メキシコで脱獄逃走中の麻薬王を再逮捕(2016/01/12)
8日、メキシコ市郊外の刑務所から昨年7月に脱獄し逃走中であった「シナロア麻薬カルテル」のエル・チャポことホアキン・グスマン受刑者が、メキシコ海兵隊によって拘束・逮捕された。メキシコ政府は、米国がかねてから要求していた同受刑者の引き渡しに応じる意向を示しており、米国でアル・カポネ以来の組織犯罪の大物の裁判が開始されることになりそうである。一方、米国人俳優のショーン・ペン氏がエル・チャポの逃走中に極秘インタビューをおこない、ローリング・ストーン誌がその記事を逮捕直後に掲載したことが論議を呼んでいる。
1月10日付
『CBSニュース』は、シナロア麻薬カルテルのボスで脱獄逃走中であったエル・チャポが逮捕された直後、ローリング・ストーン誌が、それまで伏せていた独占インタビューを掲載したことを報じている。
ペン氏は昨年秋メキシコの山中で逃走中のエル・チャポにインタビューした。その中で、エル・チャポは家族を養うために麻薬取引に加わったこと、最近20年間は麻薬を使っていないこと、争い事を望まず自分を守っているだけだなどと語っている。...
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1月10日付
『CBSニュース』は、シナロア麻薬カルテルのボスで脱獄逃走中であったエル・チャポが逮捕された直後、ローリング・ストーン誌が、それまで伏せていた独占インタビューを掲載したことを報じている。
ペン氏は昨年秋メキシコの山中で逃走中のエル・チャポにインタビューした。その中で、エル・チャポは家族を養うために麻薬取引に加わったこと、最近20年間は麻薬を使っていないこと、争い事を望まず自分を守っているだけだなどと語っている。エル・チャポはメキシコから米国への麻薬密輸のほぼ半分を仕切るとともに、3万4千人以上の殺人に関与していると伝えられている。先週金曜日、メキシコ軍海兵隊がロス・モキスという町に降下し、銃撃戦で5人のカルテル戦闘員を殺害後エル・チャポを拘束した。メキシコ当局は米国人俳優ショーン・ペン氏との極秘インタビューは先週金曜日の逮捕の一つの手掛かりになったと明かしている。
ショーン・ペン氏は、ハリウッドからはエル・チャポの半生を描く映画の依頼が殺到していたが、エル・チャポは最終的にメキシコ人女優のケート・デル・カスティージョ氏にそれを委ねたと話している。エル・チャポはハリウッドに行かないとしても、米国の6つの州から逮捕状が出ているため米国に引き渡される可能性が高いが、それはエル・チャポが最も恐れていることだと同ニュースは報じている。
1月10日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、1995年にサンディエゴの連邦大陪審からコカイン密輸で起訴され、その後7州で追起訴されているエル・チャポが米国に引き渡されることになりそうだと報じている。米検察当局は、エル・チャポの麻薬カルテルは数十万ポンド(数十億ドル)のコカインを米国に密輸したとして、メキシコに対し過去何回も引き渡しを要求してきたが、これまで引き渡しはされなかった。しかし、昨年夏の脱獄後ようやく逮捕されたことを受け、メキシコ政府は米国への引き渡しに前向きの姿勢を示している。
メキシコがエル・チャポの引き渡しに応じるには、米国は死刑が宣告される可能性がある重罪で告発しないことを保証する必要があることはほぼ間違いない。メキシコには死刑制度がなく、死刑になる可能性のある被告を外国に引き渡さない方針を採っている。
シナロア麻薬カルテルのボスであるエル・チャポとイスマイル・ガルシアは、1980年代以降米国に500トン以上のコカイン、ヘロイン、メタ・アンフェタミン、マリファナなどを密輸した容疑で起訴されている。また、起訴状ではメキシコ警察官や兵士、議員、ライバル密輸組織のメンバーの殺人への関与についても指摘している。
1月10日付
『US&ワールドリポート』紙は「AP」電として、俳優のショーン・ペン氏がローリング・ストーン誌に掲載した悪名高い麻薬王とのインタビューは倫理的に問題があり、大スクープではあっても賞賛には値しないと報じている。ローリング・ストーン誌は先週末、ショーン・ペン氏が脱獄して逃走中のエル・チャポに昨年秋にインタビューした記事を掲載した。エル・チャポは先週金曜日、5人のボディーガードが銃撃戦で死亡した後逮捕された。
この記事ついては、倫理上または判断に関する疑問がある。つまり、ペン氏は当局が必死で追っている脱獄者と秘密裡に会うべきだったのか、また、記事の内容についてエル・チャポの事前承認を得るという間違いを犯していないか、麻薬王のエル・チャポに「将来の夢は?世の中を変えることができればやりますか?」などと質問してその残忍な過去を矮小化することにならないのか、などの疑問である。ローリング・ストーン誌の広報は、こうした質問にコメントしない。一方、ペン氏はエル・チャポが記事内容を変更しないことを条件に承認したことを認めたが、それはジャーナリズムの基本ルールを無視するものであると批判している。
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戦禍に翻弄されるシリア人の暮らし(2015/09/16)
戦禍に追われ、住む場所を失った数百万のシリア人が、故郷や国を離れ難民となっている。平穏な暮らしを奪われた難民の苦境を海外メディアがレポートしている。
9月15日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、シリア政府軍の反政府勢力に対する攻撃は激しさを増しており、一般人の犠牲者が増えていると報じている。ダマスカス近郊にある人口50万人のドーマという都市では、政府軍による空爆の開始で8割の住民が既に町を去っている。ドーマとその近郊では過去1ヵ月間に空爆で550人以上が死亡し、その大半が子供123人を含む一般人である、と赤十字医療団は報告している。人権団体“ヒューマン・ライツ・ウオッチ”や反体制派支援グループは、ドーマのように反政府勢力が支配する地域への政府軍の爆撃は、ISよりはるかに多く市民の命を奪っていると主張している。...
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9月15日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、シリア政府軍の反政府勢力に対する攻撃は激しさを増しており、一般人の犠牲者が増えていると報じている。ダマスカス近郊にある人口50万人のドーマという都市では、政府軍による空爆の開始で8割の住民が既に町を去っている。ドーマとその近郊では過去1ヵ月間に空爆で550人以上が死亡し、その大半が子供123人を含む一般人である、と赤十字医療団は報告している。人権団体“ヒューマン・ライツ・ウオッチ”や反体制派支援グループは、ドーマのように反政府勢力が支配する地域への政府軍の爆撃は、ISよりはるかに多く市民の命を奪っていると主張している。シリアの反体制市民グループによると、政府軍の空爆で1万8千人の一般人が犠牲になり、政府軍と反政府勢力双方の迫撃砲やロケット攻撃で2万7千人が死亡している。
ドーマでの暮らしを妨げるのは爆撃だけではない。数年にわたる政府軍の封鎖により、住民は日用品をトンネルや密売を通じてしか入手できず、人道的援助物資も殆どが阻まれている。政府軍も反政府勢力も賄賂を要求し、密売で金を稼いでいる。荒廃した多くの都市から首都ダマスカスに避難民が集まるが、ここでも反政府支配地域から逃れてきた住民は、警備当局から脅迫や逮捕されることを恐れる日々が待っている。このような理由で、4百万人ものシリア人が隣国のレバノン、ヨルダン、トルコなどに難民として逃れているが、これらの受入国も、難民に対する態度は冷淡になっていると同紙は報じている。
9月15日付
『US&ワールドリポート』は、トルコに避難しているシリア人は200万人以上であり、26万人が難民キャンプに住んでいると報じる。シリア難民はトルコ全土に分散しているが、イスタンブールだけも33万人に達し、さながらシリアの新首都の様相を呈している。裕福なシリア人難民はトルコ各地で会社を興し、同朋のシリア人を雇ってレストラン、建設業、衣料品、旅行業などの事業をおこなっている。しかし、幸運な難民は一部に過ぎず、貧しい難民は気の毒な目に遭う。労災保険もない低賃金労働を強いられるなかで悲惨な事故も起きている。また、賃金が支払われないことも稀ではない。仕事に就けず売春や物乞いをする者もいる。トルコでは600万人の失業者を抱えており、各地でシリア人に仕事を奪われたトルコ住民とシリア難民の間で衝突が頻発している。
9月15日付
『ボイス・オブ・アメリカ』は、シリアでは学齢期の子供640万人のうち200万人が、戦闘や暴力によって学校に通えずにいると報じる。ユニセフは、これに加え40万人の生徒が戦闘の拡大や避難によって退学を余儀なくされていると述べている。戦争前のシリアでは、普通教育がほぼ浸透し識字率は90%を超えていたが、今や教育体系は機能していない。シリアの教育制度が完全に崩壊するのを避けるため、ユニセフは学校に行けない子供のための自習プログラムを開発し、これを危険でアクセスできない地域や難民の子供に普及させる計画を進めている。ユニセフの広報担当者は、「シリア難民が欧州を目指す大きな理由として、子供に教育を受けさせたいという親の想いがある。この計画はシリア人が自国に留まることの助けになるだろう」と語っている。
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