中国の人権問題は、習近平(シー・チンピン)国家主席体制になってから、益々厳しいものになっている。チベットやウィグル自治区での少数民族弾圧から、体制批判を叫ぶ弁護士等の拘束まで、国際社会が懸念を抱くところ大である。そして直近でも、習指導部が重要施策の一つと掲げる“一帯一路経済圏構想(OBOR)”に対して批判をするなどもっての外とばかりに、ラジオ・インタビュー中の大学教授が公安によって拉致され、連絡が取れない状況になっている。
8月3日付米
『AP通信』:「中国の大学教授、ラジオ・インタビュー中に拉致され行方不明」
中国政府を批判することで知られている済南市(チーナン、山東省)の老大学教授が、8月1日に米国営ラジオ『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』の電話インタビュー中、自宅に押し入ってきた公安に連行された。
山東大の孫文広(ソン・ウェンカン、84歳)元教授で、電話インタビューが切断される直前、“自分には言論の自由がある”と叫んでいた。...
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8月3日付米
『AP通信』:「中国の大学教授、ラジオ・インタビュー中に拉致され行方不明」
中国政府を批判することで知られている済南市(チーナン、山東省)の老大学教授が、8月1日に米国営ラジオ『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』の電話インタビュー中、自宅に押し入ってきた公安に連行された。
山東大の孫文広(ソン・ウェンカン、84歳)元教授で、電話インタビューが切断される直前、“自分には言論の自由がある”と叫んでいた。
『VOA』によると、8月3日もコンタクトしたが同氏と連絡が付かないという。事情通の話では、済南市内の中国軍運営のホテルに軟禁されているという。
同氏は以前から中国指導部を批判していて、特に最近では、多くの国民が貧困に喘いでいるのに、OBOR政策推進のために1兆ドル(約110兆円)余りも他国にバラ撒いていると非難していた。
なお同氏は、2010年にノーベル平和賞を受賞し、昨年獄中死した劉曉波氏(リウ・シャオボー、61歳没)とともに、「08憲章(注後記)」を作成・発表している。
同日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『AFP通信』配信):「中国の批評家、メディア・インタビューの生放送中に連行」
孫教授は先月、習国家主席のアフリカ訪問に合せて、アフリカ諸国に対するバラ撒き外交を批判する公開書簡を発表していた。
同氏は『VOA』のインタビューの中でも、貧困層の救済に使わず、アフリカに金をバラ撒いて浪費することは、中国のために全く有益ではないと訴えていた。
『AFP通信』も同氏の携帯電話等にコンタクトしているが、全く繋がらない状況である。
また、済南市公安局や山東大の広報部に連絡を入れているが、一切応答しない。
(注)「08憲章」:2008年12月9日に、中国の作家劉暁波ら303名が連名でインターネット上で発表した宣言文。中国の政治・社会体制について、中国共産党の一党独裁の終結、三権分立、民主化推進、人権状況の改善などを求めている。
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