かつて江戸時代、離縁したい妻に対して“三行半”という離縁状を出すことで離婚が認められていた。それと同様の慣習が、現代でもイスラム教徒の間で残されているが、この程インドの最高裁は、時代に逆行する慣習だとして違憲判決を出した。女性イスラム教徒はもとより、インド議会もこの判断を歓迎するが、インドイスラム教徒団体は司法が伝統的慣習に踏み込み過ぎと非難している。
8月22日付米
『ニューヨーク・デイリィ・ポスト』紙:「インドの裁判所、即時離婚制の慣習は違憲と判断」
インドの最高裁判所は8月22日、イスラム教徒の夫が妻に対して“タラーク(アラビア語で離婚の意)”と3回宣言すれば離婚が認められるイスラム教の慣習について、憲法違反との判断を下した。
ヒンズー教・キリスト教・イスラム教・シーク教・ゾロアスター教の5人から成る最高裁判事が、3対2の多数決による判決である。...
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8月22日付米
『ニューヨーク・デイリィ・ポスト』紙:「インドの裁判所、即時離婚制の慣習は違憲と判断」
インドの最高裁判所は8月22日、イスラム教徒の夫が妻に対して“タラーク(アラビア語で離婚の意)”と3回宣言すれば離婚が認められるイスラム教の慣習について、憲法違反との判断を下した。
ヒンズー教・キリスト教・イスラム教・シーク教・ゾロアスター教の5人から成る最高裁判事が、3対2の多数決による判決である。
なお、『BBCニュース』報道によると、この伝統的な慣習は、パキスタン・バングラデシュ・エジプト・スリランカ・アラブ首長国連邦・マレーシアでは既に禁止されている。
同日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『AFP通信』配信):「インドの司法、イスラム教徒の“即時離婚制度”について判断」
イスラム・スンニ派の法理学者は、“タラーク”と宣言することで離婚を認める慣習に反対と表明していたが、イスラム教聖職者の間では意見が分かれていた。
イスラム教徒が世界で最多となるインド・パキスタン・バングラデシュ・インドネシアでは、“タラーク”について制限する法体系となっている。
その他の国の慣習は以下のとおり;
・アフガニスタン:民法で、3度離婚と宣言すれば認められると規定。
・ヨルダン:裁判所での離婚調停が必要。
・エジプト:アブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領はこの慣習を止めるよう訴えているが、依然同国法では“タラーク”が活きている。
・シリア:依然規定があるため、スンニ派法理学の学校で審議中。
・インドネシア:“タラーク”を法律で禁止。離婚には法廷審理が必要。
・パキスタン:“タラーク”と宣言しても、離婚までには3ヵ月の猶予が必要。
・サウジアラビア:依然慣習として認められているが、サラフィー主義(現状改革の上で初期イスラムの時代(サラフ)を模範とし、それに回帰すべきであるとするイスラム教スンニ派の思想)を教える著名な学者らはこれに反対を唱えている。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「インド裁判所、伝統的な“即時離婚制度”を禁止する判決」
今回のインド最高裁の審理は、7人の女性イスラム教徒の控訴に対して行われた。最高裁は、“タラーク”を違憲とし、政府に対して6ヵ月以内に具体的立法化の手続きを取るよう求めた。
昨年、5万人以上の女性イスラム教徒からの嘆願書を受けて、インドの保守系政府は司法判断を求めており、今回の判断を歓迎している。
8月23日付インド『インディアン・エクスプレス』紙:「最高裁判断を歓迎するも、立法化については議会内で意見分かれる」
インド最高裁の判断について、インド議会は挙って歓迎した。しかし、具体的立法化措置については意見が分かれている。
前法務相で議会最高幹部のベーラッパ・モイリィ議員は、“タラーク”を禁止する立法化が必要と主張。一方、ランディープ・サージュワル通信相は、最高裁の判決そのもので十分とする。
なお、インド政府としては、すぐに立法化する必要はないとの意見である。
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