他に対する、人権問題に関わる忠告を絶えず発信しているが、白人警官含めた米市民による人種差別的対応問題等は未だに根深く、他国に胸を張れる状況にない。
更に、6月14日付「南シナ海問題とアジアインフラ投資銀行(AIIB)」で触れたとおり、米国が中国に対して、「国連海洋法条約(UNCLOS、1982年4月採択、1994年11月発効。日本の批准は1996年6月)」に基づく行動を求めているが、肝心の米国はUNCLOSを未締結である。
時の大統領が批准に積極的でも、米上院(特に共和党)が賛同しなければ国際条約も批准できないということでは、それこそ、自国の有利なように国際法を解釈する中国など、とても説得などできないであろうし、当然中国は聴く耳を持つはずもない。
古くは、1920年発足の国際連盟について、ウィルソン大統領(当時)が提唱したのにも拘らず、上院の反対で肝心の米国が未加盟で発足するという事態もあった。
また最近でも、「国連障がい者権利条約(2006年12月採択、2008年5月発効。日本の批准は2007年9月)」について未批准である。
米国内の上院議員ら反対者は、これらの国際条約を批准しない理由として、独裁国家にも等しく発言権を与える多国間主義への反発や、腐敗の温床となっている国際機関に対する不信感等を上げているが、うがった見方をすれば、所詮米国の思い通りにならなかったり、米国の権利侵害が起こりそうな条約には賛成できないという“身勝手な行動”でしかなかろう。
卑近な例を挙げれば、筆者はかつて何度も米国とロシアに出張したが、その度にそれぞれの入国管理官に不快な思いをさせられた。しかし、気持ちとしては相対的に“米国>ロシア(米国における不快感の方が大)”であった。
何故なら、ロシアの管理官はポジションでものを言う傾向にあるが(上位者が絶対であり、ましてや一市民に対する役人の態度はとても横柄)、ただそれだけのこと。
しかし、米国のそれはもっとひどく、(2011年の9.11同時多発テロ発生後は特に)米国への入国者はほとんど全て犯罪者扱いであった。トランプ候補が、イスラム教徒入国拒否やら、メキシコ国境に壁を造るなど過激な発言をしているが、それはずっと昔から米国の入国管理官等が思っていることに相違ない。
自分のことを棚に上げて、他人を非難する“ダブルスタンダード”が少なからずあり、それがアル・カイーダ等イスラム過激派はもとより、他のイスラム国家にまで反感を持たれていることに、いいかげん気が付いて欲しいと願うばかりである。
なお、全く次元の違う話だが、メジャーリーグ・ベースボール(MLB)のイチロー選手が6月13日現在、日米通算4,255本のヒットを打ち、MLB最多安打記録まであと1本と迫っている。
ところが、同記録保持者のピート・ローズ氏は、イチローの安打には高校時代の記録が含まれていると揶揄したという。
野球賭博等でMLBを永久追放されている輩に、日本プロ野球を“高校野球扱い”などされる覚えはない。これこそ、自分(自国)に不利な場合に振りかざす“ダブルスタンダード”の典型ではないのか。
確かに、1908年の初の日米野球以来、日本のプロ野球はMLB軍団に全く歯が立たなかった。しかし、2000年以降はかなり良い勝負をしてきており、2014年などは日本側の4勝3敗であった。
米国人(注;一部の過激な人達)に、“謙虚”とか“公平性”という考えが身につく薬を調合して飲ませたい気持ちで一杯である。
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