米たばこ大手フィリップ・モリスは、ロシア国内の新規投資中止や事業撤退で業績不振となっているが、EUの制裁対象となったオリガルヒを介して、ロシアの武器製造との関係があったという。
4月21日付
『ロイター通信』:「武器供給制裁リスト対象人物にフィリップ・モリス社との繋がり」:
米国のたばこ大手フィリップ・モリスと長年の関係があるロシア軍向け武器工場の主要株主が、ロシアの侵攻を支援しているとして、欧州で制裁対象となっている。
55歳のイゴール・ケサエフ氏は、昨年フォーブス誌の長者番付で35番目に入る富豪。今月8日にはEUが、13日には英国が、制裁リストに追加している。EUは声明で、「ケサエフ氏のたばこや武器生産への関与は、ロシアのウクライナ侵攻において資金面で重要な位置を占めている」としている。
ケサエフ氏はモスクワの北東165マイルにあり、ロシア軍、中東、北アフリカ、中南米向けの機関銃や対戦車・航空爆撃機を製造するVAデグチャレフ工場の株49%を保有。この工場は、カラシニコフ式機関銃PKMなどの製造で知られている。
同氏の武器ビジネス関与は2012年からとなる。今月公表された昨年の企業報告によると、ケサエフ氏が工場の49%の株主とされているが、同氏のスポークスマンは「現在はデグチャレフの株主ではなく、経営にも関っていない」としている。
最近まで彼は、ロシアのたばこ販売大手TCメガポリスの会長職でもあった。また、TCメガポリスのオランダ持株会者の役員も兼任しており、ここは米「フィリップ・モリス」が23%の株を所有する企業だったという。どちらの役職も今月11日付で退任しているというが、EUによると、「メガポリス」を傘下に持つ「マーキュリーグループ」の会長としての影響力は変わっていないという。
フィリップ・モリスと彼との関係は1990年代からで、ウクライナ侵攻で使われるロシアの武器のイメージは評判のリスクだ。西側諸国が、ロシアやロシア経済を支配するオリガルヒとの関係断絶に奔走する中、軍への武器供給との歴史的な関りがあればなおのことである。
戦闘地でのロシア軍機に、デグチャレフ工場で製造された武器が使用されているかは、ウクライナ側からの証拠により浮かび上がってきた。今週、戦闘地で回収されたロシアの武器をウクライナの戦闘機へ再利用するため、キーウの自動車工場でKord重機関銃を確認したところ、ロシアのデグチャレフ工場製造ものとみられる刻印が見つかった。
同日付印『Indian Lekhak』:「ロシアへの武器供給で制裁対象者のイゴール・ケサエフに米国とのコネクション」:
ロシアは世界一の喫煙国で、たばこ企業にとり夢の市場。世界保健機構によると、男性の4割超が喫煙者。ロシアの人口は米国の半分以下だが、年間の売上本数は米国と同定度となっている。現在、フィリップ・モリスは、インドネシアに続き、ロシア市場がメイン。昨年には、収益において、ロシア国内の最大規模の外国企業となった。
ケサエフ氏は、地方の企業買収を繰り返し、ロシア最大のたばこ販売会社を生んだ。メガポリスは、16万か所に販路を持っている。同氏は、2大コンビニ大手を運営するマーキュリー・リテール・グループの大株主3名の1人。2013年フィリップ・モリスとJTが、メガポリスの持株会社の株各20%を手に入れた。
フィリップ・モリスはカサエフ氏やロシア市場との長期的結びつきが強く、ロシア離れは難しいとみられる。英バース大学のたばこ産業研究フェローは、「4半世紀かけ築き上げたブランとプレゼンスを放棄するのは困難」だと指摘。世界的にたばこ産業は、アルジェリアと並び、ロシアとの結びつきは強い。同氏の武器事業からの撤退で、たばこ業界での展望にも影落としかねない。ロシアとの関係を断絶するには、フィリップ・モリスはメガポリスの全株を売却する必要がある。
多国籍たばこ企業でロシア問題をかかえるのはフィリップ・モリスはだけではない。日本たばこ産業(JT)はロシア国内市場最大となる3分の1を占める。同社は3月10日、ロシア国内での新規投資と市場活動の停止を発表したが、撤退には至ってはいない。政府が3分の1の株を保有しており、財務省は声明で、JTの事業は「適用法に従い、状況に応じた適切で迅速な行動をとる」 としている。
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米著名政治コンサルタントが著した「現行犯:中国を利して巨額の富を得た米国人エリート」がベストセラーとなっている。それは、同著の中で、対中強硬策をバイデン政権に求める共和党に所属していながら、20人もの元及び現職議員が、中国ビジネスで大儲けしていることを告発しているからである。
2月17日付
『ブライトバート』オンラインニュース(2005年設立の保守系メディア)が、「中国に寝返った20人の共和党政治家」と題して、米著名政治コンサルタントのピーター・シュワイツァー氏(57歳)のベストセラー著作「現行犯:中国を利して巨額の富を得た米国人エリート」の内容について詳報している。
すなわち、同氏は、米国と敵対する中国と特異なビジネス及び政治的関係を通じて、大儲けしている20人の共和党所属の元及び現職議員を以下のように告発している。
●上院院内総務ミッチ・マコーネル上院議員(79歳、ケンタッキー州選出、1985年より現職)
マコーネル議員と夫人のイレーン・チャオ氏(68歳、トランプ政権下で運輸長官)は、彼女の父親が立ち上げた海運会社フォアモースト・グループ(FG、1964年設立)を通じて、造船業大手の中国国営企業・中国船舶工業集団(1999年設立)等と密接な関係を築き、巨額の利益を上げている。
マコーネル夫妻が1993年に中国訪問した後、FGは2001~2011年の間に中国国営企業から10隻もの大型船を受注している。
シュワイツァー氏は、“マコーネル議員が中国にとって好ましくない政策を推進したなら、これら受注案件は一夜にして反故にされるであろうことは疑いもないことだ”と記している。
●元大統領ジョージ・H.W.ブッシュ(1924~2018年)及び元フロリダ州知事ジェブ・ブッシュ(69歳)
ブッシュ家の中国との関係が始まったのは、ジョージ・H.W.ブッシュ元大統領(1989~1993年在任の第41代)がレーガン政権下で副大統領(1981~1989年)を務めていたときであったが、栄華を極めたのは大統領就任以降であった。
まず、ブッシュSr大統領が1989年に中国を正式訪問することになる数日前の同年2月、同大統領の兄の実業家プレスコット・ブッシュ(1922~2010年)が訪中して中国高官と面談し、上海に外国企業重役専用のゴルフ場を建設する契約を受注。
更にプレスコットは、米企業・アセットマネジメント国際金融を代表して別の中国高官とも面談し、同社の中国における事業発展に貢献(同社から年25万ドル、約2,880万円の報酬受領)。
具体的には、ブッシュSr大統領が数ヵ月後に中国向け輸出制限緩和を行った結果、同社は中国向けに衛星通信システムの大型契約を受注している。
また、プレスコットは1993年、米中商工会議所(USCCC)を設立し、今日現在も米中経済関係を繋ぎ止めるはたらきをしている。
一方、2001年にジョージ・W.・ブッシュが第43代大統領(当時54歳、2001~2009年在任)に就任して以降、シュワイツァー氏は、“ブッシュJr大統領の弟であるジェブ・ブッシュ(1953年生れ、1999~2007年フロリダ州知事)及びニール・ブッシュ(1955年生れ、実業家)を含めたブッシュ家が一丸となって中国高官らとの親密な関係を再び築き上げた”と記している。
まず、ニール・ブッシュは、中国企業のグレース半導体製造社(2003年設立)から年40万ドル(約4,600万円)の報酬を受けて米中間ビジネスに深く関わっている。
また、ジェブ・ブッシュは2013年、多くの中国人実業家との接触を開始し、ブリトン・ヒル持株会社を立ち上げて2,600万ドル(約29億9千万円)の資金を中国複合企業・海航集団(2000年設立、現在は経営再建中)傘下の液化石油ガス(LPG)輸送会社に投じ、巨額の利益を享受している。
●元下院議長ジョン・ベイナー(72歳、オハイオ州選出、1990~2015年在任)
シュワイツァー氏は、ジョン・ベイナーが下院議長だった2011年、中国の為替操作政策の責任を問う法案阻止を企んで中国大使館がスクワイア・パットン・ボッグス法律事務所(SPB、1890年設立)にロビー活動を託したことを受けて、同議長独断で同法案成立を阻止。SPBは成功報酬として3万5千ドル(約400万円)を獲得。
ベイナーは2015年に政界引退後、SPBの“戦略顧問”に就任しており、シュワイツァー氏は、“同法律事務所は、中国政府と深い関係を築いている米国内で最も影響力ある会社のひとつとなっている”と記している。
更にシュワイツァー氏は、“SPBはベイナーの後押しもあって、今や中国政府に加えて、総合化学メーカーの中国化工集団(ChemChina、1984年設立)、世界最大の鉄道車両メーカーの中国中車有限公司(2001年前身設立)、通信機器大手メーカーの華為技術有限公司(ファーウェイ、1987年設立)、及び化学メーカーの万華化学集団公司(1998年設立)等、多数の中国政府系企業の顧問契約を獲得している”と告発している。
●元ミシシッピー州知事ヘイリー・バーバー(74歳)
“米議会における中国利益を最も増殖させたことで著名”なのは、米中交流財団(CUSEF、2008年設立)である。
CUSEFは香港の富豪で中国共産党政府と緊密な董建華(トゥン・チーホア、84歳、初代香港行政長官)が設立したもので、米国における活動拠点確立に当たって、ヘイリー・バーバー元ミシシッピー州知事(2004~2012年在任)が退任後に加わったロビー活動企業BGRグループ(1991年設立)を起用して奏功。
CUSEFは同社に対して、成功報酬として37万ドル(約4,260万円)支払っている。
●元上院議員デビッド・ビッター(60歳)
中国の監視機器メーカーのハイクビジョン(2001年設立)は、中国国防部傘下の通信機器メーカー中国電子科技集団公司(2002年設立)の関係会社であるが、中国政府より新疆ウィグル自治区の収容所に収監されているウィグル族を監視する設備を受注している。
そして、ハイクビジョンが米国における監視カメラの販売網拡大を支援したのが、デビッド・ビッター元上院議員(ルイジアナ州選出、2005~2015年在任)が共同経営者となっているロビー活動企業マーキュリー・パブリック・アフェアーズ(MPA、1999年設立)であった。
●元アイオワ州知事テリー・ブランスタッド(75歳)
テリー・ブランスタッド元アイオワ州知事(1983~1999年及び2011~2017年在任)は、ドナルド・トランプ大統領によって2017年に駐中国大使に指名されて就任して以来、習近平国家主席(68歳)の“旧友”と目されていることもあって、同大統領が進める“中国製品・サービスの輸入制限”政策を緩和させようと尽力している。
更に、シュワイツァー氏によれば、ブランスタッドの2人の息子も中国のために奔走していたとする。
まず、長男マーカス・ブランスタッドは、同大統領の中国製品への追加関税政策に反対する米化学協会(ACC、1872年設立)に代わってロビー活動を展開。
ACCには、世界有数の化学会社で中国政府も間接的に出資している万華化学(1998年設立)も加盟している。
また、次男エリック・ブランスタッドは、2016年にトランプ候補のアイオワ州キャンペーン本部長を務め、その後商務省とホワイトハウス間調整官に就任。
エリックは2018年6月に訪中し、中国高官と面談したが、その後しばらくしてトランプ政権が中国通信設備・端末メーカーの中興通信(ZTE、1985年設立)との契約を成立させている。
なお、エリックはその後数年間、中国企業のロビー活動を手伝っているMPAでも就労していた。
●元下院議員チャールズ・ブスタニー(65歳)
チャールズ・ブスタニー元下院議員(ルイジアナ州選出、2005~2012年在任)は、トランプ政権下での米通商代表部トップ就任に失敗した後、中国のために米国での影響力を拡大する手先となっているCUSEFに就職。
ブスタニーは2019年、CUSEF丸抱えで元下院議員らを訪中させて米中関係改善を図る一方、対中関税政策に反対する全米キャンペーン母体“関税は米中心部に損失”グループを通じてトランプ政権に関税政策緩和をはたらきかけ。
●元上院議員ノーマン・コールマン(72歳)、元下院議員コニー・マック4世(54歳)、元下院議員ジョン・クリスチャンセン(58歳)
中国通信設備・端末メーカー大手のZTEは、中国人民解放軍(PLA、1927年設立)と密接な関係にあるが、同社の米国における活動を補佐しているのがノーマン・コールマン元上院議員(ミネソタ州選出、2003~2009年在任)、コニー・マック4世元下院議員(フロリダ州選出、2005~2013年在任)、及びジョン・クリスチャンセン元下院議員(ネブラスカ州選出、1995~1999年在任)である。
特に、コールマンが所属するホーガン・ロベルズ法律事務所(1990年前身設立)は、ZTEの米議会における支援獲得のためのロビー活動を行っており、2019年に報酬として300万ドル(約3億4,500万円)近くを得ている。
●元上院議員ウィリアム・コーエン(81歳)
ウィリアム・コーエン元上院議員(メーン州選出、1979~1997年在任、クリントン政権下で1997~2001年国防長官就任)は2001年、軍関係企業のロビー活動を行うコーエン・グループを立ち上げ、海外4拠点のうち中国に2拠点設営。
同社を通じて、習国家出席が推進する「一帯一路経済圏構想」を米議会に浸透させるよう活動。
なお、コーエンは、天津市政府の顧問に就任しているだけでなく、同市在の南開大学(1904年設立の国立大学)の名誉教授にもなっている。
●元上院議員ティム・ハッチンソン(72歳)、元下院議員ロドニー・フリーリングハイゼン(75歳)
ティム・ハッチンソン元上院議員(アーカンソー州選出、1997~2003年在任)は目下グリーンバーグ・トゥローリグ法律事務所(1967年設立)に所属していて、企業間電子商取引大手のアリババグループ(1999年設立)のためのロビー活動を行っている。
同事務所は2020年、アリババグループから20万ドル(約2,300万円)の報酬を得ている。
また、ロドニー・フリーリングハイゼン元下院議員(ニュージャージー州選出、1995~2019年在任)もアリババグループのロビー活動に参画している。
●元上院院内総務トレント・ロット(80歳)、元下院議員エド・ロイス(70歳)、元下院議員ジェフ・デナム(54歳)
トレント・ロット元上院院内総務(ミシシッピー州選出、1989~2007年上院議員、1996~2001年院内総務在任)は、ソーシャルメディアの動画共有サービスのティックトック(2016年開始)を運営するバイトダンス(2012年設立)のロビー活動を担っている。
ジェフ・デナム元下院議員(カリフォルニア州選出、2013~2019年在任)もバイトダンスのロビー活動を行っており、2020年には同社から報酬16万ドル(約1,840万円)を得ている。
シュワイツァー氏は、“バイトダンス社内には中国共産党下部組織が組み込まれており、同社自身、政治的状況を検閲していると認めている”と糾弾している。
一方、エド・ロイス元下院議員(カリフォルニア州選出、1993~2019年在任)は、中国公安部(省に相当、1954年設立)及びPLAと密接な関係にあるソーシャルネットワークサービス大手テンセント(1998年設立)のロビー活動を行っている。
同社の技術及び製品は、中国共産党政府が14億人の国民の情報把握に寄与していると言われる。
同社はロイスの活動に対して、2020年に33万ドル(約3,800万円)の報酬を払っている。
●元下院議員リー・テリー(60歳)、元下院議員ジャック・キングストン(66歳)、元下院議員クリフ・スターンズ(80歳)
リー・テリー元下院議員(ネブラスカ州選出、1999~2015年在任)及びクリフ・スターンズ元下院議員(フロリダ州選出、1989~2013年在任)は、PLAと緊密な関係にある通信機器大手メーカーのファーウェイのためにロビー活動を行っている。
スターンズは、同じくPLAと深い繋がりのあるコンテナ輸送大手の中国遠洋運輸集団公司(1993年設立)のロビー活動も行っている。
一方、ジャック・キングストン元下院議員(ジョージア州選出、1993~2015年在任)は、中国国営の総合化学メーカーChemChinaのロビー活動を担っている。
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