英国は、3月末での「合意なき欧州連合(EU)離脱」の可能性が高まったこともあって、日本を初めとする各国自動車メーカーや金融事業の国外移転の憂き目に遭っている。更に、2月1日発効の日本・EU経済連携協定で適用される関税撤廃も不適用となり、英国の輸出入貿易にも深刻な影響を及ぼす恐れがある。そうした中、中国との二国間経済連携が頼みの綱となっていて、英財務相が訪中しての貿易拡大協議への期待が大きい。しかし、今月初めに英国防相が、南シナ海に空母を派遣して、同海域での国際秩序維持に当らせると発言したことから、中国が英財務相の訪中を拒否するとのニュースが一時的に流れた。これに対して、経済規模や軍事力で英国を遥かに凌駕する中国は、先の挑発的発言など物ともせず、英財務相の訪中を歓迎すると、余裕の対応をしている。
2月22日付米
『ロイター通信』:「中国、英財務相の訪中を歓迎すると発表」
中国外交部(省に相当)の耿爽(グァン・シュアン)報道官は2月22日の定例会見で、英国のフィリップ・ハモンド財務相の訪中を歓迎すると発表した。
ただ、同報道官は、中国は英国との関係を重要視していることから、英国側にも中国の核心的利益や懸念事項を配慮の上、建設的で安定した関係構築に努めるよう求めると付言した。...
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2月22日付米
『ロイター通信』:「中国、英財務相の訪中を歓迎すると発表」
中国外交部(省に相当)の耿爽(グァン・シュアン)報道官は2月22日の定例会見で、英国のフィリップ・ハモンド財務相の訪中を歓迎すると発表した。
ただ、同報道官は、中国は英国との関係を重要視していることから、英国側にも中国の核心的利益や懸念事項を配慮の上、建設的で安定した関係構築に努めるよう求めると付言した。
今月初め、英国のガビン・ウィリアムソン国防相が、同国最新鋭の空母を太平洋地域に派遣して、中国の海洋進出に対抗するため、同海域での国際秩序維持の任務に当らせると発言していた。
この発言を受けて、英国メディアは先週一斉に、中国側が英財務相の訪中を拒否することを決めた模様だと報じた。
今回の中国外交部発表は、この報道を受けて行われたものとみられる。
肝心のハモンド財務相は2月21日、中国との関係は入り組んだものであることから、英海軍の南シナ海軍艦派遣の話で英中間の関係に単純に影響が出ることはないとコメントした。
一方、英国防部高官は、ウィリアムソン国防相の発言については、事前に財務省にもテリーザ・メイ首相事務所にも連絡していたと述べている。
なお、英中貿易は2017年に史上最高を記録している。
すなわち、英国にとって6番目の輸出先の中国向け輸出高は223億ポンド(291億5千万ドル、約3兆2,070億円)、また、4番目の輸入先である中国からの輸入高は452億ポンド(約6兆5,000億円)を記録している。
一方、同日付英国『ザ・サン』紙:「フィリップ・ハモンド財務相、中国牽制のために空母を派遣するとのガビン・ウィリアムソン国防相の発言は“越権行為”と非難」
ハモンド財務相は2月21日、『BBCラジオニュース』のインタビューに答えて、ウィリアムソン国防相が英国の最新鋭空母“クウィーン・エリザベス”を南シナ海に派遣して、中国の海洋進出を牽制する任務に当らせると発言したことは、英中間関係を毀損するもので看過できないと述べた。
また同財務相は、同空母はまだ今後数年、フル稼働できる状況にはならず、更に、同空母の作戦等を決定するのは国家安全保障会議であって、同国防相には空母派遣を決定する権利はないと糾弾した。
先週末、2月11日の同国防相の発言を受けて、中国側が同財務相の訪中を拒否する模様との報道がなされている。
同財務相は訪中して、現在中国が禁輸している英国の家禽及び化粧品を解禁するよう交渉する意向であった。
もし、これら英国貿易品目が解禁されれば、今後5年で102億ポンド(約1兆4,700億円)のビジネスに成長する可能性がある。
なお、メイ首相付報道官は、英中関係は非常に重要で、今後とも強靱でかつ建設的な関係を継続していく意向であるとコメントしている。
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メイ英首相は18日、保守党党首としての自身に対する不信任投票を求める動きが広がっていることに対し、党首交代は欧州連合(EU)離脱を遅らせるだけとけん制した。首相はまた、先に示した離脱協定の素案について、一部の主要閣僚から出ている再交渉すべきとの意見に対し、これに代わる案はないと強調した。
『ロイター通信』などが伝えたところによると、メイ首相は、現時点での党首交代は離脱交渉を遅らせるだけであり、自分はEUとの交渉に集中するとの意向を示した。首相はスカイ・ニュースに、「この7日間は、我が国の将来に関し非常に重要な時期となる。私は重要な仕事から気を散らされることはない。」「現時点での党首交代により、交渉が容易になることはなく、離脱が遅れるか、失望させる内容となるリスクがある。」と語った。
離脱協定の素案が公表され、14日の臨時閣議で承認されて以降、ラーブEU離脱担当相らがこれに抗議して辞任し、与党・保守党内の反対派は党首交代を求め、素案は議会で承認されないだろうと主張している。
不信任投票が行われるためには、保守党議員48人が、同党の議員委員会である「1922委員会」のブレイディ委員長に投票を求める書簡を提出する必要がある。これ迄20人以上の議員が提出したことを認めたが、提出を公表していない議員もいるとみられる。ブレイディ委員長は18日、BBCラジオに対し、まだ48人には達していないと説明した。
メイ首相は、アイルランド国境問題などについて交渉は続いており、今週ベルギーのブリュッセルを再度訪問し、欧州委員会のユンケル委員長と会談する他、離脱に関し25日に実施されるEU首脳会議に先立ち、他のEU首脳とも会談する考えを示した。メイ首相は、今週の焦点は、EUとの将来の関係になるだろうとスカイ・ニュースに語っている。
英メディアは、5人の離脱派の主要閣僚らが、今週末首相がEU首脳と会う前に、離脱交渉案を変更するために再交渉するよう、圧力をかけていると報じた。メイ首相は、この動きに対し、現在の素案に代わる案はないことを強調しているという。
メイ首相は18日付の英大衆紙サンの日曜版サン・オン・サンデーに寄稿し、「テーブル上に代替案はない。我々がEUと合意できる異なった手法はない。」と主張し、「もし議員らが素案を拒否するなら、振り出しに戻るだけだ。さらなる分断を招き、不透明感が増大し、英国民が国民投票で示した意思に対し、結果が出せなくなる。」と続けた。
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