北朝鮮が弾道ミサイル・岸防衛大臣「少なくとも2発・ほかにも発射の可能性」(5月25日)
岸防衛大臣は北朝鮮が少なくとも弾道ミサイル2発を発射し、これ以外にもミサイルを発射した可能性があることを明らかにした。
確認されて2発はいずれも日本のEEZ(排他的経済水域)の外に落下し、船舶などに被害の情報は入っていないという。
1発目は最高高度は550キロ程度で、300キロ程度の距離を飛しょうしたことを明らかにした。これに続き弾道ミサイル1発を発射し最高高度50キロ程度で750キロ程度の距離を変速軌道で飛しょうしたことを明らかにした。
この2発以外にもミサイルを発射した可能性があり現在分析しているという。
デジタルインテリジェンスが戦争の形を変えた(5月16日)
ウクライナ戦争はこれまでの戦争とは異なる2つの特徴を見事に実現した。
①一つ目はデジタル衛星やドローン、スマホなどによる戦況の透明化である。これまでの戦争では戦場で何が起きているのかについては、例えば湾岸戦争などにおいては戦場カメラマンの取材や、撮影に委ねられる部分が大きかった。これに対し、ウクライナ戦争では衛星画像会社の高精細なデジタル画像や、ドローンによる上空映像、現地の兵士撮影によるスマホ映像などによって戦況のデータが日々刻々と入ってくるようになっている。...
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ウクライナ戦争はこれまでの戦争とは異なる2つの特徴を見事に実現した。
①一つ目はデジタル衛星やドローン、スマホなどによる戦況の透明化である。これまでの戦争では戦場で何が起きているのかについては、例えば湾岸戦争などにおいては戦場カメラマンの取材や、撮影に委ねられる部分が大きかった。これに対し、ウクライナ戦争では衛星画像会社の高精細なデジタル画像や、ドローンによる上空映像、現地の兵士撮影によるスマホ映像などによって戦況のデータが日々刻々と入ってくるようになっている。それによって地球の裏側にいる一般の人々にも戦場が今、どういう状況にあるのかが手に取るようにわかるようになった。
②二つ目は上記①のデータを生かしたハイテクインテリジェンスによる戦況分析や検証が新しい特徴である。例えば日々ストックされていく衛星画像を比べることでどういう新しい動きが起きつつあるのか、前日の画像と比較してどこがどう異なるのか。どの箇所が多く爆撃されているのかなどを把握していくことで、ロシア軍が今後どのように動こうとしているかの検証や分析が容易になった。さらに異なる衛星同士の衛星画像やドローンが撮影した現地映像、現地兵士が撮影した動画などをリモートセンシング技術などと組み合わせることによって、現地の被害状況など、より奥行のある情報に加工して把握することができるようになった。こうした一連の動きはハイテクによって情報を今後に生かせる情報に加工するという意味において映像インテリジェンスが完成したと言える。もうひとつこうしたハイテクデータを例えば米国を拠点とするシンクタンク「戦争研究所(ISW:インスティテュートフォーザスタディオブウォー)」に所属する専門家などが手間をかけて解析するというスタイルも新しい特徴である。
上記①②の要素が将来の戦争に何をもたらすのかと言えば、以前の戦争であるならばうやむやにされがちであった戦争犯罪を膨大で緻密な証拠を突き付けることによって円滑に裁くことができる可能性がある。
もうひとつは兵士の数、武器の数、採用した戦術など細かい情報がビッグデータ化されISWなどのシンクタンクに蓄積され、AI解析によって戦う前からシュミレーションができる状況が生まれるかもしれない。そうなると狂信的な指導者が無謀な戦争に踏み込んだりしない限りは、戦争の抑止につながるかもしれない。
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日本の安全保障をどう考えたらよいのか(4月30日)
日本と同じ専守防衛の国家であるウクライナを核大国であるロシアが侵略し、多くの街が破壊され民間人の死者が出たことは日本に衝撃を与え、様々な問題を日本に投げかけた。
国を守るために軍人だけでなく民間人も立ちあがってロシアに対して戦うウクライナ人の姿は多くの日本人の共感を呼んだと言えよう。ウクライナに対し米国はお金と武器、インテリジェンスを惜しみなく与え、拠出した金額は既に4兆円にのぼっている。
こうした中、日本もウクライナのようにならないよう自衛のための防衛予算を増やしていくべきとの潮流が生まれている。...
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日本と同じ専守防衛の国家であるウクライナを核大国であるロシアが侵略し、多くの街が破壊され民間人の死者が出たことは日本に衝撃を与え、様々な問題を日本に投げかけた。
国を守るために軍人だけでなく民間人も立ちあがってロシアに対して戦うウクライナ人の姿は多くの日本人の共感を呼んだと言えよう。ウクライナに対し米国はお金と武器、インテリジェンスを惜しみなく与え、拠出した金額は既に4兆円にのぼっている。
こうした中、日本もウクライナのようにならないよう自衛のための防衛予算を増やしていくべきとの潮流が生まれている。自民党・小野寺五典自民党安全保障調査会長は安全保障政策の指針となる防衛3文書をとりまとめ、岸田総理に提言を行った。
自民党としては今こそ憲法改正論議や、核の寄港や核シェアリングについて議論するタイミングにさしかかっているとみている。少なくともウクライナの事例を見ることで日本人にも安全保障の議論がしやすくなり、憲法改正のタイミングに近づいたと考えている。現実を見据えると憲法改正をこの5年以内に行うことはかなりの困難を伴う。核に関しては核の寄港や核シェアリングについて議論できるようになっただけでもかなりの前進であることは確かであるが、それ以上話が先に進むとは思われない。
ウクライナが過去に核兵器を手放していなければ今日のようなロシアによる侵略はなかったという指摘はその通りだと思われる。だから日本も核を持つべきだという議論に入ってゆくのはなかなか難しい。長崎・広島・福島と被ばく経験を持つ日本の核アレルギーは核保有論者が思っている以上に強いからである。
戦後70年間、核を使った戦争が世界で起きなかったのは長崎・広島の惨状を世界が目に焼き付けているからであり、長崎・広島を抱える日本が率先して核を持ってしまえばこうした核戦争の抑止機能を日本自らが放棄することになるという声もある。
中国・ロシア・北朝鮮など日本を取り巻く安全保障が今後、改善していくようには見えない。日本の安全保障は米国と良い関係を続け日米同盟の中で、うまく折り合いをつけていく必要がある。防衛予算増額でもGDP2%という数字ありきではなく、専守防衛で必要とされる通常兵器を必要な分だけ増やすというのが現実的ではないだろうか。
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国連事務総長を威嚇するプーチン大統領(4月30日)
28日、ウクライナの首都キーウを国連・グテーレス事務総長が訪問中にロシアが5発のミサイル攻撃を行い、ウクライナ人10人が負傷した。グテーレス事務総長はロシアを訪問しプーチン大統領と会談を行い、その後、ウクライナに行きゼレンスキー大統領と会談を行ったその直後の出来事であった。
国連といえば国際社会のトップに君臨する機関である。今回のミサイル攻撃は国連事務総長および国際社会にこれ以上ロシアとウクライナの紛争に首を突っ込むなという意味合いがあったものとみられる。...
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28日、ウクライナの首都キーウを国連・グテーレス事務総長が訪問中にロシアが5発のミサイル攻撃を行い、ウクライナ人10人が負傷した。グテーレス事務総長はロシアを訪問しプーチン大統領と会談を行い、その後、ウクライナに行きゼレンスキー大統領と会談を行ったその直後の出来事であった。
国連といえば国際社会のトップに君臨する機関である。今回のミサイル攻撃は国連事務総長および国際社会にこれ以上ロシアとウクライナの紛争に首を突っ込むなという意味合いがあったものとみられる。5発というのも「ロシアは国連安保理のP5の1国であることを忘れるな」という意味を込めさせたとも考えられる。
ロシアの暴挙に対し、ウクライナ・ゼレンスキー大統領は「ロシアは国連を侮辱している」と猛批判したが、攻撃してきたロシア自体が国連常任安保理事国の1国であることが話を複雑にしている。
そもそも国連事務総長というのは国連安保理の勧告に従って国連総会が任命するポジションであり、立場的には国連安保理の方が上である。そのため、グテーレス事務総長はロシア訪問をウクライナ訪問より優先させたという見方がある。
クレムリンでグテーレス事務総長出迎えたプーチン大統領は「お前を選んでやったのは俺だ。お前の命令は受けない」とばかりに、グテーレス事務総長を長いテーブルの端に座らせた。2人の間の異様な距離感がプーチン大統領とグテーレス事務総長の立場を鮮明に物語っていた。
プーチン大統領は、グテーレス事務総長の話はほとんど聞かずに厳しい表情で一方的に自分の主張をまくしたてたとされるが、国連側には1つだけ成果があった。それはマリウポリのアゾフスターリ製鉄所から市民を避難させる人道回廊設置に関して同意を取り付けたことである。
ただし、相手がプーチン大統領であり、この約束が守られる保証はどこにもなく、履行されるかどうかを注意深く見守っていく必要がある。
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マクロンは今後どう動くか(4月25日)
フランス大統領選挙の決選投票が行われ、マクロン大統領が17ポイント以上の差をつけ、極右政党「国民連合」・ルペン候補を退け再選を果たした。決選投票の投票率はこの50年間で最低となる72%だった。
マクロン勝利の要因について、ロシア・プーチンと親密で、NATOからの離脱を示唆していたルペンの当選を阻止するために消去法的に投票されたものであり、マクロン大統領の実力が評価されたものではないとの専門家の指摘もある。...
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フランス大統領選挙の決選投票が行われ、マクロン大統領が17ポイント以上の差をつけ、極右政党「国民連合」・ルペン候補を退け再選を果たした。決選投票の投票率はこの50年間で最低となる72%だった。
マクロン勝利の要因について、ロシア・プーチンと親密で、NATOからの離脱を示唆していたルペンの当選を阻止するために消去法的に投票されたものであり、マクロン大統領の実力が評価されたものではないとの専門家の指摘もある。
今後、マクロン大統領はEUヨーロッパ連合の議長国としてEUをけん引し、ロシアに対しては厳しい姿勢で臨むものとみられるが、同時に停戦の実現に向けたリーダーシップについては、これまで以上に外交能力が問われ厳しい目線にさらされることとなる。
今回の大統領選は非常に拮抗したものとなった。特徴的なのはフランス国内の分断が鮮明となったことである。特にマクロン大統領の政策に対し貧困層からの不満が大きく、国内においては物価高騰対策、福祉制度改革などでも、力量が試されることになりそうだ。そうした意味では2期目の道のりは1期目よりかなり厳しいものとなるかもしれない。
マクロン大統領の手腕が試される最大の関門となりそうなのはエネルギー問題である。鍵を握るのが原発政策で、運用の仕方によってはマクロン大統領の株を上げる可能性もある。
脱炭素、脱ロシアの動きを加速させるため、マクロン大統領は原発に力を入れているが、天然ガスをロシアに依存する国が多いEUの中で原発を推し進める流れを作り出すことができれば、燃料費高騰にも歯止めをかけることができる上、EUの盟主の座をドイツから奪うことも可能となるかもしれない。
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