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人類の存亡権ルールを共有する米ロ・・・2大核保有国(4月23日)
ロシア国防相は20日、新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)「サルマト」の発射実験に成功したと発表した。ロシア北西部プレセツク宇宙基地から、極東カムチャッカ半島に向けて発射されたこのミサイルは、核弾頭を10個搭載可能で、射程は1万8000キロと米国本土までカバーできる上、あらゆる防衛システムを回避できる。
ロシア国防省は「世界最長の射程を持つ最強のミサイル」と自負している。このタイミングでのICBMの発射は、ウクライナに多額の武器供与を行う米国およびNATO諸国への牽制の意味があるとみられる。...
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ロシア国防相は20日、新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)「サルマト」の発射実験に成功したと発表した。ロシア北西部プレセツク宇宙基地から、極東カムチャッカ半島に向けて発射されたこのミサイルは、核弾頭を10個搭載可能で、射程は1万8000キロと米国本土までカバーできる上、あらゆる防衛システムを回避できる。
ロシア国防省は「世界最長の射程を持つ最強のミサイル」と自負している。このタイミングでのICBMの発射は、ウクライナに多額の武器供与を行う米国およびNATO諸国への牽制の意味があるとみられる。
一方で気になるのは、「米国と同盟国への脅威とは捉えていない」との認識を示すなど米国の態度が北朝鮮の時とは異なる点である。
北朝鮮のミサイル実験には神経を尖らせている米国が、なぜロシアに対してはこのような認識なのだろうか。1つには今回の発射実験についてロシア側がルールに則って行動しているからである。例えば、ロシア側は米ロの新戦略兵器削減条約(新START※)に基づいて発射実験の通告をした。実はあらゆる米ロの核関連の動きは核抑止「相互確証破壊戦略(MAD:Mutual
Assured Destruction)」の枠組みの中で取り行われている。
一方で「BMD(ミサイル防衛構想)」では米国はロシアを念頭に入れていない。ロシアの核ミサイルシステムは大規模なものであり、ロシアが核の全面攻撃をした場合、米国は守り切れない。そのため、米ロの核の応酬は核抑止のフェーズ「核抑止戦略」に組み込まれている。
「核抑止戦略」は、ロシアがソ連であった1960年代から米ロの間で作られてきたシステムである。両国は相手が先制攻撃してきてもその後に続く報復で互いに全滅するという「核抑止戦略」ルールを分かち合っており、互いに恐怖の均衡を理解している。
この「核抑止戦略」より下のフェーズにあるのが「BMD」である。北朝鮮のICBMに対して米国は「BMD」で対応しているために敏感に反応する。「BMD」は敵のミサイル数に見合う防衛システムが必要となり財政的に合わないものであると言われている。
そのような際どいカラクリで、地球の安全保障は辛くも守られているというのが、現実であると言える。
※2010年にオバマ政権によって始められた米国とロシアによる核軍縮の枠組み「新戦略兵器削減条約(New
Strategic Arms Reduction Treaty)」の略称。
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価値観外交に関心が薄いインドアジア太平洋(4月23日)
日米豪印4か国による首脳会談「クアッド」が5月24日前後に東京で開催される見通しである。
ロシアに対する圧力を強めることがメインテーマとなるとみられるが、「クアッド」におけるインドの立ち位置は微妙なものである。ロシアがウクライナに侵攻した2月24日以降に、インドがロシア産原油購入を拡大したことが特に問題視されている。各国が足並みをそろえてロシアに対する制裁を実行に移す中でのインドの行為は同じ価値観を持った国家とはとても思えないものであるが、インドは、西側諸国によるロシアの締め付けに抗う姿勢さえ見せている。...
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日米豪印4か国による首脳会談「クアッド」が5月24日前後に東京で開催される見通しである。
ロシアに対する圧力を強めることがメインテーマとなるとみられるが、「クアッド」におけるインドの立ち位置は微妙なものである。ロシアがウクライナに侵攻した2月24日以降に、インドがロシア産原油購入を拡大したことが特に問題視されている。各国が足並みをそろえてロシアに対する制裁を実行に移す中でのインドの行為は同じ価値観を持った国家とはとても思えないものであるが、インドは、西側諸国によるロシアの締め付けに抗う姿勢さえ見せている。
こうしたインドに対し、バイデン政権は弱腰と批判されている。しびれを切らした英国・ジョンソン首相はモディ首相と会談し、インド国産戦闘機の開発を技術供与も含め支援することを表明した。インド軍が保有する武器の60%がロシア製であることから、ジョンソン首相はこうした申し出を行ない、欧米側に引き寄せようと考えた。これに対しモディ首相は「あらゆる面で自立したインドの実現に向けた英国の協力を歓迎する」と返答した。
一見、英国の支援を喜んでいるようにも聞こえる発言だが、「あらゆる面で自立したインド」という言葉が鍵である。最終的にはインド自身の国益を考えてインド自身で判断するというニュアンスが含まれているとも見える。
アジアインド太平洋においてロシアに手を差し伸べたのはインドに限らない。ブチャでのロシアの蛮行が明らかにされる中でG20議長国・インドネシアはロシアの参加を率先して擁護した。ソロモン諸島はロシアと同様な専制国家・中国の経済的な支援になびき、中国に軍事拠点を提供した。
この他、マレーシア、ベトナム、タイ、シンガポールなど太平洋エリアの国々は概して現実的かつ実利主義であり、欧米型の価値観外交には関心を持っていない。彼らが重視するのは価値観でなく、実利である。インドアジア太平洋においては、価値観が国と国を結びつける接着剤の役割を果たさない。
今後インドが「クアッド」から外れる可能性、或いは形骸化があっても不思議ではない。
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ポイントは「平和状態を維持する」重要性(4月17日)
ひとたび、平和状態が崩れると大変なことになることを今回のロシアによるウクライナ侵攻は教えてくれた。戦火が開かれてしまえば双方は戦闘することに終始し、外交はほとんど機能しなくなる。どうすれば戦争が終わるのかも見えなくなってしまう。
そういう意味で戦争になる前に何とか外交で決着をつけることが本来ならば望ましい。今回のウクライナ侵攻ではドイツやフランスなどがなんとかミンスク合意で決着をつけようとして外交で動いたが、これらに失敗し、戦争に突入してしまった。...
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ひとたび、平和状態が崩れると大変なことになることを今回のロシアによるウクライナ侵攻は教えてくれた。戦火が開かれてしまえば双方は戦闘することに終始し、外交はほとんど機能しなくなる。どうすれば戦争が終わるのかも見えなくなってしまう。
そういう意味で戦争になる前に何とか外交で決着をつけることが本来ならば望ましい。今回のウクライナ侵攻ではドイツやフランスなどがなんとかミンスク合意で決着をつけようとして外交で動いたが、これらに失敗し、戦争に突入してしまった。
さらに重要なのは安全保障体制の枠組みの整備である。例えば日米同盟やNATOなど自由主義諸国との連携強化を日常的に強めておくことが相手国に対し抑止力として機能することは間違いない。そのためには定期的に交流し、合同軍事訓練やメンテナンスを行い、武器や戦闘機などを共同で使いこなせるようにしていくなどの努力は欠かせない。
もうひとつ、重要なのが、防衛力の強化である。自分の国は自分で守るという意識の下で最低限の武器は自前で準備し、使いこなせるようにしておく必要がある。アフガニスタン撤退の時に米国は自分の国を守ろうとしない国は助けないという態度を明らかにしたが、この態度は日本に対しても適用されると覚悟すべきだ。過度な同盟国依存は危険である。
更にロシアに対する非難決議すら出せず、機能不全に陥っている国連の機能を回復させる必要がある。平和状態を保つためには国連が正常に動くことは重要で、日本などが国連改革に率先して取り組む必要がある。
例えば、現在の国連安全保障理事会のメンバー国5か国(米国、英国、フランス、中国、ロシア)はいずれも核兵器を持っている国々であるが、国連安全保障理事会の規約に「メンバー国5か国は戦術核も含めて核の先制使用は許されない」という一文を盛り込むような動きを日本が率先して作っていくことなどは何としても実行するべきではないだろうか。
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極東アジアの動向と地政学上極めて危険な位置にある日本(4月16日)
極東アジア周辺の安全保障環境がにわかに危険水域に近づいている。ウクライナ情勢に日本が気を取られている間に、日本列島の足元が危うくなっている。中国は台湾海峡上空で統合軍事演習を行い、対馬列島周辺海域で情報活動を行い、北朝鮮はICBMや核開発を推し進め、近日中にもミサイル発射実験または核実験に踏み込むのではないかと言われている。
ロシアは経済制裁に加わった日本を非友好国として敵視し日本海で巡航ミサイルを発射するなど、日本に対する威嚇を強めている。...
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極東アジア周辺の安全保障環境がにわかに危険水域に近づいている。ウクライナ情勢に日本が気を取られている間に、日本列島の足元が危うくなっている。中国は台湾海峡上空で統合軍事演習を行い、対馬列島周辺海域で情報活動を行い、北朝鮮はICBMや核開発を推し進め、近日中にもミサイル発射実験または核実験に踏み込むのではないかと言われている。
ロシアは経済制裁に加わった日本を非友好国として敵視し日本海で巡航ミサイルを発射するなど、日本に対する威嚇を強めている。ロシアと日本は緩衝地帯なしで、北方領土で直接向き合う危険な状態となっている。今後、日本が三正面作戦を余儀なくされるという可能性があるにも関わらず、平和になれてしまったからなのか、日本国民はあまり危機感を感じていないように見える。
直近の動きをみていくと、まず4月13日に、自衛隊と米国原子力空母が日本海で日米共同訓練を行った。米国原子力空母の日本海での展開は2017年以来となるが、周辺海域の警戒監視を強める目的と、15日にも行われるとみられていた北朝鮮の核実験に対して日米で牽制する目的があった。
翌14日には、「ロシア軍潜水艦が日本海で巡航ミサイルを発射した」とロシア国防省が発表した。極東ロシア軍はかなりの数がウクライナに派遣されていることを考えると、日本への牽制もあると同時にロシア極東軍が手薄でないことを示すためのパフォーマンスでもあったと考えられる。
15日は、米国上下院超党派議員6人が台湾を訪問し蔡英文総統と会談した。これに対し中国軍東部戦区が台湾周辺の空海域で統合軍事演習を行ったと発表した。15日は北朝鮮・故・金日成主席生誕110周年の記念日「太陽節」であったが、懸念されたミサイル実験や核実験は行われなかった。
今後、北朝鮮が核実験やミサイル実験が行われる可能性が高いのは米韓合同軍事演習が始まる18日、軍が創設70周年を迎える25日、あるいは5月9日にプーチン大統領と歩調を合わせてロシアの対独戦勝記念日に何らかの行動をとる可能性もある。加えて韓国の新大統領就任式が行われる5月10日、バイデン大統領やインド・モディ首相が来日しクアッドが開催される5月下旬にも何らかの動きを見せる可能性もある。
日本列島は、地政学的にも好位置にあり、狙われやすい危険な立ち位置にもあることをはっきり自覚し、しっかり守りを固めたい。
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米国・政府高官のウクライナ派遣・バイデン大統領“検討している”(4月15日)
西側諸国の首脳などがウクライナを相次いで訪れる中、米国・バイデン大統領は政府高官を派遣する考えがあるかについて「いま検討しているところ」と述べた。
米国の複数の主要メディアはブリンケン国務長官やオースティン国防長官の名前が取りざたされていると伝えている。米国としても支援する姿勢を改めて強く示したいとみられる。
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