フィリピン新大統領が中国大使と会談
フィリピンの新大統領に決まったロドリゴ・ドゥテルテ氏(南部ミンダナオ島ダバオ市長)は中国間の南シナ海をめぐる問題の解決に意欲を示していたが、16日、ダバオ市内で早速駐フィリピン趙鑑華中国大使と会談。会談は経済問題が中心だったようで、領土問題に話は及んだかとの質問に大使は笑顔でコメントを避けたという。6年に及ぶアキノ政権下、戦力的な重要な海上拠点である南シナ海問題関係が急激に悪化。国内の反発は予測されるがフィリピンの対中強固路線が変更されるとの懸念もある。中比関係は強固なものだが、「周知の理由により、両国関係は深刻に損なわれた」としていた中国外交部も新大統領を祝福し、新政権における2国関係の発展を期待している。」
5月16日付比
『マニラビュレティン』は「中比の関係強化」の見出しで以下のように報道している。
・月曜午後、次期大統領が在マニラ中国大使と会談、中国との長年に及ぶ領土問題での緊張が高まる中、関係改善と強化で一致、「親善的で率直な意見交換」を行った。
・中国大使館は声明で、趙鑑華大使は「両国はよい隣人、パートナーであり親戚だ。中比の相違点を詰め、これまでの親善協力関係をより一層強めたい」と述べているとした。...
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5月16日付比
『マニラビュレティン』は「中比の関係強化」の見出しで以下のように報道している。
・月曜午後、次期大統領が在マニラ中国大使と会談、中国との長年に及ぶ領土問題での緊張が高まる中、関係改善と強化で一致、「親善的で率直な意見交換」を行った。
・中国大使館は声明で、趙鑑華大使は「両国はよい隣人、パートナーであり親戚だ。中比の相違点を詰め、これまでの親善協力関係をより一層強めたい」と述べているとした。
・中国は山積する課題、とりわけ資源豊富な南シナ海の領土問題等の解決のため、同大統領の就任を期待していた。
5月17日付比
『The Standard』は、「ドゥテルテ氏、ダバオで中国大使と会談」との見出しで以下のように報道している。
・両国関係が悪化していた2014年に任命された大使は、会談で西フィリピン海(フィリピン諸島西部の南シナ海)問題に話が及んだかとの質問に答えなかったが、中比は親戚だと関係改善を強調。
・ドゥテルテ氏は日曜報道陣に述べたのと同様に、領土問題について中国との直接対話の用意があると再度述べた。「両国間は良好だったが、私はさらに親交を深めたい」、とした。
・来月末大統領就任予定のドゥテルテ氏は、他の交渉が決裂すれば中国側との直接会合に臨むと強調した。
・上院議員(元海軍中尉)のアントニオ・トリレイン・IV氏は、スカボロー礁を中国に「売る」ことを批判。大統領がスカボロー礁の領有権放棄を認めるなら弾劾もありうるとした。同氏は高官らの助言を無視し2012年中国との会談に臨もうとしたが、沈黙を通した。両国間の緊張を解くのが役目だとする。
・同氏は、「領有権を放棄したとするのは大統領として危険なこと。大統領は中国に領有権を譲ろうとしているように見え、ついにはアキノ元大統領と私の責任を追及するのであろう。来月の就任後(漁船もある)スカボロー礁の所有権放棄を宣言すれば、弾劾へつながる事になる。」と述べている。
・大統領の発言はメディアで報道されたが、防衛当局者からの情報はない。
5月17日付比
『サンスター』は、「海外が投資先として注目」との見出しで以下のように報道している。
・ドゥテルテ新大統領の報道官や暫定政府関係者によると、新政権は海外企業から注目されており、企業名は明かせないが日本、中国、EU諸国、アメリカ、マレーシア等のASEAN諸国からおフォーがある。株式市場や通貨市場の反応を注視しており、新政権の政策が待たれる、としている。
5月17日付中国
『China Daily Asia』は、「フィリピンの新大統領、中国との関係改善を誓う」との見出しで以下のように報道している。
・フィリピン新大統領による南シナ海問題で2国間会談を持ちたいとの意向を受け、趙鑑華駐在大使と会談。大使は会談後、両国の協力関係を確認したとした。
5月17日付中国
『中国新聞社』は、「中国大使がドゥテルテ氏との初会談使節となる」との見出しで以下のように報道している。
・対中国政策に変化の兆し。ドゥテルテ氏が日曜「AFP通信」で中国との会談を要請、趙鑑華大使が最初の会談相手なった。会談では、ドゥテルテ氏が国家主権よりむしろ経済関係を強化したいように見えたとする。
・アキノ政権下、比の経済は発展し中間層は豊かになった。ドゥテルテ氏の支持率を見ると比国民は経済の更なる発展を望んでいるため、経済を優先させる必要があるのだろうとする。
・過激発言のドゥテルテ氏に領土問題でソフトな対応は望めない可能性があるが、柔軟性は期待できる。新政権は南シナ海政策を転換させるとの期待もあるが、政府内の承認に難航することも予測される。
・比副大統領は自由党となる可能性が高く、領土問題政策に変更があればこれに反対する恐れもある。
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米・英・中国メディア;若人よ、中国人民解放軍に来たれ!
南シナ海などの海洋活動においても米軍とつばぜり合いをしている中国人民解放軍(PLA)は、習近平(シー・チンピン)指導部の下、統率力の強化、最新鋭装備の開発に注力している。その一環でPLAが、活きの良い若人をリクルートすべく、ポップなミュージックビデオを作成・公開していると話題になっている。
5月4日付米
『ワシントン・ポスト』紙の報道記事「中国軍、より多くの若人採用のため、銃器やヒップホップミュージックを駆使」:
「・PLAは、より多くの若人が興味を引くよう、先週から中国新聞社ウェブサイト上に奇抜な勧誘ビデオを公開。
・内容は、ミサイル攻撃、射撃、戦闘機による攻撃、捕虜と思しき拉致被害者の救出等の画面がラップ調の音楽とともに放映。
・中国国営メディアは、PLA初のヒップホップビデオだと誇らしげに宣伝。...
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5月4日付米
『ワシントン・ポスト』紙の報道記事「中国軍、より多くの若人採用のため、銃器やヒップホップミュージックを駆使」:
「・PLAは、より多くの若人が興味を引くよう、先週から中国新聞社ウェブサイト上に奇抜な勧誘ビデオを公開。
・内容は、ミサイル攻撃、射撃、戦闘機による攻撃、捕虜と思しき拉致被害者の救出等の画面がラップ調の音楽とともに放映。
・中国国営メディアは、PLA初のヒップホップビデオだと誇らしげに宣伝。
・しかし、近隣諸国にとっては、若人に対して戦争参加、敵の殲滅といった好戦を奨励する内容だとして警戒感。
・なおPLAのリクルート用ミュージックビデオは初めてではなく、2014年には当時流行の“リトルアップル”という安っぽいダンス・ミュージックを流し、それに合わせてPLAの兵隊が一斉に踊るという勧誘ビデオを公開。
・長い間の一人っ子政策や、経済発展に伴い、若い世代がPLAに興味を抱かなくなったことがかかるビデオ作成の背景。
・中国国防部の呉(ウー)報道官は、同ビデオ紹介の記者会見で、若人も中国の安全を守る責任があると言明。」
同日付米
『ハフィントン・ポスト』オンラインニュースの報道記事「PLA、若人リクルート用のおしゃれなミュージックビデオを公開」:
「・PLAが公式ウェブサイトに4月28日に公開したのは、“戦いの宣告”と題した、若人向けPRビデオ。
・ビデオには、空母“遼寧(リャオニン)”や瀋陽(シェンヤン)J-11戦闘機などPLAの最新鋭兵器を映し出し、若人に領土を守る大切さ等をアピール。
・ビデオ公開後、15万3千人が閲覧したというが、中国最大のソーシャルメディア“微博(ウェイボ―)”ユーザーは賛否両論。
・なお中国は2週間前にも、政府関係の若い女性職員向けに漫画のポスターで、ハンサムな外国人男性はだいたいがスパイなので近付かないよう啓蒙活動。」
同日付英
『ザ・ガーディアン』紙の報道記事「PLA、若人向けに“殺せ、殺せ、殺せ”と叫ぶリクルート用ビデオ公開」:
「・3分間のビデオでは、若人受けを狙ってかラップ調のロックミュージックに乗せて、空母、戦車、戦闘機などの実射を公開。
・また、“殺せ、殺せ、殺せとの命令が下されるのを待つのみ”、とのビデオゲームで使われたような過激な歌詞を用いて、“戦争はすぐにも始まる”とか“(戦いの)準備はできているか?”とアピール。
・PLAは、従来の本土防衛や台湾侵攻作戦の他、目下は東シナ海域の警戒飛行や、アデン湾(注1後記)での海賊取り締まり、更には南シナ海での海洋活動に注力。」
同日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「PLA、初のヒップホップ調のリクルート用ビデオを公開」:
「・ヒップホップ調のビデオは、マイケル・ベイ監督(注2後記)映画の予告編かと思われる出来映え。
・世界最大230万人の兵力(昨年9月、習主席は30万人の削減発表)を誇るPLAだが、無関心な若者が増えたこともあり、若人の求人は焦眉の急。」
5月5日付中国
『チャイナ・デイリィ』(
『新華社通信』記事引用)の報道記事「音楽、ビデオゲームで軍人募集」:
「・中国政府中央常務委員会傘下の共産党宣伝部及び中央軍事委員会傘下の政治・国防活動部は連名で5月5日、このミュージックビデオによる軍人募集キャンペーンを、高学歴者や大学生向けに9月まで継続と発表。
・媒体は、ウェブサイト、テレビなどでの放映の他、バス・地下鉄などの公共交通機関にも掲示。
・メディアにも軍人募集への協力要請がされていて、また、多くの軍関係部署に兵舎等の開放日を設けて若人を呼び寄せ、愛国心の大切さや軍隊への理解度向上が求められている。」
PLAの軍人募集ビデオを観て、1969年末発売後、放送禁止歌に指定されてしまった、フォークソング“自衛隊に入ろう”を思い出した。現在、同曲は放送禁止歌となっていないが、かの国では、軍部が率先してヒップホップ調のミュージックビデオを監修して若者受けを狙うとは、お国柄が違うのか、それとも時代が変わったのか、困惑するばかりである。
(注1)アデン湾:インド洋の北西側にあり、北はアラビア半島、南はアフリカ大陸のソマリア半島に挟まれた東西に細長い湾。湾の西側には紅海が広がっていて、イエメン、ジブチ、ソマリアと接している。
(注2)マイケル・ベイ監督:ロス・アンゼルス出身の映画監督・プロデューサー。バッドボーイズ、アルマゲドン、トランスフォーマーなどアクション映画のヒット作を手掛ける。
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