ウクライナ戦争で本当に勝っているのはどちらの側なのか。(2022/05/27)
ロシア軍がドンバス地方での攻勢を強める中、ウクライナ国防省は、ロシアが保有する高精度兵器の60%を使用したと主張している。また、欧米ではロシア軍の人材不足も報道されている。ロシア軍の苦戦が伝えられる一方で、ウクライナとロシアのどちらが実際に優勢になっているのかを見極めるのは実際には難しいとする声も上がっている。
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『フォックスニュース』によると、ゼレンスキー大統領は、ロシア軍が2275発のミサイルを使用して1475回近くのミサイル攻撃を行い、さらにロシア航空機による3000回の空爆を行ったと報告した。そして、ウクライナ国防省の情報総局副局長は25日、「我々のデータでは、高精度兵器に関して言えば、ロシア軍の備蓄の約60%がすでに使用されている」と推測していると述べた。また、ロシアの短距離弾道ミサイルシステムであるイスカンダルミサイルは、モスクワが補充に苦労している兵器のひとつに過ぎない、と語った。...
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『フォックスニュース』によると、ゼレンスキー大統領は、ロシア軍が2275発のミサイルを使用して1475回近くのミサイル攻撃を行い、さらにロシア航空機による3000回の空爆を行ったと報告した。そして、ウクライナ国防省の情報総局副局長は25日、「我々のデータでは、高精度兵器に関して言えば、ロシア軍の備蓄の約60%がすでに使用されている」と推測していると述べた。また、ロシアの短距離弾道ミサイルシステムであるイスカンダルミサイルは、モスクワが補充に苦労している兵器のひとつに過ぎない、と語った。同副局長は、ロシアは戦術を変更し、ウクライナの標的に発射するミサイルの数についてより慎重になっているとも主張した。厳しい国際的な制裁と、予想に反した長期戦となっている戦争のため、ロシア派軍隊が必要な物資の補給と修復に奔走していると推測されている。
英『イブニング・スタンダード』は、イギリスの国防長官が25日、マドリードでスペインのマルガリータ・ロブレス首相と会見した際に記者団に対し、ロシアの軍隊はすでに「疲弊し、壊れている」と述べたと伝えている。ロシア軍は兵器だけでなく、兵員不足にも陥っているとされている。ロシア議会は兵員を補うために、志願兵の年齢制限を撤廃する法案を25日に可決した。プーチン大統領が法案に署名すれば、41歳以上の男性もロシア軍に参加することができるようになる。
また、米『ビジネス・インサイダー』によると、ワシントンの研究機関「戦争研究所(ISW)」は、全ロシア将校会議が5月19日、ロシアのウクライナでの「特別軍事作戦」は失敗に終わったとし、プーチン大統領に対し、ロシアは「全面戦争」に備えなければならないと主張しているという。ISWは、全ロシア将校会議の批判的な投稿は、ロシア軍の戦地での様々な失敗のニュースが、ロシア国内の厳しい情報統制を掻い潜って国民に伝わっていることを示唆していると指摘している。そして、オンライン上では、ブロガーなどによる、ロシア政府に対する批判が顕著になってきている、と報告している。
しかし、米『アメリカン・コンサーバティブ』は、ウクライナ戦争でどちらが優勢なのかという判断は、実際のところ難しいと伝えている。ウクライナがロシアを打ち負かし、屈辱を与えるというウクライナと欧米諸国の期待が、戦争の状況に対し色メガネを通した評価につながってしまっている可能性があり、正確な現状把握を歪めている可能性があると警告している。
例えば、ウクライナ大統領府のアンドリー・イェルマーク長官は「戦争は、ウクライナの領土と主権の完全な回復とともに終結しなければならない」と宣言した。ウクライナの和平交渉団の一員であるミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、「ロシア軍はウクライナを去らなければならず、その後に和平プロセスの再開が可能となる」と発言している。しかし、元ドイツ准将のエーリッヒ・ファド氏は最近、西側諸国の報道で主流となっているウクライナ優勢という見方よりもはるかに悲観的な評価を下している。「ロシア軍は、いつ、どこで、どのような兵力で攻撃を行うかを決定している。ロシア軍はドンバスで、数キロメートルにわたる前線を段階的にゆっくりと進み、領土を獲得している。キーウでの初期作戦のような速攻性はないが、より広い範囲で陣地を確保しているからだ。マリウポリ以外にも、アゾフ海や黒海沿岸の都市部を支配している。ゼレンスキー大統領が語っているように、地域を再征服するための反撃という選択肢もあるが、軍事的・作戦的にこれは現実離れしている。東ウクライナではロシアが強い。地上戦はもちろん、空中戦でも優位に立っており、この点を見誤るべきではない。反撃のために、ウクライナは兵器を持っていないし、兵器があったとしても成功しないだろう。」と指摘している。
ヴァド氏は、西側の武器がウクライナの躍進を保証してくれるという主張も退けた。「ウクライナの兵站基地は1000キロも離れたポーランドやスロバキアにある。これらの兵器は、ウクライナを通って東ウクライナまで何千キロも移動しなければならない。これらの供給ラインはもちろんロシアからの砲撃を受けている。ロシア軍の巡航ミサイル、短距離ミサイル、空軍、特殊部隊、偵察。物資の大部分は東ウクライナに向かう途中で全滅するか、捕獲されてしまう。軍事作戦上、ウクライナに勝機があるのは、ロシアにとってコストが高すぎる場合、長期に渡る紛争の末にのみである。しかし、その代償は莫大なものになるだろう。最終的には国が荒廃してしまう。私の考えでは、それは決して目的にはなりえない。」
独立系ジャーナリストのアーネスト・サイぺス氏も、同様の逆説的な見解を示している。「メディアが報道する内容とは裏腹に、ロシア連邦の軍隊は、強姦、殺人、略奪を行う暴れ者で構成されてはいない。また、ウクライナ軍との戦いでことごとく負けているわけでもない。さらに、モスクワの軍隊は燃料、装備、物資が枯渇しているわけでもない。ロシア軍から大量の脱走者が出ているわけでもない。我々が目にする情報は、この地域の戦争でいつも現れるような典型的なプロパガンダだ。私は、2008年の南オセチア紛争で、新聞社グルジア・トゥデイに勤めていたときに、まったく同じようなことが展開するのを見た。」
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中国国営メディア;米ロによる“対中同盟形成”との米メディア報道に、恐るるに足らずと一蹴【米・中国メディア】(2018/07/18)
7月18日付Globali「トランプ大統領とプーチン大統領;近い将来“対中国同盟”を形成か?」で触れたとおり、米メディアの中には、表向きは中国と連携する態度を見せるも、本音では中国に対して忸怩たる思いを抱いているプーチン大統領としては、この米ロ首脳会談を契機に、軍事・経済両面で中国に対抗すべく、米ロ同盟を形成するのではないかとみるところもある。そして早速、中国政府は表向きには、米ロ首脳会談を歓迎するコメントを発表しているが、国営メディアを通じて、米ロによる“対中国同盟形成”など有り得ないし、仮にあっても恐るるに足らず、と間接的に米メディア報道を否定している。
7月17日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「中国国営メディア:米ロによる対中国“対抗同盟組成”など恐るるに足らずと一蹴」
中国外交部(省に相当)の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は7月17日、定例記者会見の場で、前日開催された米ロ首脳会談を歓迎すると表明した。
同報道官は、両大国の連携が世界経済等に良い影響をもたらすことを期待しているとした。
更に同報道官は、米ロ間関係が改善されようと、国際社会における中ロの関係は今後も盤石だと付言した。...
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7月17日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「中国国営メディア:米ロによる対中国“対抗同盟組成”など恐るるに足らずと一蹴」
中国外交部(省に相当)の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は7月17日、定例記者会見の場で、前日開催された米ロ首脳会談を歓迎すると表明した。
同報道官は、両大国の連携が世界経済等に良い影響をもたらすことを期待しているとした。
更に同報道官は、米ロ間関係が改善されようと、国際社会における中ロの関係は今後も盤石だと付言した。
これまで中ロ両国は、様々な面で利害が一致した行動を取ってきている。
特に国連安全保障理事会の常任理事国同士として、南シナ海やウクライナにおける領有権問題で相互に支持し合い、北朝鮮問題では両国市民がそれぞれ国連制裁破りに関わっており(それへの関与をお互い否定し合い)、また、国境付近での人権蹂躙問題についても庇い合っている。
しかし、急激な経済発展を続ける中国に対して、ロシアとしては心中穏やかでなかろう。何故なら、中国指導部が推進する「一帯一路経済圏構想(OBOR)」の下、かつて旧ソ連同胞であったカザフスタン・キルギス・ウズベキスタンに中国資本がどんどん流れ込み、中国同盟国に変貌していくのを止めることができず、結果としてロシアが孤立していく恐れがあるからである。
そうした中、米ロ会談後にトランプ大統領が、貿易から軍事関係、それはミサイルであっても核兵器であっても、対中国を念頭に今後の戦略を米ロ両国で協議した、とコメントしたことに対して、中国国営メディアが反応した。
すなわち、『環球時報』は7月17日、専門家のコメントを引用して、米ロ首脳会談を契機に、米ロ両国による対中国同盟が組織されるのではないかとの米メディア報道を全否定した。
同紙によると、中国外交部直轄の中国外交学院・李海東(リー・ハイトン)教授は、米ロ首脳が中国について討議するのは、中国がそれだけ両国にとって重要な国となっているからであり、それだけで両国が対中戦略を協同することになるとは言えない。そもそも、ロシアにとって中国は、米国の比ではない程、厚くかつ友好的なパートナーと見做されているからだと言及した。
また、別の専門家は、トランプ大統領がロシア緊密戦略を打ち出そうとも、米国議会等が決してそれを許すことはないと断言した。
同日付中国『環球時報』:「中国外交部、プーチン・トランプ首脳会談が中ロ関係に影響することはないと断言」
中国外交部の華報道官は、7月16日の米ロ首脳会談の結果によって、中ロ関係はもとより、米中関係にも影響を及ぼすことはないと断言した。
同報道官は、米ロ首脳会談を評価するとした上で、中ロ関係が包括的な戦略的パートナーシップで成り立っていると自負しているし、また、米中関係も今後発展していくものと信じていると強調した。
一方、『USAトゥデイ』紙は7月16日、トランプ大統領が、貿易から軍事関係まで、対中国を見据えてプーチン大統領と協議したと言及したと報じた。
また、『ジ・アメリカン・コンサーバティブ』誌は、米ロ両国が近い将来、対中国同盟を形成する可能性があると言及した。
しかし、これら米メディアの報道について、多くの専門家は言下に全否定している。
すなわち、中国外交学院の李教授は、米ロ首脳が中国について協議したからと言って、それが即、対中国戦略連携に繋がるとは考えられないとし、第一ロシアは、中国との関係に非常に満足しているからである、と主張した。
また、北京師範大学の李興(リー・シン)ユーラシア研究センター長は、中ロ間の戦略的パートナーシップは盤石であるとし、米ロ間には構造的な食い違いがあり、相容れないだろうと強調した。
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