バイデン新政権;アジア重点政策の下、中国対峙のためアジア同盟国と連携再構築【米・ドイツメディア】(2021/03/16)
既報どおり、バイデン新政権は、トランプ前政権同様、中国対峙の姿勢を標榜しているが、前政権と大きく違うのは、四ヵ国戦略対話(クワッド会議)開催を主導する等、アジアの同盟国との連携を重要視していることである。それは、新政権の国務長官・国防長官の2閣僚の初外遊先として日本・韓国を選択したことにも如実に表れている。
3月14日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「バイデン大統領、アジア重点政策の下、中国対峙のためアジア同盟国との連携再構築」
ジョー・バイデン大統領(78歳)の外交政策には、2つの重点政策がみてとれる。
それは、トランプ前政権のやり方に不満を持っていたアジア同盟国との連携を再構築し、そしてその上で一致団結して中国に対峙していくことである。
この証左となるのが、新政権の閣僚の初の外遊先として、日本と韓国を選んだことである。...
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3月14日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「バイデン大統領、アジア重点政策の下、中国対峙のためアジア同盟国との連携再構築」
ジョー・バイデン大統領(78歳)の外交政策には、2つの重点政策がみてとれる。
それは、トランプ前政権のやり方に不満を持っていたアジア同盟国との連携を再構築し、そしてその上で一致団結して中国に対峙していくことである。
この証左となるのが、新政権の閣僚の初の外遊先として、日本と韓国を選んだことである。
そして、米及び日韓それぞれとの2+2会談(外相・国防相)は正しく、直後の3月18日にアラスカで開催される、米閣僚と中国外交トップとの初会談の前奏曲となる。
米中閣僚級会談は、両国間の基本的立場及び相互に越えてはならない一線について協議する場と考えられ、同会談に出席するアントニー・ブリンケン国務長官(58歳)は、“21世紀最大の地政学的実験”と表現している。
また、米高官も、“1回限りの会談”で以て、米国が中国側と協働できる分野について確認する目的だとしている。
疾風のように現れた外交施策は、まず3月12日に開催されたクワッド会議サミットで始まっている。
すなわち、アジア太平洋政策を重点に捉えるべく、米国が日・豪・印メンバー国と連携を図るものであり、バラク・オバマ政権時のアジア軸足政策を復活させるとともに、トランプ前政権が行った、ぶっきらぼうで商談を進めるようなアジア同盟国へのアプローチを是正しようとするものである。
ブリンケン国務長官は先週、下院外交委員会の公聴会で、“中国が、我々米国からだけでなく、世界中から悪評となっていることを聞けば聞く程、我々にとって事態を変更しうる機会が増えることになろう”とコメントしている。
ただ、これは中々容易ではないと言える。
何故なら、まず中国は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題からいち早く立ち直って景気回復させているのに対して、ほとんどの西側諸国は依然感染症問題から抜け出せない状況にあることである。
更に、中国は国防費を大幅に増額して、米国の軍事力に追い付こうとしていることから、世界の中での中国の存在感がより高まっているからである。
一方、バイデン政権が、ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官(67歳)の最初の訪問先を日本としたことは、トランプ前政権が日本の駐留米軍費用の増額請求に固執したことでぎくしゃくした両国関係を改善しようとする確たる目的があるとみられる。
そして、ホワイトハウスが3月12日、バイデン大統領が最初に迎える首脳が菅義偉首相になったと発表していることからも窺える。
なお、バイデン政権の2閣僚が今週日・韓高官と2+2会談を持って、米国による中国対峙のための後援を期待しているが、両国はそれぞれ中国との貿易高が最大となっており、複雑な様相を呈することはあり得る。
ただ、両国とも安全保障面では米国頼みとなっていると言える。
そこで、日本との2+2会談では、日本が最も気にしている、中国との領有権問題がある尖閣諸島について、もし中国が一方的に攻めてきた場合、米軍は支援してくれるのかが重要課題のひとつとなろう。
また、韓国との会談においては、トランプ前政権が全面否定していた、大規模レベルの米韓合同演習の復活はあり得るのかが焦点になろう。
3月15日付ドイツ『ドイチェ・ベレ(DW、ドイツ国営通信)』(1953年設立):「バイデン新政権閣僚、初の外遊先としてアジア訪問」
バイデン政権の新閣僚であるブリンケン国務長官とオースティン国防長官が3月15日、初の外遊先として日本を訪問する。
この外交政策は、トランプ前政権の偏った外交政策と決別し、多国間関係の重視、同盟国・友好国との関係再構築を図ろうとするもので、特にアジアにおける政策に重点を置く意向である。
両閣僚は3月16日、茂木敏充外相(65歳)及び岸信夫防衛相(61歳)と外交政策及び安全保障問題について協議する。
次に両閣僚は3月17日、韓国を訪問して、特に北朝鮮問題について打ち合わせる。
日本、韓国それぞれの協議事項には、駐留米軍費用の負担額についても交渉することになろう。
なお、オースティン国防長官はその後、インドを訪問して安全保障問題につき協議する意向である。
一方、ブリンケン国務長官は一旦帰国した後、3月18日にはアラスカで、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の同行を得て、中国外交トップと初めて会談することになっている。
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EU外相;たしなめるために訪ロも、ロシア側にうまく利用されてしまい、EU加盟国から非難の集中砲火【米・ロシアメディア】(2021/02/07)
既報どおり、ロシアでは目下、野党勢力代表の即時釈放を求めるデモが続き、当局側の容赦ない取り締まりに西側諸国から非難の声が上がっている。そうした中、欧州連合(EU)外相がロシアをたしなめるために訪ロしたはずが、ロシア側からうまく利用されてしまい、結果的に無駄な訪ロだったと、同外相がEU加盟国から集中砲火を浴びている。
2月7日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「EUトップ外交官、ロシアの宣伝に利用されて逆に非難の集中砲火」
EU外相の任にあるジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表(73歳、元スペイン外相)は、EU加盟国から訪ロを中止するよう求められたのに、これを無視して3日間にわたりロシア滞在した結果、非難の集中砲火を浴びている。
同外相への非難は、ベルギー元首相のヒー・フェルホフスタット氏(67歳)を初めとした西側諸国外交官らから上がっているもので、彼らが懸念していたとおり、同外相とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(70歳)との2月5日の共同記者会見で最悪の事態が露呈している。...
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2月7日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「EUトップ外交官、ロシアの宣伝に利用されて逆に非難の集中砲火」
EU外相の任にあるジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表(73歳、元スペイン外相)は、EU加盟国から訪ロを中止するよう求められたのに、これを無視して3日間にわたりロシア滞在した結果、非難の集中砲火を浴びている。
同外相への非難は、ベルギー元首相のヒー・フェルホフスタット氏(67歳)を初めとした西側諸国外交官らから上がっているもので、彼らが懸念していたとおり、同外相とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(70歳)との2月5日の共同記者会見で最悪の事態が露呈している。
すなわち、ロシア当局は、この記者会見の直前、ドイツ・ポーランド・スウェーデンの駐ロ外交官を追放すると発表した。
ロシア側はこれらの外交官が、野党勢力アレクセイ・ナワルニー代表(44歳)の即時釈放を求める1月23日の違法デモに参加していたことを理由として挙げたが、正にボレロ外相に恥をかかせるのに丁度よいタイミングであった。
同外相は、EUトップ外交官として4年振りとなる訪ロを企画し実行した訳であるが、逆に非難される結果となってしまっている。
ドイツ国営放送局『ドイチェ・ベレ』(1953年設立)のクリスチャン・トリッペ東欧放送局長は2月6日、“結局、ボレル外相はラブロフ外相の罠に嵌った、言わば哀れな学生といった体たらくだ”と酷評した。
同局長は、“何故なら、ラブロフ外相はいつも交渉相手に一切妥協しないことで悪名高いが、今回はボレル外相の政治家としての尊厳まで奪ってしまったから”だと付言した。
同外相は共同記者会見前まで、ラブロフ外相に対して、ナワルニー氏の拘束はEU・ロシア間の関係上“最悪の事態”だとして、同氏の釈放を繰り返し述べていた。
しかし、同外相が、EU加盟国の中には対ロ制裁を追加するよう求めている国はないと伝えたことから、同外相の要求事項はそっくり削ぎ落されてしまった。
もちろん西側諸国からは、同外相による対ロ制裁に関するメッセージは全くの誤りだと指摘されている。
実はボレル外相の訪ロが決まった際、EU内では意見が分かれていた。
バルト三国、ポーランド、ルーマニアなどは、対ロ制裁賦課を要求していて、同外相の訪ロはロシア側を勘違いさせるとして反対していた。
一方、ドイツやフランスは、EUによる人権擁護の立場を直接ロシア側に訴えるのに、同外相訪ロは良い機会だと主張した。
そして、1月25日のEU加盟国外相会議においては、ナワルニー氏拘束に関しての対ロ追加制裁については、暫く保留することが投票で決められた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW、注1後記)EU人権擁護部門のフィリッペ・ダム代表は2月3日、“ボレル外相は、ナワルニー氏拘束や、民衆のデモを闇雲に取り締まるロシア側政策に対して、明確に抗議すべきである”と述べていた。
しかし、ボレル外相は、ラブロフ外相が暴言を吐いたときに黙っていたことで、更に非難を浴びることになってしまった。
すなわち、ラブロフ外相は、あろうことかEUを“信頼できないパートナー”と呼んだばかりか、ドイツ、フランス、スウェーデンの研究所及び化学兵器禁止機関(OPCW、注2後記)が確認した、ナワルニー氏は旧ソ連が開発した神経剤を盛られたとの結論を真っ向から否定していたからである。
そして最後に、ボレル外相は、ロシア側が突如決定したEU3ヵ国の駐ロ外交官の追放について全く抵抗しなかったことからも、猛烈に非難されることになっている。
なお、EUから脱退している英国の元外交官デビッド・クラーク氏(81歳)も、“EUは「戦略的自立」を如何に達成するか協議しているが、その前にまず「戦略的に成熟」することが肝要”だとした上で、“ともかく、EUは対ロシア交渉、特にウラジーミル・プーチン大統領(68歳)との交渉事では絶望的に弱腰だ”と批評した。
一方、EU高官は、2月22日に加盟国外相が一堂に会し、ロシアに対する“追加政策”について協議する予定である、と発表している。
2月6日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「EUのジョセップ・ボレル外相、EU・ロシア関係は“完璧に程遠い”と表明」
訪ロ中のボレル外相は2月6日、EUとロシアの関係は“完璧には程遠い”としたが、一方で、外交ルートは引き続きオープンとしておく必要があると表明した。
更に同外相は、EUはロシアにおける人権問題を憂慮しており、ナワルニー氏の即時釈放を求めるとも述べた。
また同外相は、ロシア当局による、EU3ヵ国の駐ロ外交官の追放についても抗議すると表明した。
なお、同外相は、2月4日~6日の滞在の間、EU・ロシア間関係に関し、広範囲にわたってロシア側と協議したが、その訪ロの成果について、2月22日に予定されているEU加盟国外相会議で報告するとも語った。
(注1)HRW:1978年設立の、米国に基盤を持つ国際的な人権NGOでニューヨーク市に本部を置く。世界各地の人権侵害と弾圧を止め、世界中すべての人々の人権を守ることを目的に、世界90ヵ国で人権状況をモニターしている団体である。
(注2)OPCW:1993年署名、1997年発効の化学兵器禁止条約に基づき、1997年に設立された国際機関。化学兵器の禁止と拡散防止のための世界的な活動を目的とする。本部はハーグ(オランダ)。
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