シリア難民法案に続いて、アメリカでビザが免除されていた国からの渡航の制限も厳しくしようという法案が下院で圧倒的多数で可決した。過去5年間にシリアやイラクへの渡航歴があるとスクリーニング要件を満たす等というものだ。共和党のトランプ氏がイスラム教徒への入国禁止を提案し騒然とする中、アメリカは警戒感を募らせている。各紙は以下の様に報道している。
12月9日付け
『REUTERS』
下院は火曜、ビザなし渡航を許可している38か国の国民の米国への入国制限を強化する法案を圧倒的多数で可決した。先月13日のパリでのテロ事件以来2件目となる国家安全保障法案で、407対19での可決となった。ビザを免除されている主に西欧諸国からの渡航者が米国への渡航ビザを取得するためには、過去5年間シリア、イラン、スーダンへの渡航履歴がない事などが条件となる予定だ。またその他の条件として、米国のテロ容疑者について当局と情報を共有するプログラムに加盟している国に限る。この法律はセキュリティの隙を埋め危険人物を阻止する水際対策として効果がある、と国土安全保障委員会会長で共和党のマイケル・マコール氏は述べている。1986年、観光客増加と同盟国との関係強化のため設けれらた当プログラムにより、年間約20万人が訪米、90日間の滞在が認められている。
他の安全保障法案は、シリアとイラクからの難民への更に厳しい身元調査要件を課す厳しいものだ。
242名の共和党議員に対し、民主党議員は僅か47名がこの法案に賛成、バラク・オバマ大統領は拒否権を行使した。
水際対策についての議論は、ISに傾倒したイスラム教徒の夫婦による銃乱射事件以来、より白熱している。共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏は、イスラム教徒の米国入国を禁止することを提案、この発言は国際的な非難を招いた。
上院はいずれかの措置にも評決を予定しておらず、今後数日中に両法案を議会が1兆ドル支出法案に含められる予定である。
政府はビザ免除プログラム厳格化を支持すると表明している、と報道している。
12月9日付け
『YAHOO NEWS』は次のように報道している。
ビザ免除渡航者は全員インターポールのデータベースと照合され、ビザ免除国からの渡航者には生体情報が搭載された「電子パスポート」の発行が義務付けられる。
「ビザ免除の西欧人のうち5000人以上が過去5年間にイラク、シリアへ渡航履歴が確認され、見直しが必要だ。」と多数党リーダーのケビン・マッカーティー氏は述べている。年間20万の渡航者は国土安全保障省のオンラインシステムを通して身元調査されており、政府は最近、プログラムの一部の改良を発表した。
しかし、2004年の国土安全保障監察官の報告書によると、過去のビザなし渡航者の中には、2001年12月にマイアミにパリからのフライトに搭乗し、爆弾を仕掛けようとした「靴の爆撃機」のリチャード・リードのようなテロリストも含まれている。また2001年2月、9月11日以来20人目のハイジャッカー、ザカリア・ムサウイもフランスのパスポートでロンドンからシカゴ行に搭乗している。
両党の議員らは、政府が認める法案に賛成している。パリのテロによるシリア難民対策で連邦議会が法案を可決して以来珍しく二党連携している。
シリア難民法案は上院で進展していないが、一方、ビザ免除法案は現在上院での最終調整を経て年末の予算法案に確実に加わる様相となっている。
これとは別に議員の間では、カリフォルニア州サンバーナディーノでの事件でマリク容疑者が許可された婚約者ビザのプログラムが議論されており、国土安全保障省はすでにそのプログラムの見直しを発表している。民主党議員の中には、法案が可決する前にビザ免除法案に反対していた声もあった。ミネソタ州民主党議員キース・エリソン氏は、ビザには例外を認め、例えば、ジャーナリストや研究者等の権利は守るべきであり、我々は焦点を国や国籍でなくテロに絞るべきだ、と述べたとされる。しかし、ほとんどの民主党議員は共和党と法案可決で一致した。「これは良い法案である、よいタイミングだ。」と、ミシシッピ州トップの民主党議員で国土安全保障委員会のベニー・トンプソン氏は述べている。
閉じる