10月12日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュースは、「タイ地元紙、プーチン大統領がタイ開催のAPECに出席と報道」と題して、11月中旬にバンコクで開催される第29回APEC首脳会議にウラジーミル・プーチン大統領が出席するとの報道を引用して伝えている。
タイの『バンコク・ポスト』紙(1946年創刊の英字紙)は10月12日、治安部門担当の高官の情報を引用して、11月18~19日にバンコクで開催されるAPEC首脳会議にウラジーミル・プーチン大統領が出席することになったと報じた。
同紙によると、タイ外務省から治安部門に対して、同会議におけるセキュリティ強化の指示が出されたという。
同省のタニー・サングラット報道官は記者会見で、APEC加盟の9ヵ国から代表が出席するとの回答を得ていると述べたが、具体的に国名等には言及しなかった。
なお、同紙によると、ジョー・バイデン大統領(79歳、2021年就任)は代理人を出席させることになっていて、習近平国家主席(69歳、2012年就任)の出席有無は依然不明だとしている。
同日付タイ『バンコク・ポスト』紙は、「プーチン大統領、APEC出席予定」として、かなりの確度を以て報じている。
タイ治安部門担当高官が匿名条件で話したところによると、プーチン大統領はタイ政府からのAPEC首脳会議への招待を受諾したという。
これに先立つ10月11日、タイ王国軍トップのチャラーンポル・スリサワディ将軍(59歳、2020年就任)は王国軍や国家警察幹部らとの会議後の記者会見で、“治安部門が騒動を起こしそうなグループをしっかり監視しており、今のところ危険な動き等は一切報告されていない”とした上で、“王国軍及び国家警察部隊が、APEC出席の首脳及び随行者らをしっかり警護する体制が敷かれている”とのみ言及している。
また、同日に会見したサングラット外務省報道官は、“9ヵ国から出席の回答を得ている”とし、“更に8ヵ国からも首脳出席が期待されるが、具体的に名前を挙げることは控える”とコメントした。
一方、タイ政府のトレーシュレー・タイサラナクル報道官は10月11日、タイがAPEC首脳会議を主催することに伴い、財務省が20バーツ(約80円)硬貨100万枚の記念コインを発行することを許可したと発表している。
(注)APEC:アジア太平洋(環太平洋地域)における初の経済協力を目的とする非公式協議体。1989年に日・米・加・豪・韓等12ヵ国で設立され、その後中国・台湾・香港・ロシア等が加わり、現在は21ヵ国・地域が加盟。事務局設置国はシンガポール。
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東南アジアの後発途上国のひとつであるラオス(1949年にフランスから独立)が、中国の巨額資金援助を受けてメコン川流域に追加となる4つの水力発電用ダム建設を推進している。しかし、専門家からは、環境問題や下流域の住民への影響は置き去りにされ、更には、アフリカの数ヵ国のように、債務超過によっていずれ中国の言いなりになることが目に見えていると、厳しく指摘されている。
12月12日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「ラオス、干害などお構いなくメコン川流域に更に4つのダム建設強行」
ラオスは、世界第12位の大河川であるメコン川主流域に更に4つの水力発電用ダムを建設しようとしている。
これについては、二十年近くも科学者や環境活動家から、同河川の魚資源減少という取り返しのつかない生態系への悪影響が出るとの批判や、また、直近でも巨額建設資金を中国国営銀行の融資に頼ることで、結果的に債務超過に陥って発電所運営権益など全て中国に牛耳られるリスクがあるとの指摘が出ている。
しかし、エネルギー鉱山省のシナワ・ソーファノーボン副大臣は直近で、ラオスは2030年までに100のダム建設計画を推進していて、これまでに建設された78のダムの水力発電所によって9,972メガワット(編注;約250万世帯分の電力消費量相当)を発電していると表明している。
同省によれば、小国のラオスとしては、水力発電を拡充することで、北隣接の中国から南部のカンボジアまで電力を供給する“アジアの発電拠点”となり、経済発展に寄与することが必要だとする。
建設が推進されているのは、メコン川上流のラオス北西部のパークベン・ダム、ルアンパバーン・ダム、パークレイ・ダム、サナカム・ダムで、タイへの電力供給に充てたいとしている。
この4つのダムに先んじて、サイニャブーリー・ダムは既に建設済みで稼働している。
しかし、東南アジア諸国連合(ASEAN)の公式サイト『トゥデイ』社説では、ラオス政府がサナカム・ダム建設に関わる環境アセスメント報告を使い回ししていると非難している。
メコン川委員会(MRC、注後記)に提出された同報告書は、元々パークベン・ダムの環境アセスメント報告を盗用して使われたパークレイ・ダム用のアセスメント報告をコピーしたものだからだという。
そこで、当該ダム建設による電力供給を予定していたタイ政府及びタイ電力公社(1969年設立)は、これまで二十年にわたって科学者・環境活動家・漁師の訴えを無視してきたが、さすがに今回は同ダム建設について支援を見直すと表明している。
タイ国家水資源局(ONWR、2017年設立)のソムキャット・プラジャムウォン局長は、サナカム水力発電所からの電力供給契約は一切合意していないのに、売電の話を過度に言い募っているとラオス政府を非難した。
同局長は更に、同ダム建設に伴う下流域の農業や漁業への影響を憂慮して、“もし我が国へ影響が及ばない電力供給源があるなら、そちらから買電することになる”とも強調した。
メコン川下流にはタイ、カンボジア、ベトナム南部があるが、2年間の干害で計7千万人の住民がかつかつの生活を強いられている。
独立系シンクタンクのスティムソン・センター(1989年設立、本拠はワシントンDC)は、ラオスと中国が下流域住民のことを無視してダムで水を堰き止めていると非難した。
下流域の漁師は、魚の生息数が激減しただけでなく、ダムからの放流で川土手が削られ、流域に建てられた建物に危険が及んでいると嘆く。
一方、ベトナムでは、(ダムによる河川堰き止めのため)海から塩水が逆流してきていると強硬にクレームしている。
ラオス北西部のサイニャブーリー県内で建設されるこれら5つのダムは、総額125億ドル(約1兆3,130億円)の建設コストがかかるため、国内総生産(GDP)が180億ドル(約1兆8,900億円、世界194ヵ国中115位)の同国は、ほぼ全額を中国国営銀行からの融資で賄っている。
そして3ヵ月前、総債務額が雪ダルマ式に増えてしまったラオスは、返済資金捻出のため、同国電力供給事業権を中国南方電網公司(2002年設立)に譲渡してしまっている。
独立系リサーチセンターのカンボジア連携・平和研究所のブラッドリー・ムルグ上級研究員は、“これでラオスは中国の軍門に降ったことになる”とし、“中国は結果的にメコン川上流の水資源をコントロールできることになり、下流のベトナム、カンボジア、ラオスにとって脅威となる”と警鐘を鳴らした。
また、過去二十年間、メコン川流域のインフラ事業を監視してきたドイツ人活動家マーカス・ハートゥク弁護士は、“多くが魚の生息数や地域住民の生活への影響を話題にするが、ダム建設に関わっている会社・人々の関心は利益を上げることしかない”と批評している。
3週間前、MRC主催による関係者会合が持たれ、当局や開発会社に対して、環境アセスメント見直しを求めた。
実は2018年7月、ラオス南東端のセーピアン・セーナムノイ・ダム(2013年着工、2019年完工)の工事中に決壊事故が発生し、71人が犠牲となり7千人以上が移転を余儀なくされる事故が発生していた。
MRCではこの事故を契機とした対応策についても討議された。
ソーファノーボン副大臣は、“当該事故を契機に、政府として安全基準を見直し、事故再発防止に努めている”と強調した。
しかし、ハートゥク弁護士は、過去二十年間、同国政府は安全、魚の生息数等の環境への影響についての問題提起を無視してきており、今回それが改善されているとは全く信じられないと反論した。
同弁護士は更に、“当該事故の発生原因は、精度の低い工事、建設事業に関わる汚職、そして手抜きのメインテナンスであり、これは偏に儲け優先の工事に起因しているが、現在のダム建設も、環境問題等を一切無視して如何に儲けるかしか考えられていない”と付言している。
一方、同日付タイ『バンコク・ポスト』紙:「タイ政府、ラオスの新設ダムへの支援見直しを表明」
タイ政府は、同政府が支援してきたラオスに新規に建設されるサナカム水力発電所に関し、ダム建設に伴う環境問題への深刻な影響が出る恐れがあることが判明し、不快感を表明している。
そこで、ONWRのプラジャムウォン局長は今週(12月7日の週)初め、“もし当該ダム建設工事に伴い、タイまで環境問題が及ぶようなことになるとするなら、MRCの加盟国の権利に基づき、当該ダム建設の中止を求めることになろう”と言及した。
同局長は、“ラオス政府に対して、同ダム建設に伴い、国境を越えてどのような環境問題が発生する可能性があるのか、詳細な情報提供を求めている”とし、“現段階では、同政府が十分な環境アセスメントを実施していないと理解している”と付言した。
なお、タイ政府は先月、当該ダム建設に伴う環境問題が深刻と判断される場合、当該ダム水力発電所からの電力供給は受けないと表明している。
(注)MRC:タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムのメコン川流域4ヵ国が加盟する、水資源に関する国際機関。1995年設立。本部はビエンチャン(ラオス)。
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