ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(45歳、2019年就任)はこの程、アラブ連盟(ALN、注1後記)加盟国首脳と会談した後に、主要7ヵ国首脳会議(G-7サミット)に出席した上、同じく招待国の“グローバルサウス(注2後記)”主要国とも直接面談し、同国支持を取り付けるべく奔走した。そして、時を経ずして今週には、ドミトロ・クレバ外相(42歳、2020年就任)がアフリカ諸国を歴訪し、ロシアの影響力を削いでウクライナ支持に回るよう説得外交を行っている。
5月23日付
『ロイター通信』、5月24日付
『AFP通信』、及び5月25日付
『AP通信』等は一斉に、ウクライナ外相が二度目となるアフリカ諸国を歴訪し、ロシアとの関係から中立の立場を取っている態度を改めてウクライナ支持に転換するよう説得外交を行っていると報じている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は5月19日にALN加盟国と面談するや否や、その足で訪日した上で、G-7メンバー国及び同サミット招待国のインド等“グローバルサウス”主要国首脳とも会談し、同国支持を取り付けるべく奔走した。
そして時を経ずして、今度はドミトロ・クレバ外相が5月23日より、同じく“グローバルサウス”と呼ばれるアフリカ諸国を歴訪し、ロシアからウクライナ支持への転換を求めて説得外交を展開している。
ロシアはこれまで、旧ソ連時代からの支援活動の流れからアフリカ諸国との関係を築いていて、西側諸国によるロシア孤立化政策に対抗して、改めてアフリカ諸国からの支持取り付けを目論んで、今年7月にサンクトペテルブルグにおいて、アフリカ・ロシア首脳会議を開催しようとしている。
かかる背景もあって、クレバ外相が昨年10月に続いて二度目となるアフリカ訪問を行い、ゼレンスキー大統領が提案する「和平案(注3後記)」への支持取り付けを実現しようとしている。
同外相はまずモロッコを訪問した後、5月24日にはアフリカ連合(AU、注4後記)の本部があるエチオピア(紀元前980年頃建国)を訪問し、同国のアビィ・アハメド首相(46歳、2018年就任)と会談した。
また、AUのムーサ・ファキ・マハマト委員長(63歳、2017年就任、チャド政治家)及びAUの今年の議長国コモロ連合(1975年フランスより独立した連邦共和制国家)のアザリ・アスマニ大統領(64歳、2016年就任)とも会談した。
その際同外相は、“アフリカ諸国は、列強の植民地下にあった際、旧ソ連から様々な支援を得ていたことから、現在のロシアとの関係を重視したい思いがあると理解する”としながらも、“しかし、今のロシアはアフリカに人道支援や大規模投資を行っておらず、ただ、ウクライナ戦争に首を突っ込んでいるロシア民間軍事会社ワグネル・グループ(2014年活動開始)がいくつかの国の政府軍に軍事支援を行っているだけだ”と訴えた。
(編注;スーダン、リビア、中央アフリカ、マリ等の国軍に軍事支援)
更に同外相は、“これまでウクライナは、アフリカ諸国との外交を積極的に行ってこなかったことから、ロシアによる軍事侵攻に当たって十分ウクライナ支援を得られていない”とした上で、“ウクライナ戦争に伴う物価急上昇や穀物供給問題に喘ぐアフリカ諸国に対して、穀物の主要供給国として、黒海経由のアフリカ向け供給を確保するとともに、アフリカ向け投資も積極的に行う”と強調している。
なお、ウクライナ軍事侵攻から1年が経った今年2月、国連総会においてロシア軍の早期撤退を求める決議に対して、AU加盟国のうち22ヵ国が棄権し、また、エリトリア(1993年エチオピアから独立した共産主義国)とマリ(1960年フランスより独立した共和制国家)は反対投票を行っていた。
(注1)ALN:アラブ世界の政治的な地域協力機構。第二次世界大戦末期の1945年3月創設。本部はカイロにあり、加盟は22(21ヵ国と1機構)。
(注2)グローバルサウス:一般的に発展途上国を指し、それらの多くが主に南半球に位置することに由来。世界銀行における低中所得国、国連における発展途上国の交渉グループ、あるいは冷戦期における第三世界と表現。西側諸国としては、権威主義の中・ロに取り込まれないよう連携強化を望むが、彼ら自身は国益最大化のために、欧米のみならず中・ロとの等距離外交を望む。
(注3)和平案:ゼレンスキー大統領が昨年11月、主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)の席上で明らかにした10項目から成る提案。ロシア軍の即時撤退、ロシア軍が破壊した電力インフラ復旧の資金拠出等を含む。
(注4)AU:2002年発足のアフリカ大陸55ヵ国が加盟する政府間連合。本部はエチオピア・アディスアベバ。今年の議長国はコモロ連合。
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