ロシアのウクライナ侵攻が続く中、大規模軍事演習をすすめるNATO
地中海に浮かぶイタリアのサルデーニャ島では、5月5日から27日の間、北大西洋条約機構(NATO)が監修する大規模な軍事演習が行われた。NATO事務次長は29日、東欧へのNATO軍の展開はもはやロシアとの基本文書には制限されないと発言した。
仏メディア
『フランス・ソワール』 によると、フランス内外のマスコミが沈黙する中、イタリアの日刊紙「L’Unione Sarda」が、5月5日から27日までイタリアのサルデーニャ島でこれまでにない規模のNATOの軍事演習が行われたことを報じた。
今回の軍事演習は、7カ国から4千人から5千人が参加するという前例のないものであった。これまでのNATO軍とイタリア軍の合同演習は2千人から3千人を超えることはなく、このような規模は初めてだったという。...
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仏メディア
『フランス・ソワール』 によると、フランス内外のマスコミが沈黙する中、イタリアの日刊紙「L’Unione Sarda」が、5月5日から27日までイタリアのサルデーニャ島でこれまでにない規模のNATOの軍事演習が行われたことを報じた。
今回の軍事演習は、7カ国から4千人から5千人が参加するという前例のないものであった。これまでのNATO軍とイタリア軍の合同演習は2千人から3千人を超えることはなく、このような規模は初めてだったという。
なお、5月の1カ月間は、イタリア以外でも、東ヨーロッパ全域で軍事演習が行われた。ロシアと1340kmに渡る国境を持つフィンランドでは、英軍の部隊と合同演習が行われた。同じパターンで、エストニアとラトビアの国境では、1万5千人のNATO軍兵士が参加する「ハリネズミ演習」、戦乱のウクライナに接するポーランドでは、12カ国の兵士が参加した「防御作戦」、北マケドニアでは2500人の英国人を含む4500人が参加した「迅速対応演習」が実施された。
仏日刊紙『リベラシオン』 は、英国は、これらの作戦はロシアとの直接的な衝突の可能性を見越して行われているとしているが、NATOはより慎重な姿勢をとっていると伝えている。NATOのホームページによると、こうした演習は「同盟軍の即応性と相互運用性を向上させるために」以前から計画されていたものだと書かれている。3月から4月にかけてノルウェーで行われた演習の際にも、NATOは「ロシアのウクライナ侵攻とは関係ない」と述べている。ただし、4月22日のツイートで、NATOは「ロシアのウクライナ侵攻により、有能で戦闘力のある軍隊の必要性を再認識させた」と述べていた。
ベルギー日刊紙『ラ・リーブル』 は、5月17日から31日にかけて、米海軍の航空母艦USS Harry S. Trumanを主役としたNATOの共同演習「ネプチューンシールド2022」が東地中海で行われていると伝えている。参加国は、イギリス、スペイン、フランス、トルコ、ドイツ、ポーランド、ルーマニア、イタリアなど、大西洋同盟のほとんどのメンバーが含まれている。今回の演習は、ロシアのウクライナ侵攻の「かなり前から計画されていた」ものだが、「今回の警戒活動の強化の本質は、新たな文脈に置かれたものだ」と、米艦に出向している英海軍のパイロット、ローリー・チェイン氏は認めている。
こうした中、『BFMTV』 は、NATOのミルチャ・ジョアナ事務次長が29日、ロシアのウクライナ侵攻を受け、大西洋同盟はもはや、東欧に軍を展開しないというモスクワとの間で締結された基本文書に縛られないと述べたと伝えている。NATOとロシアが1997年に締結した基本文書は、中・東欧などへの「兵力の集中を防ぐ」ための措置が盛り込まれていた。しかし、ウクライナを攻撃し、NATOとの対話をすべて打ち切ったことで、ロシアは自ら「この基本文書を無効にした」と強調した。そして、NATOは現在、「東側で強固な態勢」を構築する上で「何の制約もない」と述べた。
なお、バルト諸国は現在、NATO軍の存在感をさらに高めることを望んでおり、小規模な戦闘部隊ではなく、旅団の駐屯を求めている。NATOは6月中旬に国防相会議を開いてこの問題について協議し、同月下旬に首脳会議で決定を承認する予定となっている。
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フランス世論調査、一般家庭の購買力低下に懸念高まる
大統領選まであと3ヶ月、現在のフランス人の一番の関心事は、新型コロナウイルス関連の規制から、家庭のお財布事情に移り始めている。仏誌
『レゼコー』 が行った世論調査によると、フランス人は、昨年秋からインフレの影響で購買力が低下していることに懸念を抱いていることが分かった。
この世論調査では、フランスが2つに分かれていることが判明した。経営者、中間管理職を中心とした59%が「生活費を賄えている」と回答した。一方、残りの40%は「節約しなければならない」と回答した。そのうちの30%は生活するための追加収入を得なければならず、10%は貯蓄を切り崩すか、借金をせざるを得ない状況にあるという。全体では、81%のフランス人が、貯蓄ができていないと回答した一方で、社会的立場によって状況は異なることが分かった。...
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この世論調査では、フランスが2つに分かれていることが判明した。経営者、中間管理職を中心とした59%が「生活費を賄えている」と回答した。一方、残りの40%は「節約しなければならない」と回答した。そのうちの30%は生活するための追加収入を得なければならず、10%は貯蓄を切り崩すか、借金をせざるを得ない状況にあるという。全体では、81%のフランス人が、貯蓄ができていないと回答した一方で、社会的立場によって状況は異なることが分かった。
「ここ数年で最も上昇している支出項目はどれか」という問いに対して、回答者の3分の2は「暖房費」と「食費」を選択した。56%は「移動費」を選択した。どれも日常生活に欠かせない項目である。また、4分の1の回答者は、住宅費の上昇を挙げている。
なお、「暖房費」は年配の人が多く選んでおり、「食費」は家計が苦しいと回答している人が多く選んでいる傾向が見られた。燃料価格の高騰により、移動費の上昇を指摘する人も、10月より+14ポイント上がった。そして、農村や小さな町の住民が、最も影響を受けている。
フランス人の目には、購買力の問題は、住居費や光熱費などの出費が増え続けていること、食費を含む日用品の出費が増えていること、賃金や年金の水準が不十分であることの3つの要因が重なった結果であると映っている。とりわけ労働者、農村の住民と左派支持者の間でそうした主張が強くなっている。
仏オンラインメディア『フランス・ソワール』 も、フランス人の購買力の低下に対して政府がとってきた対策は、一部の家計には十分ではなく、そうした家庭は支出を最小限に抑えることを余儀なくされている、と伝えている。
2022年1月時点で一回の食料品の買い物費用が平均1.76ユーロ(223円)上昇している。消費者団体によると、2019年9月から2021年9月まで、果物や野菜は「2年間で9%」増加したという。健康的な食生活を送るために、フランス全土で市民農園が盛んに行われるようになってきているという。
学生も生活費の高騰の影響を受けており、無料の食料配布サービスに頼る学生が多くなっているという。パリでは、1月10日に行われた無料の食糧配布サービスに、約350人の学生が食料品や衛生用品をもらうために駆けつけた。フランス西部にあるレンヌ第二公立大学が1月26日に行った食糧の配布には、500名ほどの学生が列に並んだ。2020年3月に食糧支援を始めたころには350人ほどが並んでいたという。
年金生活者もインフレの影響を受けている。ダニエルとジュヌヴィエーヴは、月収4500ユーロ(約60万円)、プール付きの150m²の別荘を所有し、月末には1000ユーロ(約13万円)の貯金ができている。しかし、「私たちは、旅行やレジャー、贈り物をあきらめ始めた」と証言している。二人の生活水準はけっして低いとは言えないものの、裕福層の間でも、購買力の問題をめぐり、懸念が生まれ始めていることが分かる。裕福で恵まれていると思われる世帯でも、一般的な生活費の上昇の影響を受け、節約の必要性を感じている。
『フランス・ソワール』 は、物価の上昇に直面していることで、購買力の問題は、大統領選挙の主要な争点となってくることは間違いない、と書いている。
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