中国人民銀行(人民銀行)は10月23日、鈍化傾向にある景気浮揚策として今年6度目の利下げをおこなうとともに、市中銀行の預金準備率を引き下げた。また、預金金利の上限も撤廃し、金融の自由化を推進する。各国金融市場はこの決定を好感しているが、早くも更なる利下げを予想している。
10月23日付
『CBSニュース』は、AP電として、人民銀行が今年6回目の利下げをおこなうとともに、市中銀行の預金準備率を引き下げ、銀行貸し出し枠を緩和したと報じている。10月24日から、1年ローンの基準金利は現行4.6%が0.25%下がり4.35%になる。また、銀行預金の基準金利も同様に0.25%引き下げられ1.5%となる。更に、人民銀行は市中銀行の預金準備率を0.5%引き下げて17.5%とし、一部銀行には0.5%の追加引き下げを認めた。
直近四半期の経済状況は、生産活動は弱含んだものの小売販売は好調であり、消費主導型経済への移行努力が反映されつつある。経済調査機関のキャピタル・エコノミック社のアナリストは「中国経済が急速に減退するという恐れは無くなりつつある。今回の政策決定を、中国政府が経済状況を危惧していると見るべきではないし、他国と違って中国は未だ金融緩和をおこなう余地を残している」と述べている。
10月23日付
『ブルームバーグニュース』は、人民銀行による基準金利の引き下げが、各国の金融市場で好感されていると報じている。人民銀行は利下げ発表後に配布したQA文書で、物価動向は全般的に低めであり、金利引き下げの余地があると説明している。同ニュースは、物価インフレは政府目標の半分であることに加え、生産者価格の低迷はまだ続いているため、更なる金融緩和が予想されると報じる。
また、人民銀行は、預金金利の上限撤廃をおこなった。この規制撤廃は金融での市場原理導入を促進するものであり、銀行業務での競争が促されるとともに新たな成長エンジンとなることが期待される。
人民銀行は、国内で流通する通貨量を支払準備率によって調整している。今年は、成長が鈍化し資本が国外へ流出しているため、支払い準備率を引き下げている。中国指導部は、習近平体制としては初めてとなる次期5ヵ年計画を策定するための会議を開催する。そこでは、通貨規制撤廃、海外ノンバンク企業参入障壁の緩和、国内技術開発振興、人口増加対策などが検討されると予想されている。
10月24日付英国
『ザ・テレグラフ』は、人民銀行が預金金利の上限撤廃という歴史的な決定をおこなったと報じている。金融専門家は、銀行貸出し金利は既に2013年から自由化されており、預金金利の上限撤廃は「中国での金利自由化の最終段階である」と位置付けている。ノルディア銀行のアナリストは、この決定は中国が「金融規制緩和を進める用意ができている」ことを内外に示し、中国通貨の元が、国際通貨基金(IMF)の特別通過引出権通貨バスケット(SDR)に仲間入りする可能性を高めるものであると評している。一方で、ノルディア銀行は、中国経済は短期的には底堅いが、人民銀行の景気刺激策は一時的なものであるとの見方を示す。中国の主要製造セクターでの設備過剰、国営企業の過剰借入金などの構造的問題は、金融緩和によっては解決できないと指摘している。
閉じる
7月21日付
『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、東芝の田中久雄社長を含む8名の取締役が、7年間にわたり12億ドル以上の利益水増しをした不適切会計の責任を取り、辞任したと報じた。佐々木前社長は、安倍政権の経済政策諮問委員も辞任している。この問題を調査した元検事長が委員長を務める第三者委員会は、直近の3名の社長がこの利益水増しに積極的な役割を果たしたと報告している。それによると、パソコンから原子力発電に至る各事業について、現実的には達成不可能な目標を示し、強く圧力をかけた。また、四半期決算や事業年度終了の直前にそのような目標を指示したこともあり、各事業部幹部が利益操作をするよう仕向けた。消息筋によると、証券取引等監視委員会は、数ヶ月中に不適切会計について東芝を処罰する方針である。東芝は、「財務状態を強化するため、取引銀行に5000億円の融資枠を申し込み、非中核事業の売却を加速させる予定である」と同紙は報じている。
『CBS』テレビは、7月21日のニュースで、東芝の不適切会計への組織的関与問題で、首脳8名が辞任したことを伝えるとともに、「同社は、エレクトロニクス事業での苦戦に加え、原子力事業についても2011年の福島原発事故が原発の安全性に対する国民の不安を呼び、新規の原子力発電所の建設が困難となっている」と報じた。日本では企業への独立した監視の仕組みを強化してきたが、それにも拘らず、今回の不祥事は日本がいまだに企業統治の改善に苦しんでいることを端的に示している。英国ワーウィック・ビジネススクールのロイゾス・ヘラクレス教授は、「日本企業ではグローバルスタンダードと較べ、未だ、透明性や取締役会の独立性が欠けている」と述べている。そして、「投資家は、東芝の不祥事をオリンパス事件と重ね合わせ、日本では企業行動の中に会計操作を繰り返すパターンがあるのではないかと見るだろう。監督官庁は、市場に対し、日本企業をしっかり監視していることを明確に示す必要がある」と指摘する。同ニュースは、「日本社会は、体制順応型社会であり、チームワークを奨励する余り、内部通報者を嫌い、西欧と較べ内部通報者の法的な保護が立ち遅れている」と報じる。その一方、西欧での会計不祥事と違い、日本では個人が私腹を肥やすためではなく、会社の「面目を保つ」ために一致協力するところに共通点があるとしている。
7月22日付
『ブルームバーグニュース』は、「東芝が利益を水増しした期間に、約1兆円(80億ドル)の株式及び社債を発行しており、今後、当局による課徴金や投資家による訴訟の可能性がある」と報じた。東芝は、2009年5月に3330億円の公募増資をおこない、2009年5月から2013年12月までの間に6400億円の社債を発行している。これについて、早稲田大学法科大学院の黒沼教授は、「虚偽報告に基づく資金集めは詐欺行為に当たる。東芝は金融証券取引法に違反している」と述べる。日本の法律では、証券取引等監視委員会は金融庁に対し、重大な虚偽報告をして金融証券を販売した企業に罰金を課すことを勧告できる。罰金は、株式募集の場合で発行総額の4.5%、社債では2.25%となっている。従って、東芝は300億円に及ぶ罰金のリスクを抱えていることになる。
閉じる