日本は、国際捕鯨委員会(IWC、注後記)脱退に伴い、7月1日から31年振りに商業捕鯨を再開した。操業できる海域に生息するクジラの種類・頭数など必要な情報が乏しい上に、鯨肉自体の需要が大幅に減少していることから、日本の商業捕鯨再開に対して欧米メディアから一斉に疑問の声が上がっている。
7月1日付米
『USAトゥデイ』紙(
『AP通信』配信):「鯨肉の需要後退の中、日本の商業捕鯨再開に疑問」
日本による商業捕鯨が7月1日、1988年以来31年振りに再開された。
日本は昨年まで、IWC加盟国として許容される調査捕鯨の名目でクジラを捕獲していたが、昨年末にIWCから脱退するとする6ヵ月前通知を提出していた。
そこで、6月30日の期限を待って、IWC非加盟国として商業捕鯨を再開するに至っている。...
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7月1日付米
『USAトゥデイ』紙(
『AP通信』配信):「鯨肉の需要後退の中、日本の商業捕鯨再開に疑問」
日本による商業捕鯨が7月1日、1988年以来31年振りに再開された。
日本は昨年まで、IWC加盟国として許容される調査捕鯨の名目でクジラを捕獲していたが、昨年末にIWCから脱退するとする6ヵ月前通知を提出していた。
そこで、6月30日の期限を待って、IWC非加盟国として商業捕鯨を再開するに至っている。
但し、非加盟国であるため、当該捕鯨が許容されるのは、日本の排他的経済水域(EEZ)内に限られる。
水産庁は同日、年内の捕鯨頭数を227頭に制限すると発表したが、この数値は、これまで日本が調査捕鯨のためとして南氷洋で捕獲してきた333頭よりは少ない。
今回の商業捕鯨再開に当っては、反捕鯨団体等の非難の声ばかりか、政権与党が推す多額の補助金の対象となる捕鯨業者が僅か数百人であること、更に、日本の食肉消費量における鯨肉の割合が僅か0.1%にも届かないという厳しい現実にも直面している。
同日付英国『スカイ・ニュースTV』:「日本が31年振りに商業捕鯨を再開」
今年の捕鯨頭数は、本来6月中に発表される予定であったが、7月1日まで発表が遅れたのは、6月28、29日にG-20大阪サミットが開催されていたこともあって、各国首脳や国際メディアから批判の目に曝されることを避けたものとみられる。
今回の商業捕鯨再開日に、日本の二つの捕鯨基地から捕鯨船が出航した。
一つは西日本の山口県下関市で、ここは安倍晋三首相の選挙地盤であり、もう一つは北海道の釧路港である。
西村康稔内閣官房副長官は7月1日、商業捕鯨再開によって地域社会の活性化、ひいては鯨肉文化が次の世代に繋がっていくことを期待すると発言した。
なお、今回の商業捕鯨再開について、多くの自然保護団体から非難の声があがっている。
その一方で、鯨肉が食肉消費量全体の僅か0.1%以下である現実から、日本政府として、衰退している産業(捕鯨文化)がやがて消え去ることを容認する動きと見る向きもある。
同日付フランス『AFP通信』:「日本の商業捕鯨再開日に捕鯨船が出航」
捕鯨解禁日の7月1日、捕鯨基地の一つである釧路港からは5隻の捕鯨船が出航し、当日午後には1頭のクジラが捕獲されている。
商業捕鯨再開には、反捕鯨国はもとより自然保護活動団体からも非難の声が上がっている。
しかし、釧路港の捕鯨事業関係者は、捕鯨産業は非常に小さな規模ではあるが、400年以上続いた文化を引き継いでいくことに誇りを持っていると語った。
なお、水産庁は7月1日、今年末までの捕鯨枠を227頭(内訳は、ミンククジラ52頭、ニタリクジラ150頭、イワシクジラ25頭)と設定すると発表した。
釧路港での出航式典に出席した長谷成人水産庁長官(編注;7月2日に退任人事発表)は、商業捕鯨再開によって鯨肉文化が後世に伝えられていくことに期待すると表明した。
一方、国際動物愛護基金のパトリック・ラマージュ海洋保護部門代表は、日本のEEZ内に限られる商業捕鯨では、これまでの南氷洋等で認められた捕鯨収穫量より格段に減少することとなり、鯨肉需要の更なる減退及び政府援助金の先細りが予想され、結果として、日本の捕鯨文化に終焉をもたらすことになろうとコメントしている。
(注)IWC:1948年、国際捕鯨取締条約に基づき鯨資源の保存及び捕鯨産業の秩序ある発展を図ることを目的として設立された国際機関。昨年時点での条約締結国は89ヵ国で、捕鯨支持国35ヵ国に対して、反捕鯨国は50ヵ国にのぼる。日本の条約加入は1951年であったが、2018年12月26日に日本はIWCを脱退することを通告し、2019年6月30日に脱退。
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