ロシア政府は3月10日、欧米諸国による対ロシア制裁への報復措置の一環で、通信機器・医療機器・自動車用品・林産物等ロシア産物資の輸出を禁止すると発表した。更に、ウラジーミル・プーチン大統領(69歳)は、ロシア経済に更なる痛手となることを承知の上で、ロシアから撤退する外国企業の資産を接収し国有化する等断固たる対応を取る旨恫喝的に宣言している。
3月10日付米
『CNNニュース』は、「ロシア、撤退する西側諸国企業の資産を接収すると表明」と題して、ウラジーミル・プーチン大統領が、ロシア経済に更なる痛手となることを承知の上で、ロシアから撤退する外国企業の資産を接収し国有化すると宣言したと報じている。
米国、欧州、日本等の多くの企業が直近2週間で、欧米諸国政府による対ロシア制裁強化の一環で、ロシア内における合弁事業等から撤収するとの決定を行っている。
これに対抗すべくロシア政府は3月10日、撤退する西側諸国の企業の資産を接収する意向である旨表明した。
欧米諸国政府が実施している様々な対ロシア制裁で、ロシアの金融機関の困窮、ロシア通貨ルーブル大幅下落等、ロシア国家として債務返済不履行及び深刻な不況に見舞われる可能性が高い。
米財務省のジャネット・イエレン長官(75歳、2021年就任)は3月10日、西側諸国政府の経済制裁でロシア経済は“荒廃”しようが、“我々は更なる制裁追加も考えている”と語った。
しかし、これら措置に報復するかのように、プーチン大統領は3月10日、ロシア内事業から撤退する外国企業に対して、残された資産を“外部に経営を委託し、その後、希望者に企業を譲渡することが必要だ”と表明した。
同大統領が、大統領府公式サイト及び国営メディア報道上で語ったもので、“ロシア内事業から撤退する外国企業に対しては、断固たる措置を講ずる”と強調している。
この指示を受けたミハイル・ミシュスティン首相(56歳、2020年就任)は、当該措置実行のための法案作成に着手したと述べた。
同首相は、“もし外国企業が不合理な理由で事業を閉鎖するというなら、従業員の雇用や賃金を保証するため、当該事業を外部に委託して継続を図る意向だ”としている。
これまでに事業撤退を表明しているのは、マクドナルド、コカ・コーラ、アップル、BP、シェル等名立たる世界企業であるが、この程、大手金融機関として初めてゴールドマンサックス(1869年創業)が3月10日、ロシアから完全撤退する意向と発表した。
ロシア国営メディア『イズベスチア(ロシア語で報道の意)』紙(1917年創刊)報道によると、ロシア消費者権利擁護団体が事業撤退して国有化される対象となる外国企業として、上記の他、フォルクスワーゲン、トヨタ、ポルシェ、IKEA、IBM、H&M等合計59社に及ぶという。
一方、ロシア政府は3月10日朝、“IT技術、通信機器、医療機器、自動車用品、農機具、家電製品、鉄道車両、機関車、コンテナ、発電用タービン、金属・石材加工機具、コンピューター機器等”200種余りのロシア産物資について、2022年末まで輸出禁止措置を講ずると発表している。
3月11日付英国『BBCニュース』は、「米政府、ロシアによる外国企業資産接収との表明を非難」と題して、ロシア政府の国際法に反する対応を非難する声を報道している。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官(43歳、2021年就任)は3月10日、ロシア政府による外国企業資産の国有化方針について、結果として更に“ロシア経済に深刻な打撃”を与えることになると語った。
同報道官は、かかる対応は“全く法的根拠がない”とした上で、“このように、ロシアは外国企業が安心・安全に投資、事業展開するには危険極まりない国であることが明らかになった”とも言及している。
与党・統一ロシアのアンドレイ・トゥルチャック連邦院(上院)議員(46歳、2017年就任)は3月7日、西側企業のロシア事業からの撤退雪崩現象を受けて、“異例の措置”としながらも、この現象を止めるために国有化案を議会に提案したと表明した。
同議員は、“ロシア人労働者を守るため、止むを得ない措置”だとした上で、“(西側諸国のかかる制裁対応は)ロシアに対する戦争というよりも、市民に対する戦争だ”と付言した。
かかる動きを踏まえて、プーチン大統領は3月10日、撤退企業の資産接収、国有化のための“必要な立法手続き”を進めようとしていると表明した。
『BBC』が撤退意向を表明している主要企業にインタビューしたところ、ロシア政府のかかる対抗措置にも拘らず、撤退方針を変更する考えはないとしている。
なお、コカ・コーラの報道担当によると、“ロシア政府から、国有化等の考えについてまだ一切話は来ていない”という。
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