これまで何度も報じたとおり、南シナ海領有権問題に関し、フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所(PCA)の裁定が下される瞬間が間近に迫り、米中間の応酬が激しさを増してきている。そして、中国派、反中国派が混在する東南アジア連合(ASEAN)においても、いよいよ旗幟を鮮明にしようとする動きが出てきている。
6月15日付米
『ロイター通信米国版』:「ASEAN、南シナ海問題に懸念表明の共同声明文を撤回」
「・中国とASEANの特別外相会議が6月14日、昆明(雲南省)で開催。
・当初、南シナ海の一方的な海洋活動によって、同海域の平和と安定が阻害されていることに重大な懸念を有するとの共同声明文が、マレーシア外務省からリリース。
・しかし数時間後、同省報道官が、同声明文を至急変更する必要が出たとして撤回。...
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6月15日付米
『ロイター通信米国版』:「ASEAN、南シナ海問題に懸念表明の共同声明文を撤回」
「・中国とASEANの特別外相会議が6月14日、昆明(雲南省)で開催。
・当初、南シナ海の一方的な海洋活動によって、同海域の平和と安定が阻害されていることに重大な懸念を有するとの共同声明文が、マレーシア外務省からリリース。
・しかし数時間後、同省報道官が、同声明文を至急変更する必要が出たとして撤回。
・ただ、それ以降新たな声明文のリリースはなく、各国が個別にコメントを発表する事態。
・中国外交部の陸康(リュー・カン)報道官は、同会議は非公開であり、初めから共同声明文が準備される話となっていなかったとコメント。
・ベトナム外務省は、南シナ海での軍事拠点化に重大な懸念を表明するとの声明を発表したが、シンガポールとインドネシアは、平和と安定維持のためASEANと中国間で対話は継続すると、少々トーンダウンしたコメントをリリース。」
同日付英
『UKニュース』(
『AFP通信』記事引用):「ASEANの南シナ海問題に関わる声明文が撤回」
「・撤回前の共同声明文案には、国連海洋法条約(UNCLOS)を含めた国際法に基づき、南シナ海における平和、安全保障、そして航行の自由が保たれることの重要性を強調する、との文言。
・中国の陸報道官は、
『AFP通信』がリリースした共同声明文原稿は、ASEANの公式のものではなかったと主張。」
同日付マレーシア
『マレーシア・ニュース』(
『ニュース24』記事引用):「ASEAN、南シナ
海問題を批判する声明文を撤回」
「・中国は当初から、南シナ海問題をASEANグループではなく、個別の国との交渉をリクエスト。
・しかし、中国外交部がASEANの公式声明文ではないと主張した、当初リリースの共同声明文案には、ASEANグループとして南シナ海問題を国際法に基づく解決を望む等、中国と真っ向から対立する表現を使用。」
一方、同日付中国
『チャイナ・デイリィ』:「(南シナ海)海洋問題は対話で解決が可能」
「・25年目に当る中国・ASEAN特別外相会議が昆明で開催。
・これまでの同会議を通して、中国側とASEAN側の協力関係が構築。
・南シナ海問題についても、関係外の国の介入で相互信頼が損なわれかねない事態もあったが、今後も関係国間の対話を通じて、協調していくとの共通理解。」
最初に共同声明文案がメディア報道されてから、中国外交部の慌てふためく様子、そして同声明文を撤回に追いやった恫喝行為がまざまざと目に浮かぶ。同外交部は、世界40ヵ国以上が中国支持を表明しているとするが、経済力等で縛りを強くしていかない限り、“中国離れ”がそこかしこで起き始めていると言える。
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