フランス、食料主権を脅かす干ばつの危機(2022/05/11)
フランスが、干ばつのリスクに直面している。この冬に十分な雨が降らず、水位が補充されていないことが問題視されている。フランス政府は、ウクライナ戦争の影響を和らげるために生産量を増やす必要があるこの時期に、農業が苦戦を強いられることを懸念している。
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『レゼコー』によると、フランス政府は干ばつに直面する可能性が高まっていることに対して、「深刻な国際情勢に打撃を与える可能性がある」として警戒している。フランス農林水産省は、フランス気象局が「今年は平年より乾燥した暑い夏になる可能性が高い」と発表したことを受けて、ウクライナ戦争によって脅かされているフランスの食料主権を守っていくことができるかどうか懸念を表明している。
この冬は雨が少なく、水位が補充されていない中、前月4月の降雨量はフランス全体で平年の25%にとどまった。...
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『レゼコー』によると、フランス政府は干ばつに直面する可能性が高まっていることに対して、「深刻な国際情勢に打撃を与える可能性がある」として警戒している。フランス農林水産省は、フランス気象局が「今年は平年より乾燥した暑い夏になる可能性が高い」と発表したことを受けて、ウクライナ戦争によって脅かされているフランスの食料主権を守っていくことができるかどうか懸念を表明している。
この冬は雨が少なく、水位が補充されていない中、前月4月の降雨量はフランス全体で平年の25%にとどまった。現在すでに7つの地域で警戒態勢、6つの県が厳戒態勢、2つの県が危機的状況にあるという。専門家たちは、小麦や大麦など、昨年の秋に作付けされ冬作物の生育に影響が出始めており、「収穫量に影響が出る可能性がある」と指摘している。フランス最大の農業組合FNSEAは、小麦の場合は、このまま「数週間乾燥した天気が続けば、収量が40%も落ちる」恐れがあると警告している。
しかし、干ばつの影響は、4月に播種されたビートなどの春作物で特に懸念されている。これらは、今後数週間の降雨量に大きく左右されるため、今後2週間雨が降らなければ、特にトウモロコシとヒマワリの生産が危ぶまれる可能性があるという。
また、飼料作物にも影響が出始めている。 冬の終わりには草の成長は良好で、生産量は平均より高かったものの、ここ数週間の干ばつの最初の兆候の出現により、植物の成長は急激に鈍化した。これからも乾燥した天候が続く場合、成長がさらに遅くなる可能性が懸念されている。
仏『BFMTV』によると、農業組合のFNSEAは、干ばつの「影響は全土に及ぶ」と警告している。10月から11月にかけて、ポルトガルとスペインで発生した大干ばつが、現在はフランスの南のオクシタニア、プロヴァンス、ローヌ渓谷沿いまで移動しているという。
4月に開設された、農業における気候変動対策のための2000万ユーロ(約27億円)の支援金は、「さらに2000万ユーロ」が補充されると発表された。また、フランス政府は4月末に、貯水池の設置など、様々な干ばつ対策のために水道局がさらに1億ユーロ(約137億円)を支出できると発表した。しかしこれには、環境団体や一部の農民組合が反対している。
現在、すでに15の県で、節水の奨励から、庭や畑への水やりの時間帯の禁止(警戒態勢)、さらには農業用水の取水量を50%削減、洗車や緑地への水やりの全面禁止(厳戒態勢)などの規制措置が取られている。
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ロシアのガス供給停止:エネルギー市場におけるロシアの支配力が低下(2022/04/28)
ロシアのガス最大手ガスプロム社がポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を27日に停止した。このニュースが流れた後、欧州の天然ガス価格は24%も急騰した。しかし、その後は下げに転じ、直近では4%ほど上昇している。米投資週刊誌
『バロンズ』は、ロシアはまだヨーロッパのエネルギーに対して力を持っているが、戦争が始まって以来、その力は弱まっていると報じている。
『バロンズ』によると、欧州は昨年時点で天然ガスの40%以上をロシアに依存しており、ロシアによるウクライナ侵攻にもかかわらず、EUはその輸送を断ち切ることに躊躇した。特に冬場は暖房用として天然ガスが欠かせない。3月上旬、オランダの天然ガス先物は1メガワット時200ユーロを超える高騰を見せた。しかし今回、ロシアがポーランドやブルガリアへの供給停止の動きに出たにもかかわらず、現在107ユーロで取引されている。...
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『バロンズ』によると、欧州は昨年時点で天然ガスの40%以上をロシアに依存しており、ロシアによるウクライナ侵攻にもかかわらず、EUはその輸送を断ち切ることに躊躇した。特に冬場は暖房用として天然ガスが欠かせない。3月上旬、オランダの天然ガス先物は1メガワット時200ユーロを超える高騰を見せた。しかし今回、ロシアがポーランドやブルガリアへの供給停止の動きに出たにもかかわらず、現在107ユーロで取引されている。高騰を招かない理由は大きく4つあげられる。
まず、気温が上がったことにより、天然ガスの需要が減っている。ヨーロッパでは、暖房用エネルギーの40%近くを天然ガスが占めており、暖房の温度を下げると、天然ガス料金も下がる傾向にある。もしプーチンが2月にポーランドとブルガリアへのガスを遮断していたら、その影響はより大きなものだったと言える。
第二に、ポーランドとブルガリアは天然ガスのほとんどをロシアに依存しているが、この地域で最大のガス消費国ではない。ドイツ、イタリア、トルコはロシアのガスを大量に輸入しており、ロシアがこれらの国々へのガスを遮断しようとすれば、より大きな影響を引き起こす可能性が高い。ゴールドマン・サックスのアナリスト、サマンサ・ダート氏は、「ロシアからドイツへのガスが完全に途絶えた場合、この夏のヨーロッパのガス価格はメガワット時200ユーロ以上にまで上昇する可能性がある」と指摘している。
第三に、欧州は2ヶ月前よりも出荷の減速に対する備えが整っている。現在、欧州は新たな天然ガス供給源を見つけ、天然ガスからの脱却に向けた取り組みを加速させている。この秋にはノルウェーとポーランドの間に新しいパイプラインが開通する予定で、これまでも液化天然ガス(LNG)の輸入を増やしている。
第四に、米国が液化ガスを輸送することで、ヨーロッパはロシアから脱却し、いくつかの国は来年の冬に向けて貯蔵タンクの補充を開始することができる。米国は、2022年に2021年比で60%以上のLNGを欧州に出荷する計画を発表している。
仏メディア『BFMTV』によると、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は27日、ロシアからのガスの供給停止を受けて、ブルガリアとポーランドには「EUの隣国から」ガスが供給されていると述べ、「ガスプロムの決定がヨーロッパの消費者にできるだけ影響を与えないようにする」と語った。
フォン・デア・ライエン委員長は、EU議長国であるフランスが「できるだけ早く」EUエネルギー大臣会合を開催することを明らかにした。そして、「今日、ロシアは加盟国間に分裂の種をまくという試みにまたもや失敗した」と述べた。
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