北朝鮮、国連事務総長を迎える一方でミサイル実験の可能性
北朝鮮に、国連事務総長が訪問する予定であると、各メディアが報じている。だがそ
の一方で同国が近々ミサイル実験を行うのではないかという情報もあるという。各メ
ディアは次のように報じている。
11月16日付
『CNN』では、国連事務総長であるパン・ギムン氏が北朝鮮を訪問する予
定であることを伝えている。今回の訪朝が実現すれば、国際機関の長としては実に20
年以上ぶりのものになるという。
同記事は韓国の「ヨンハプ・ニュース」を引用し、国連の情報筋によると、パン・ギ
ムン氏が今週中にも訪朝して金正恩氏と面会し、北朝鮮の核兵器問題や対韓国問題に
ついて話し合う予定であるとしている。...
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11月16日付
『CNN』では、国連事務総長であるパン・ギムン氏が北朝鮮を訪問する予
定であることを伝えている。今回の訪朝が実現すれば、国際機関の長としては実に20
年以上ぶりのものになるという。
同記事は韓国の「ヨンハプ・ニュース」を引用し、国連の情報筋によると、パン・ギ
ムン氏が今週中にも訪朝して金正恩氏と面会し、北朝鮮の核兵器問題や対韓国問題に
ついて話し合う予定であるとしている。CNNの取材に対してはバン・キムンの広報担
当者の金子氏は同氏の訪朝に対して明言を避けたものの、「同氏は常に朝鮮半島の安
定と平和のために役立てればと願っている」と語ったという。また、韓国統一省は
「そのような話があることは把握しており、事態を注視している」とのコメントを発
表したという。
同記事は、これまで北朝鮮を訪れた国連事務総長は二人しかおらず、1979年にヴァル
トハイム氏と1993年にブトロス=ガーリ氏が訪朝したのみと伝えている。
パン・ギムン氏は今年の5月に北朝鮮の国境近くの町、開城市(ケソン市)を訪れる
予定だったが、突然北朝鮮側により中止されたとしている。また、同記事は北朝鮮が
自国民を強制労働同然の状況下で海外で労働させていることにも触れいている。
11月16日付
『アメリカ・アルジャジーラ』はやはり韓国の「ヨンハプ・ニュース」を
引用し、パン・ギムン氏の訪朝の正確な日にちや訪朝の目的などは明らかになってい
ないことを伝えている。
同記事は金正恩氏が2011年に父親の跡を継いで最高指導者になってから、中国の高官
をもてなしてはいるものの、一度も国家元首クラスの人物を国内に迎えてはいない
し、自身も外国を訪問していないとしている。
韓国の専門家は今年 5月に予定されていたケソン市への訪問が突然中止されたこと
について、おそらく北朝鮮側がパン・ギムン氏がアメリカや韓国の肩を持っていると
感じたからではないかと分析しているという。
北朝鮮の非核化協議は2009年から滞っており、同国はこれまで3度核実験を行ってお
り、2006年、2009年、2013年に国連から制裁を受けているという。しかし専門家らは
同国が2009年以降も小規模の核兵器工場を作り続け、自国のミサイル計画を推し進め
ていると分析しているという。
パン・ギムン氏の訪朝が実現すれば、北朝鮮は国際社会と協調していこうとしている
のではないかとも思われるが、他方ではその流れとは真逆の行動を起こしている。
11月16日付
『デイリーニュース』は「ヨンハプ・ニュース」を引用し、北朝鮮が同国
の東沿岸から日本海に向けたミサイルの発射実験の準備をしていると報じている。今
回の実験で用いられるミサイルは新しい型の弾道ミサイルで、一つのミサイルが高い
高度で複数のミサイルに分裂し標的を攻撃するタイプのものである可能性があるとみ
られている。韓国側は今回の実験で用いられるミサイルの型を見極めたい意向である
という。
11月16日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は北朝鮮がミサイル実験を行うことを裏付
ける根拠を挙げている。韓国の軍事関係者によれば、北朝鮮が自国の東部沿岸を航行
禁止区域に指定したというのである。同地域は北朝鮮の元山市(ウォンサン市)の辺
りで、航行禁止区域指定は11月11日から12月7日にかけてのものだという。同国は国際
機関に対しては何の告知も行っておらず、国連の国際海事機関は同国から何の知らせ
も受けていないとしている。韓国の国防部は必要とあらば軍事的対応をとる準備があ
ると語っているという。
韓国の防衛専門家は今回実験で用いられるミサイルの型について、航行禁止区域が極
めて広範囲であることから、おそらくはノドンではないかとの見方を示しているとい
う。また、韓国の複数のメディアは、今年5月に北朝鮮が潜水艦発射型の弾道ミサイ
ルの開発に成功した旨発表したことを受けて、潜水艦発弾道ミサイルの実験を行うの
ではないかと見ていることも報じている。
ただ、同記事は韓国政府の情報筋への取材を行い、この数か月間北朝鮮は複数回にわ
たり航行禁止区域を発表しているが、ミサイルは発射されていないとしている。
また、同記事は国連事務総長のパン・ギムン氏が訪朝予定であることにも言及してい
るが、今回のミサイル実験の可能性との関連性については何も述べていない。
パン・ギムン氏の訪朝とミサイル実験の関連性は全く明らかではない。ただ、海外で
の強制労働問題などについて、少しでも国際社会からの批判を免れたいとの意図があ
るのであれば、無謀な行動は控え、理性ある対話が行える国と印象付けた方が得策で
あろう。
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2030年までに貧困の撲滅なるか
世界銀行の発表によれば、いわゆる極貧の生活を送る人口が減少傾向にあることが発
表された。各メディアは以下のように伝えている。
10月4日付
『ハフィントンポスト』(アメリカ)は世界銀行が今年の終わりの時点
で、極貧の生活状況にある人口は世界全体の10%未満になるだろうと予測しているこ
とを報じている。それによると、一日あたりの生活費が1.9ドルの人口は2012年には
世界全体の12.8%だったのに対して、2015年末には9.6%にまで下がることが見込まれ
ている。
世界銀行総裁のジム・ヨン・キム氏は報道陣へのコメントとして「これは素晴らしい
話だ。...
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10月4日付
『ハフィントンポスト』(アメリカ)は世界銀行が今年の終わりの時点
で、極貧の生活状況にある人口は世界全体の10%未満になるだろうと予測しているこ
とを報じている。それによると、一日あたりの生活費が1.9ドルの人口は2012年には
世界全体の12.8%だったのに対して、2015年末には9.6%にまで下がることが見込まれ
ている。
世界銀行総裁のジム・ヨン・キム氏は報道陣へのコメントとして「これは素晴らしい
話だ。我々世代が初めて貧困層の撲滅に成功するかもしれない。貧困層の数値が一桁
台にまでなれば貧困撲滅のための戦略がより明確になるだろう」と述べたという。
もっとも、国連により掲げられている2030年までに貧困を撲滅するという目標の達成
が、にわかに容易になったわけではない。同氏は「経済成長の減速、不安定な市場経
済、国際・国内紛争、若年層の高い失業率など、目標達成を阻む要素は数多い。しか
し、大勢の貧困層の生活レベルを向上させたいという強い願いと、国ごとの政策が結
びつくことによって目標は達成されうると考える」とも語ったという。また、発展途
上国での公害問題も目標達成に大きな足かせになると予測されている。発展途上国の
都市部での健康障害の原因は大気汚染が主で、マラリア、エイズ、結核の3倍以上と
なっている。いわゆる従来から課題とされてきた水や衛生問題はここ25年で飛躍的に
改善されたが、環境問題や持続可能な経済成長という新たな現代型の問題が持ち上
がってきているという。
世界銀行の発表によれば、紛争地域や農産物輸出がメインとなっている国々では貧困
層の減少傾向は緩やかだという。特にサハラ砂漠以南の地域でこの傾向が顕著で、
1990年には貧困層が世界全体の15%であったのに対して、現在では半数を占めている
という。専門家によると、年2.6%もの急激な人口増加が事態をさらに悪化させている
という。アメリカのブルッキングス研究所のローレンス・シャンディ氏は「極貧層減
少のスピードよりも人口増加のスピードの方が速く、極貧層は増大化傾向にある。不
完全なデータ収集方法や、アフリカでの経済成長の著しい地域と極貧層が生活する地
域の不一致というのも問題がある」と指摘しているという。
10月4日付
『キュービック・レーン』(アメリカ)は2015年末の世界全体の9.6%の貧
困層の人数を具体的には7億2000万人であり、2012年には9億200万人であったのに比
して減少していると報じている。また、生活最低水準を来週ペルーのリマで行われる
国際通貨基金・世界銀行の年次総会で発表される数字を先取りして1.25ドルから1.9
ドルに引き上げたことも報じている。
また、サハラ砂漠以南の地域のうち、特にマダガスカルとコンゴ共和国の貧困が特に
顕著で、当該地域の人口の約80%が生活最低水準以下の暮らしを余儀なくされている
という。
さらに紛争激化地域の中近東や北アフリカでは正確なデータの収集が困難になってい
るという。
世界銀行は経済成長による副作用にも強い懸念を抱いており、アメリカが行おうとし
ている金融引き締め政策も低所得国にダメージを与えるのではないかとする。世界銀
行のチーフエコノミストであるカウシィク・バァッシュ氏は「この先にも混乱が待ち
受けているだろう。その中でも貧困の撲滅に向けて新たな挑戦が必要だ」と述べたと
いう。
10月4日付
『アメリカ・アルジャジーラ』は生活最低巣準が1.25ドルから1.9ドルに引
き上げられた理由について、以前から導入されていた実際の購買力の数値はそのまま
にしつつ、国ごとに異なる生活費を反映させた結果だとしている。世界銀行が初めて
生活最低水準という数値を持ち出したのは1990年のことで、当時は1日1ドルであっ
た。その後2008年に見直され、1.25ドルになっていた。
また、貧困層の減少を新興国、とりわけインドの顕著な経済成長、教育や保健、社会
保障への投資増によるものだという世界銀行の報告を引用している。また、2020年ま
での貧困問題はおそらく紛争問題に絡んだデリケートな問題を内包し、より達成困難
になっているだろうと予測している。
限りなくゼロに近くなっても、「撲滅」を宣言するには時間がかかりそうだ。
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