言葉の応酬:攻撃から対話へ、行動に結びつくのか(4月30日)
7か月前(2017年9月22日)心肝を寒からしめるニュースが世界を駆け巡った。金正恩委員長が「米国に対し、史上最高の強硬対抗措をとる」と述べ、それを受けて国連総会のためにニューヨークに滞在していた李容浩外相が「(金正恩委員長の意図はわからないが、としながらも)太平洋上での水爆実験」に言及したのだった。
この発言から一転して南北朝鮮首脳会談で金正恩委員長は「対話をしてみれば、自分が核を太平洋や米国にむけて撃つような人間ではないということが分かるだろう」と述べたという。...
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7か月前(2017年9月22日)心肝を寒からしめるニュースが世界を駆け巡った。金正恩委員長が「米国に対し、史上最高の強硬対抗措をとる」と述べ、それを受けて国連総会のためにニューヨークに滞在していた李容浩外相が「(金正恩委員長の意図はわからないが、としながらも)太平洋上での水爆実験」に言及したのだった。
この発言から一転して南北朝鮮首脳会談で金正恩委員長は「対話をしてみれば、自分が核を太平洋や米国にむけて撃つような人間ではないということが分かるだろう」と述べたという。7か月ですっかり心穏やかな人物になったようだ。
もっとも最初の発言はトランプ大統領が国連で金正恩委員長をしてロケットマンとよび、北朝鮮を「完全に破壊する」という発言をしたことに対する発言であった。また「太平洋上での水爆実験」については、あえて李容浩外相に語らせたということは、自分が言ってしまえば、実行しなくてはならないので、具体的な発言を自らはせずに、含みをもたせたとも考えられる。
一方のトランプ大統領もかつての「つぶやき」からは一転、3月に訪米した韓国特使団に対し、米朝首脳会談を行うことを即答した。4月初めにはポンぺオ国務長官(訪問時点ではCIA
長官であった)が訪朝し事前協議を行ったことも米側から発表された。南北首脳会談後に行われたミシガン州での集会で、観衆から「ノーベル賞」とのコールが起こると、トランプ大統領の満更ではない表情がニュース映像にながされていた。
2017年末までは米朝の非難合戦はエスカレートしていた。非難や牽制は言葉の応酬にとどまらず、米国は第7艦隊を北朝鮮周辺海域に展開、北朝鮮も大陸間弾道弾になるとみられるミサイルをロフテッド軌道ながら打ち上げていた。
両国の言葉の応酬はデエスカレート(deescalate)の様相になった。これに伴い両国の行動もデエスカレートするという希望的観測をしたいが、そのためには米朝の事前協議がどこまでうまくいっているのか、双方の言う「非核化」の意味が同じ内容を指しているのかが、今後の焦点になる。
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4月27日の南北朝鮮の首脳会談の後、安倍総理と文在寅大統領との電話会談や韓国大統領府の発表により幾つかの事項が明らかになった。29日の日韓首脳による電話会談で明らかになったのは、南北首脳会談で、拉致問題が提起されていたこと、金正恩委員長が日朝首脳会談を行う用意があるとの意思表明をしたということであった。また韓国大統領府は金正恩委員長が「豊渓里の核実験場を5月中に閉鎖し、その様子を専門家やメディアに公開しても良い」と語ったということである。...
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4月27日の南北朝鮮の首脳会談の後、安倍総理と文在寅大統領との電話会談や韓国大統領府の発表により幾つかの事項が明らかになった。29日の日韓首脳による電話会談で明らかになったのは、南北首脳会談で、拉致問題が提起されていたこと、金正恩委員長が日朝首脳会談を行う用意があるとの意思表明をしたということであった。また韓国大統領府は金正恩委員長が「豊渓里の核実験場を5月中に閉鎖し、その様子を専門家やメディアに公開しても良い」と語ったということである。また28日には北朝鮮の朝鮮中央通信が南北首脳会談について伝えたほか、労働党の機関紙である「労働新聞」も1~4面を使って写真つきで、報道したことも明らかになった。
拉致問題について金正恩委員長がどのような反応を示したのか、などについては安倍総理の口からは明らかになっていない。ただし南北首脳会談ではあまり多くのことは語られなかったのであろう。南北朝鮮の首脳同士の会談では通訳なしで話ができるとはいえ、朝鮮半島の戦争状態の終結、非核化、南北の協力体制についてなどの話題に多くの時間が割かれたことは容易に想像できる。
一方豊渓里の核実験場の閉鎖についてはどのように考えればいいか。すでに「核が完成している」ので、暫時実験をしなくてもよい、ということであるかもしれない。核施設関連の閉鎖ということであると、2005年から08年にかけての一連の出来事を思い出さずにはいられない。2005年9月に米財務省がマカオのバンコ・デルタ・アジア(BDA)を(北朝鮮の資金の)マネー・ロンダリングをしている疑惑があると指定。BDAの取り付け騒ぎも起こったことから、マカオ当局が北朝鮮関連口座を凍結するに至った。これに対し、北朝鮮は反発、6か国協議での共同声明の履行を放棄、2006年10月には1回目の核実験を行うに至った。その後紆余曲折を経て、凍結資金の北朝鮮への返還がなされた後、エネルギー援助を条件に、北朝鮮は寧辺の黒鉛減速炉の無能力化・封印を約束、2008年6月には同軽水炉の冷却炉を爆破し、10月には米国は北朝鮮を「テロ支援国家」のリストから外したのであった。ただし2009年には寧辺には軽水炉が建設されている。
「豊渓里の核実験場の閉鎖」がどのように行われるのか。落盤事故などもあり、すでに使用できなくなっているともいわれていて、新しい実験場を建設しているともいわれている(金正恩委員長は2つの坑道があることに言及)。寧辺の愚を犯さないよう、再度使用できない形式での閉鎖になるように、又新実験場の建設を阻止するべく、監視を強化しなくてはなるまい。
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歴史的な南北首脳会談の翌日(2018年4月28日)の日本の新聞各紙は1面トップで首脳会談を報じていた。それに対し、中国の共産党機関紙「人民日報」では習近平国家主席とインドのモディ首相の会談がトップ記事であり、南北首脳会談は3面右下での報道であった。
習近平一強体制が出来上がって以降、毎日「人民日報」の一面には習近平の写真が掲載されている。視覚効果による刷り込みを狙っているのだろうか。
しかしながら「人民日報」系の「環球時報」(ネット版)では27日の18時43分(日本時間19時43分)に南北首脳会談に関する社説を早速リリースしている。...
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歴史的な南北首脳会談の翌日(2018年4月28日)の日本の新聞各紙は1面トップで首脳会談を報じていた。それに対し、中国の共産党機関紙「人民日報」では習近平国家主席とインドのモディ首相の会談がトップ記事であり、南北首脳会談は3面右下での報道であった。
習近平一強体制が出来上がって以降、毎日「人民日報」の一面には習近平の写真が掲載されている。視覚効果による刷り込みを狙っているのだろうか。
しかしながら「人民日報」系の「環球時報」(ネット版)では27日の18時43分(日本時間19時43分)に南北首脳会談に関する社説を早速リリースしている。日本の報道ぶりとの違いはまず「朝鮮半島の戦争状態を本年中に終息させ、朝鮮半島の平和構築メカニズムができあがる」ことを非核化より前に紹介していることである。2番目に非核化にも触れているが、これに関しては「(北)朝鮮が金正恩時代になってはじめて公式に『核放棄』を述べている。」として、今回の会談は予想されていた成果の上限に達している(予想されたなかで一番良い結果)と評価している。
ただし半島情勢はまだまだ不安定で先の見えない状態にあるのは、もう一人の主役であるトランプ大統領がまだ登場していないからだとし、同大統領の「良い事だが、時を経て答えがでるであろう」「(米国は現在起こっていることに関し)習近平主席に感謝している」というツイッターの文章を紹介している。中国では一般にはツイッターは受発信できないにも関わらず、わざわざ紹介しているのである。
さらに南北首脳会談は、米朝会談の予行演習であるとさえ、述べているし、戦争状態の終結にしても非核化にしても「板門店宣言」は「願望」に過ぎず、確実なものとはなっていない。なぜなら、最終的にはトランプ大統領と金正恩委員長との会談で決まるのであり、韓国はパスを出すだけで、韓国の駆け引きの力は有限だからである、としている。
中国は、南北首脳会談、あるいは北東アジアの安定における平和構築のなかで韓国の役割を過小評価したいのではないかと思われる。韓国は朝鮮戦争の休戦協定の調印者にはなっていないことも一因であるが、それ以上に中国こそが、金正恩委員長をして、平和攻勢に変換させた立役者であり、北朝鮮の後ろ盾になっていて、米国にも影響力を奮っている影の主役である、と言わんとしているのではないか。米朝首脳会談では、中国がその場には存在しないものの、影の主役の座を狙っているものと思われる。
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北朝鮮国営メディアは「金正恩朝鮮労働党委員長が南北首脳会談に出席するため、きょう未明に平壌を出発した」と伝え、「歴史的な会談結果を発表する」と会談の成功への意欲を強調した。
午前9時半にパンムンジョムの軍事境界線を北朝鮮の最高指導者として歩いて越え、韓国・ムンジェイン大統領の出迎えを受ける予定だ。
午前10時半から、韓国側施設「平和の家」で南北首脳会談を予定である。
会談では米朝首脳会談を見据えて、非核化と平和定着をめぐり集中的な議論が交わされる見通しで、北朝鮮はみずからは核保有国とする立場を崩していないな中、非核化の意思を共同宣言などで明文化し、史上初の米朝首脳会談につなげられるかどうか会談の行方が注目される。...
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北朝鮮国営メディアは「金正恩朝鮮労働党委員長が南北首脳会談に出席するため、きょう未明に平壌を出発した」と伝え、「歴史的な会談結果を発表する」と会談の成功への意欲を強調した。
午前9時半にパンムンジョムの軍事境界線を北朝鮮の最高指導者として歩いて越え、韓国・ムンジェイン大統領の出迎えを受ける予定だ。
午前10時半から、韓国側施設「平和の家」で南北首脳会談を予定である。
会談では米朝首脳会談を見据えて、非核化と平和定着をめぐり集中的な議論が交わされる見通しで、北朝鮮はみずからは核保有国とする立場を崩していないな中、非核化の意思を共同宣言などで明文化し、史上初の米朝首脳会談につなげられるかどうか会談の行方が注目される。
米国は北朝鮮・金正恩党委員長が非核化の意思を示し、文書に署名するという形に示すことであり、金委員長は核実験・ミサイル発射実験中止を表明しただけで、米国が求める凍結は示していない。
トランプ大統領は非核化とは北朝鮮が核兵器を完全に放棄することを求めている。
米国では北朝鮮を極秘訪問したポンペイオの国務長官就任が正式に決定する。
大統領の信頼が厚いポンペイオを中心に首脳会談の調整が進むとしている。
トランプ大統領は北朝鮮の非核化の実現に向け目に見える成果を出したい考えである。
またトランプ大統領は拉致問題に取り組む考えを示している。
トランプ大統領は会談に強い意欲を見せる一方で、成果に期待できなければ実施を見送る可能性にも言及し北朝鮮側に揺さぶりをかけながら首脳会談に向けた駆け引きを行っていくとみられる。
米朝首脳会談につなげるための南北首脳会談のポイントは非核化と朝鮮戦争の終結である。
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あす10年半ぶりに行われる南北首脳会談だが、既に韓国側のプレスセンターがソウル近郊にオープンした。事前登録を済ませた報道関係者は約3000人という。
ローマカトリック教会・フランシスコ法王は大勢の信者の前で行った演説で朝鮮半島や世界の平和を確かなものにする良い機会になると述べた。
今回の会談は北朝鮮の非核化へ米朝首脳会談に向けた土台づくりができるのかどうかが大きな焦点となる。
文在寅大統領は金正恩労働党委員長の非核化の意思を直接確認する。...
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あす10年半ぶりに行われる南北首脳会談だが、既に韓国側のプレスセンターがソウル近郊にオープンした。事前登録を済ませた報道関係者は約3000人という。
ローマカトリック教会・フランシスコ法王は大勢の信者の前で行った演説で朝鮮半島や世界の平和を確かなものにする良い機会になると述べた。
今回の会談は北朝鮮の非核化へ米朝首脳会談に向けた土台づくりができるのかどうかが大きな焦点となる。
文在寅大統領は金正恩労働党委員長の非核化の意思を直接確認する。
その具体的なプロセスについて、米朝間で話し合える環境を整えたい考えである。
南北首脳会談のあと、文大統領はトランプ大統領に電話で結果を伝え、来月中旬に訪米して、米韓首脳会談を行う方向で調整を進める。
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