東京電力・福島第一原発・処理水・ことし秋以降・満杯の見込み(1月3日)
東京電力の福島第一原発では2011年の事故でメルトダウンが起き、溶け落ちた核燃料を冷却するため現在も水を入れ続けていて、冷却に伴って出る汚染水は1日あたり約140トン発生している。
汚染水は特殊な装置を使って放射性物質を取り除くが、除去が難しいトリチウムなど一部の放射性物質が残った処理水がたまり続けていて、敷地内の大型タンクで保管しているがことし秋以降に満杯になる見通しである。
このため国は処理水を基準以下に薄めたうえで来年春をメドに海に流す方針を決め、東京電力はこの方針に従って原発の1キロほど沖合から放出する計画で、原子力規制委員会が審査している。...
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東京電力の福島第一原発では2011年の事故でメルトダウンが起き、溶け落ちた核燃料を冷却するため現在も水を入れ続けていて、冷却に伴って出る汚染水は1日あたり約140トン発生している。
汚染水は特殊な装置を使って放射性物質を取り除くが、除去が難しいトリチウムなど一部の放射性物質が残った処理水がたまり続けていて、敷地内の大型タンクで保管しているがことし秋以降に満杯になる見通しである。
このため国は処理水を基準以下に薄めたうえで来年春をメドに海に流す方針を決め、東京電力はこの方針に従って原発の1キロほど沖合から放出する計画で、原子力規制委員会が審査している。
東京電力は計画が認められ地元や関係者の理解を得たうえで、ことし6月ごろから処理水を海水で薄める設備や海底トンネルなどの工事に着手したい考えで、来年4月中旬頃には工事を完了したいとしている。
一方で、処理水の放出は地元の漁連などを中心に風評被害を懸念する声が根強く、韓国や中国からも撤回が求められているなど計画どおり進むかは不透明で、東京電力は地元をはじめ国内外の関係者からどのように理解を得るかが引き続き課題となる。
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地球環境と産業構造のバランス(12月31日)
2021年に起こった「これからの地球環境と産業発展のバランス」の動きを纏めると1.脱炭素化、2.EV化、3.新エネルギーの促進に向かう3つの方向性がはっきりと打ち出されたということがいえる。英国・グラスゴーで開催されたCOP26では気候変動による悪影響を最小限に抑えるために、2030年までを「決定的な10年間」と位置づけ、産業革命前からの気温上昇幅を、1.5度に抑えるよう世界が努力するという合意がなされた。...
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2021年に起こった「これからの地球環境と産業発展のバランス」の動きを纏めると1.脱炭素化、2.EV化、3.新エネルギーの促進に向かう3つの方向性がはっきりと打ち出されたということがいえる。英国・グラスゴーで開催されたCOP26では気候変動による悪影響を最小限に抑えるために、2030年までを「決定的な10年間」と位置づけ、産業革命前からの気温上昇幅を、1.5度に抑えるよう世界が努力するという合意がなされた。世界各国がこの目標達成に向けて一斉にスタートを切った年とも言える。
1.脱炭素化
COP26議長国・英国は当初、「石炭火力の段階的廃止」を共同文書に盛り込む意向であったが、石炭火力発電に依存しているインドなどの反対で盛り込むことができなかった。一方、福島第一原発事故以降、化石燃料に依存している日本は火力発電にアンモニアを混ぜるなどしてCO2の排出量を減らすことで今後も火力発電を続けていく方針を示している。とは言っても、我が国にも脱炭素化に本格的に取り掛かる機運が生まれている。
2.EV化
世界ではEV化の流れに合わせ、充電ステーションなどインフラ整備の話題が日々報じられる中で日本は世界のEV化の流れに出遅れていると言われてきた。その理由は世界の自動車産業トップ企業であるトヨタ自動車が慎重な姿勢を見せていたためであった。日産、ホンダはEVシフトを鮮明にしていたが、トヨタ自動車においてはEVは脇役的な立ち位置に過ぎなかった。ところが、豊田章男社長は突然、会見を開き、「2030年にEV販売目標を350万台に増やす」と宣言し、HV、PHVなどと同等にEVにも力を入れていくとした。これは事実上の方針転換と言ってよいのではないか。今後は日本国内でもEV化の流れ、充電ステーションの整備、蓄電池の開発・製造が大幅に加速しそうである。
3.新エネルギーの促進
脱炭素の流れを受けて、炭素を排出しない太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーや小型原発などの新エネルギーが大きな注目を集めている。今、注目されているのが大規模な洋上風力発電である。三菱商事などが中心となって秋田県沖(65基)と千葉県沖(31基)の設置を進めるなどし、今後も様々な企業が風力発電に参入してくるものとみられる。発電量が天候に左右されず、火山国・日本の特性を生かすことができる地熱発電にも期待が集まっていて、北海道や岩手、秋田などで稼働が開始されている。原発再稼働や小型原発導入に関しては東日本大震災・福島原発事故を契機に国民に原発トラウマがあるため、国民を説得していく必要があり、手続きに時間が割かれる可能性もある。太陽光や風力などは国土や地形の問題、自然災害による被害の影響などがあり安定供給が難しいとの見立てもある。
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いまだに国産ワクチンができない現状(12月29日)
新型コロナウイルスの流行が来年の1月で3年目を迎えるが、日本は科学立国として多数のノーベル賞受賞者を輩出していながら、残念ながら国産ワクチンがないまま、他国のワクチンの言い値で高価なワクチンを入手する立場に甘んじている。
国産ワクチンの話がしばしばマスコミを賑わせるが、登場は2022年以降になるとも言われている。日本はなぜワクチン敗戦国になったのか。それには複数の要因が考えられる。
そもそも国の意識としては、ワクチンが安全保障物資という認識がなかった。...
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新型コロナウイルスの流行が来年の1月で3年目を迎えるが、日本は科学立国として多数のノーベル賞受賞者を輩出していながら、残念ながら国産ワクチンがないまま、他国のワクチンの言い値で高価なワクチンを入手する立場に甘んじている。
国産ワクチンの話がしばしばマスコミを賑わせるが、登場は2022年以降になるとも言われている。日本はなぜワクチン敗戦国になったのか。それには複数の要因が考えられる。
そもそも国の意識としては、ワクチンが安全保障物資という認識がなかった。その為、補助金をつけるなどの対策をして優秀なワクチン製造会社を育ててこなかった。旧日本陸軍に731部隊という細菌兵器を製造する部隊があったことも日本のワクチンに対するトラウマとなった。
企業にとってはいつまでパンデミックが続いていくのかを予測することが非常に難しく、設備投資や研究開発に資金を投入するには大きなリスクがあった。
海外のメガファーマと異なり、資金力に欠けるため巨額の費用を要する大規模な治験もできないことなどが大きなネックとなった。さらに国民と厚生労働省がワクチンの副作用に対する強い恐怖心を持っていることなどが追い打ちをかけた。
特に大きなボトルネックは既に出来上がっている仕組みを変えることが日本ではなかなか難しいということであった。
問題提起されても解決や改善することなく、一定の時間が経過すると、うやむやになってしまうことが繰り返されてきた。問題の所在はわかっているが、そこから先に話は進まない。
既得権益、利害関係が絡んでいるために、そこに手を入れない限りは状況をなかなか変えることができない。国産ワクチンができない背景にはこのような大きな構造的な問題が横たわっている。
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中国とアジアの歴史・そこから見える中国とアジアのこれから(11月27日)
2日、中国とASEANはオンライン会議を開催し、議長を務めた中国・習近平国家主席は「域内諸国を抑圧し覇権を追求することはない」などと表明し、ASEAN取り込みに躍起になっている。
それというのもASEANが中国が支援するミャンマー軍トップのミンアウンフライン総司令官を(欧米に忖度して)排除したり、G7がリバプールで行われる外相会談にASEANを招待するなど、欧米が政治、軍事両面でASEANに関与していく動きを察知したからと見られている。...
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2日、中国とASEANはオンライン会議を開催し、議長を務めた中国・習近平国家主席は「域内諸国を抑圧し覇権を追求することはない」などと表明し、ASEAN取り込みに躍起になっている。
それというのもASEANが中国が支援するミャンマー軍トップのミンアウンフライン総司令官を(欧米に忖度して)排除したり、G7がリバプールで行われる外相会談にASEANを招待するなど、欧米が政治、軍事両面でASEANに関与していく動きを察知したからと見られている。
ASEAN構成国はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアだが、現在のミャンマーは排除されている。
ASEANは2000年代に入って大きく中国寄りに舵を切った。中国にとって、ASEANは自国製品の売り込み先であると同時に、「一帯一路」構想における投資対象地域であり、安価な労働力の調達先であり、資源・エネルギーの確保先であり、物流ルートの確保先であり、絶対に手放すことのできない地域であったし、これからもそれは変わらない。
しかし、ここへ来てASEANは中国の専制国家的な動きに反応して中国とも一定の距離を保つようになっている。
一方、中国はASEANの取り込みを図る以外にも、例えばカンボジアにおける「ダラサコーロングベイプロジェクト」への援助に見られるように一つ一つの国と個別に関係を築いていきながら自陣営に取り込もうとしている。
中国が「一帯一路」に力を入れるのは欧米、特にかつて香港を割譲させられた英国に対する軋轢という要素も大きい。その英国が音頭をとるG7外相会議がASEANを取り込もうとしている動きは中国にとっては脅威であり、許せない動きでもある。
ASEANの中で中国寄りの国はインドネシア、カンボジア、タイ、ラオスで、中立の国はシンガポール、どちらかというとアンチ中国の国はフィリピン、ベトナムと言われているが、いずれの国も中国との間に、歴史的な関係があり、日本が考えるほど単純ではなく複雑である。今後の動きを予測するのであればそうした視点を取り入れつつ見ていく必要があると思われる。
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脱炭素で注目集める原発(11月13日)
化石燃料に代わる有力なベースロード電源として世界で原発に対する注目度が高まっている。
裏を返せば当初期待していた自然エネルギー、例えば風力発電についてデンマークで無風状態が続き、発電できないなどの欠点が見えてきた今、安定性があり現実的な選択肢として原発が再浮上してきたということである。
トルコ政府はロシアに2基の原発を発注する方向である。中国は新規原発6基に着手し、現在18基を建設中である。...
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化石燃料に代わる有力なベースロード電源として世界で原発に対する注目度が高まっている。
裏を返せば当初期待していた自然エネルギー、例えば風力発電についてデンマークで無風状態が続き、発電できないなどの欠点が見えてきた今、安定性があり現実的な選択肢として原発が再浮上してきたということである。
トルコ政府はロシアに2基の原発を発注する方向である。中国は新規原発6基に着手し、現在18基を建設中である。フランス・マクロン政権は加圧水型原子炉を最大6基、建設する計画を進めている。
さらに米国・英国・フランスは小型モジュール原発(SMR)の開発に乗り出している。SMRの特徴は小規模な為、例え事故を起こしても小規模で済むというものである。モジュールはレゴのように1基のみ設置することも、複数のモジュールを組み合わせて発電所の一部として導入することも可能である。
一方、日本は原発の導入では厳しい状況にある。未だに福島原発事故が大きなトラウマとして残っているからであり、特に原発の新規建設については住民の反対が大きく、かなりハードルが高い。
日本と同じく原発の技術力では定評の高い韓国も福島原発事故を受けて、脱原発に舵を切ったため、国内での原発の設置は難しい模様となっている。
現在のところ、日本は2050年カーボンニュートラルを実現するためには少なくとも間つなぎのエネルギー源として原発を使わざるを得ない。このことを原発トラウマの大きい国民にどう説得していくのかという手腕が政治家に問われている。
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