英仏間で漁場権をめぐるせめぎ合い【米メディア】(2021/11/02)
英国とフランスは、13~14世紀にかけての百年戦争、そして海外植民地支配権争いを行った17世紀末~19世紀初の断続的な抗争(第2次百年戦争と呼ぶ場合もある)と、長い間敵対してきた。現代にあっては、主要7ヵ国首脳会議(G-7サミット)等を通じて連携の度合いが高まっているが、AUKUS(注後記)成立に伴って、英国・フランス間に亀裂が走った。そうした中、今度は英国海峡における漁業権をめぐるせめぎ合いが起こり、両国間の新たな火種になる恐れがある。
11月1日付
『AP通信』:「フランス、英国との漁業権をめぐるせめぎ合いに一時的猶予」
エマニュエル・マクロン大統領(43歳)は11月1日、英国が欧州連合(EU)離脱後に起こっている漁業権をめぐる争いについて、11月4日に予定される両国間代表による直接交渉で進展が得られるまで、強硬手段を講じないよう一時的に猶予する旨表明した。
両国は、英国海峡の英王室属領のチャネル諸島近海における漁業権で対立してきている。...
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11月1日付
『AP通信』:「フランス、英国との漁業権をめぐるせめぎ合いに一時的猶予」
エマニュエル・マクロン大統領(43歳)は11月1日、英国が欧州連合(EU)離脱後に起こっている漁業権をめぐる争いについて、11月4日に予定される両国間代表による直接交渉で進展が得られるまで、強硬手段を講じないよう一時的に猶予する旨表明した。
両国は、英国海峡の英王室属領のチャネル諸島近海における漁業権で対立してきている。
フランス側は、同近海での漁業権をもっと多くのフランス漁船に与えるよう求めていて、これが認められない場合、英国産品を輸送する船舶の同国入港禁止や、同じく輸送トラックの規制を強化すると主張していた。
更に、ほとんどフランスに頼っている同諸島への電力供給を制限するとも強調していた。
フランスは、長い間フランス漁船が同近海でロブスター・巻貝・タイ等を漁獲してきているのに、今年初めのBrexit以降、英国及びチャネル諸島当局がフランス漁船の操業を認めない決定をしていると非難している。
これに対して、英国側は、Brexit後にEUから申請のあった漁船総数の98%に許可を与えているとした上で、(不許可とされた)数十隻のフランス漁船は申請に付帯すべき文書手続きに不備があったからだと反論している。
英国首相府のマックス・ブレイン報道官は、“必要な証明書類が提出されれば、すぐにでも許可を出す用意がある”と強調した。
ただ、両国とも、相手側の方がBrexitに当たって英国がEUと交わした契約に違反していると非難し合っていることから、欧州委員会(1967年設立、EU政策執行機関)が今週初め、英国、フランス及びチャネル諸島のジャージー管轄区・ガーンジー管轄区代表が一堂に会して、“懸案事項を速やかに解決すること”を要求したと発表している。
漁業は両国経済規模からいって小さなものだが、両国は長い間大事に扱ってきたもので両国間の協調のシンボルでもあった。
しかし、Brexit以降、両国それぞれが領海内の漁業権の扱いを主導するようになってきている。
英国のリズ・トラス外相(46歳)は『BBCラジオ』のインタビューに答えて、フランス側が“不適切な”脅しを仕掛けてくる限り、英国が“翻意する考えは全くない”とした上で、“フランス側がこのような脅しを撤回しない場合、EUの調停機関に仲介を求めることになろう”と言及した。
一方、マクロン大統領は、“英国とEUには、気候変動問題、技術革新、欧州の団結等、協力して当たっていくべき多くの案件がある”とした上で、フランスの漁業を守ることも大事なことではあるが、両国の連携が今後も継続していけるよう、本件の交渉が一日も早く妥結することを願っている、と発言している。
なお、両国によると、11月4日にパリで開催される当事者間交渉には、英国のデビッド・フロストBrexit担当相(56歳)とフランスのクレメン・ボーン欧州外交担当相(30歳)が出席するという。
(注)AUKUS:豪州 (AU)、英国 (UK)、米国 (US)の三国間の軍事同盟で、2021年9月15日に発足。この中で、米国と英国が、豪州による原子力潜水艦の開発・配備を支援し、太平洋地域における西側諸国の軍事的プレゼンス(影響力)を強化することを目指すことになった。ただ、この新たな契約に伴い、豪州は先に締結していたフランスとのディーゼル型潜水艦契約を破棄している。
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イギリス、政府に協力したアフガニスタン人に永住権を付与(2021/09/03)
イギリス政府は、「オペレーション・ウォーム・ウェルカム」と呼ばれる制度を発表し、政府や軍に協力したアフガニスタンの人々に永住権と無制限の就労権を与えることを明らかにした。
英
『スカイニュース』によると、英国政府や軍に協力したアフガニスタンの人々は、これまで5年間の一時的な居住権しか得ることができなかった。しかし、イギリス政府が1日に発表した「オペレーション・ウォーム・ウェルカム(温かく迎えるための作戦)」と呼ばれる制度の一環として、イギリスに協力してくれたアフガニスタンの人々に永住権と無制限の就労権を与えることが明らかになった。
この制度は、「アフガニスタンの移転および支援政策(ARAP)」の対象となる人々が利用できるもので、タリバンがアフガニスタンを支配している現在、生活に対する深刻な脅威があると判断された人を優先的に支援するプログラムとなっている。...
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英
『スカイニュース』によると、英国政府や軍に協力したアフガニスタンの人々は、これまで5年間の一時的な居住権しか得ることができなかった。しかし、イギリス政府が1日に発表した「オペレーション・ウォーム・ウェルカム(温かく迎えるための作戦)」と呼ばれる制度の一環として、イギリスに協力してくれたアフガニスタンの人々に永住権と無制限の就労権を与えることが明らかになった。
この制度は、「アフガニスタンの移転および支援政策(ARAP)」の対象となる人々が利用できるもので、タリバンがアフガニスタンを支配している現在、生活に対する深刻な脅威があると判断された人を優先的に支援するプログラムとなっている。
8月13日以降、1万5千人以上の人がアフガニスタンから避難しており、そのうち8300人以上がARAPの対象者となっている。また、すべての到着者に新型コロナワクチンの接種が提供されている。
永住権以外にも、イギリス政府は次のようなものを提供する。子どもの教育支援に1200万ポンド(約18億円)、 医療を受けるための支援として300万ポンド(約4億5千万円)、 地方自治体への住宅支援に500万ポンド(約7億6千万円)、 最大300人の大学生および大学院生に奨学金の提供、成人には無料の英語クラスの提供。また、国民保険番号の取得や宿泊施設の提供、支援の申し出を登録できるオンラインポータルの設置などのサービスなどである。
ジョンソン首相は、「私たちは、アフガニスタンで軍隊に従事した人々に対し、多大な恩義がある。私は、彼らとその家族が英国での生活再建のために必要な支援を提供することを決意した。」と述べ、「非常に困難な時期であることは承知しているが、英国国民がすでに表明している支援と寛大さの波を、彼らが心に留めてくれることを願っている」と語った。
英『BBC』によると、ドミニク・ラーブ外相は、アフガニスタンに残った英国に来る資格のある人の数については「明確な」数字は出せないと述べている。
7月に妻と6人の子供を連れてカブールから英国に到着したアーメドさん(本名非公開)は、BBCラジオ4の番組で、住所不定の難しさについて語った。「私たちはここしばらく、大人数でホテルに住んでいましたが、だんだん厳しくなってきている。そろそろちゃんとした家に引っ越したいと思っている」と語った。そして「銀行口座を持つことができないので、それが一番の心配事だ」と述べている。
アフガン再定住大臣に任命されたビクトリア・アトキンスは、BBCに対し、「オペレーション・ウォーム・ウェルカム」は人々が「私たちの社会に加わる」のを助けるものだと述べた。ホテルに滞在している人々については、「私たちは彼らを恒久的な住居に移すことを望んでいるが、この規模の移住だと恒久的な住居が不足していることを、現実的に考えなければならない」と述べた。なお、地方議会の3分の1が難民支援を申し出ており、政府は「さらに多くの地方議会と話をしている」と述べた。
アトキンス氏は、「アフガニスタンで我々のために懸命に働いてくれた、我が国が歓迎している人々を、公平に扱うことは正しいことだ。同時に英国国民に対しても公平であるようにしなければならない。私たちは、人々ができるだけ早く、適切に、英国社会に組み込まれることを望んでいる」と付け加えた。
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