インドネシア向け高速鉄道では中国に敗退し、また、国産小型ジェット機でも中国側に追随され、「クールジャパン」戦略(日本政府による対外文化宣伝・輸出政策で使用される用語)で何かと中国に邪魔をされてきている。しかし、人口で世界第2位の大国インド向け新幹線は、ほぼ日本が成約に漕ぎ着ける見通しとなったと、米・インドメディアが伝えた。
12月8日付米
『CNBCニュース』(
『ロイター通信』記事引用)は、「12月8日付「日経」によると、インドネシアの高速鉄道建設計画では中国に敗れたものの、インド向け新幹線では、日本がほぼ契約を勝ち取る見通しとなったという。日本は、総工費9,800億ルピー(約1兆8千億円)と見積られる、ムンバイ(西部最大都市)とアーメダバード(北西部工業都市)間505キロメーターを結ぶ高速鉄道建設計画に対して、1兆円を超える円借款を供与する提案を行っている。安倍首相が今週インドを訪問し、モディ首相との首脳会談で最終合意を目指すという。なお、同建設計画は2017年に着工し、2023年に完工予定である。」と報じた。
同日付米
『NYSEポスト』証券取引ニュースは、「外務省は、安倍首相のインド訪問は、年次首脳会談出席のためとしているが、同首相はモディ首相との12月12日首脳会談において、インド初の高速鉄道に日本の新幹線を採用することにつき最終合意したい意向である。新幹線導入によって、ムンバイ・アーメダバード間の所要時間(8~10時間)が僅か2時間程に短縮される。なお、同新幹線は2007年に台湾で導入されているが、もしインド向けが成立すれば、2例目の新幹線輸出となる。」と伝えた。
また、同日付米
『クォーツ・ニュース(大西洋メディア社配信)』は、「新幹線建設費用として、インドに提案している1兆円を超える円借款について、適用金利は1%以下と破格である。なお、この円借款を供与することになると、直近10年で年1,000億円増えてきたインド向け円借款貸付残高(注1後記)が、これまで最高だったインドネシアを抜いて1位となる。」と報じた。
一方、同日付インド
『ザ・ヒンドゥー』(南インドの一般紙、1878年創刊)は、「国際協力機構(JICA、注2後記)とインド鉄道省は、2年前から高速鉄道建設の採算性評価作業を行ってきた。なお、日本の新幹線の採用が決定されると、国際入札が開かれることになり、JR東・川崎重工・日立のコンソーシアムが応札するとみられる。」と伝えた。
記事中にもあるとおり、新幹線輸出の2例目になるかどうか注目されるが、目下米国やマレーシアなどでも進める新幹線導入計画が左右されることになるため、政府としても形振り構わず成約を目指している。特に、インドネシア高速鉄道建設が、中国による6,000億円の無保証ローン提案によってひっくり返されたこともあって、インド向け商談に関し、安倍首相自らのトップセールスで以て最終合意を勝ち取ろうとしている。
(注1)円借款貸付残高:政府開発援助(ODA)と違って、返済義務のある低金利ローンで、2012年現在の貸付残高は29兆円余り。最大はインドネシアの2兆円、2位インド1兆5千億円、3位中国1兆円、4位フィリピン8千億円、5位タイ4千億円。
(注2)JICA:2003年10月設立の外務省所管の独立行政法人(前身は国際協力事業団)。開発途上地域・国向けの技術協力、円借款、無償資金協力の援助方法を一元的に担う、総合的なODAの実施機関。
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