モディ首相の心を掴んだFOIP構想(7月10日)
安倍元首相の死に直面した、インドのモディ首相は演説で「私にとって取返しのつかない喪失と耐えがたい痛みの日だ」と発言し、9日を、国を挙げて喪に服す日とすると発表した。さらにモディ首相はツイッターに「親密な友人への攻撃に深い苦しみを感じている。私たちの思いと祈りは、安倍氏とその家族、日本の人々とともにある」と書き込んだ。
ポーカーフェイスで知られ、なかなか本心を探りにくいともいわれるモディ首相の心を安倍元総理はなぜ掴むことができたのだろうか。...
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安倍元首相の死に直面した、インドのモディ首相は演説で「私にとって取返しのつかない喪失と耐えがたい痛みの日だ」と発言し、9日を、国を挙げて喪に服す日とすると発表した。さらにモディ首相はツイッターに「親密な友人への攻撃に深い苦しみを感じている。私たちの思いと祈りは、安倍氏とその家族、日本の人々とともにある」と書き込んだ。
ポーカーフェイスで知られ、なかなか本心を探りにくいともいわれるモディ首相の心を安倍元総理はなぜ掴むことができたのだろうか。その鍵は「FOIP(自由で開かれたインド太平洋)」構想にある。
インド洋と太平洋という2つの大洋を自由で、開かれたものにしようという「FOIP」構想を最初に提唱したのは実は米国ではなく、安倍元総理である。
安倍元総理は2007年、「太平洋とインド洋は、今や自由の海、繁栄の海として、一つのダイナミックな結合をもたらしている。従来の地理的境界を突き破る拡大アジアが、明瞭な形を現しつつあるが、これを広々と開き、どこまでも透明な海として豊かに育てていく力と、責任が、インドと日本にはある」と「FOIP」構想の意図をインド国民に伝えた。
さらに「インド洋と太平洋という二つの海が交わり、このほぼ両端に位置する民主主義の両国は、国民各層あらゆるレベルで友情を深めていかねばならないと、私は信じている」とも語り、インド国民の懐に入っていくことができた。
「FOIP」構想はその後、この構想に共鳴したトランプ政権によって世界中に拡散された。2018年、トランプ政権下でマティス国防長官が、「太平洋軍」の名称を「インド太平洋軍」に変更すると明らかにするなど、世界中にインドへの関心を向けさせた実績に対しモディ首相は特に強く安倍元総理に感謝している。
「FOIP」構想の影響はバイデン政権になってからも続き、バイデン大統領は「インド太平洋調整官」というポストを新設し、知日派の元国務次官補・カートキャンベル氏が同ポストに就任した。「クアッド」もこの「FOIP」構想を原型に生まれたものである。
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米中外相・対面会談へ・侵攻後初(7月6日)
中国外務省は中国・王毅外相が今週、G20(主要20か国)の外相会合が開かれるインドネシアで米国・ブリンケン国務長官と会談すると発表。両外相は米中関係や地域情勢などをめぐって意見交換する。両外相が対面で会談するのは今年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻して以降初めて。
米国国務省もブリンケン長官が王外相と会談すると発表。会談でブリンケン長官はロシアへの軍事支援を行わないよう中国側に求めるものとみられる。...
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中国外務省は中国・王毅外相が今週、G20(主要20か国)の外相会合が開かれるインドネシアで米国・ブリンケン国務長官と会談すると発表。両外相は米中関係や地域情勢などをめぐって意見交換する。両外相が対面で会談するのは今年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻して以降初めて。
米国国務省もブリンケン長官が王外相と会談すると発表。会談でブリンケン長官はロシアへの軍事支援を行わないよう中国側に求めるものとみられる。バイデン大統領は習近平国家主席と近く電話などで会談する考えを示していて、会談で両外相は首脳会談に向けた調整を行うものとみられる。
米国政府は記録的なインフレへの対策として中国の輸入品に課した関税上乗せ措置の見直しを検討していて、会談では関税措置についても意見が交わされるものとみられる。
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G7対BRICSの様相(6月25日)
BRICSの拡大首脳会合がオンラインで開催された。中国が主催し、インドネシア・アルゼンチン・サウジアラビア・エジプト・タイ・カザフスタン・UAE・ナイジェリア・セネガルの首脳陣が出席した。
ロシア・プーチン大統領や中国。習近平国家主席など、普段はこわもての指導者たち全員がオンライン上で子どものように手を振り、仲良しであることを強く演出してみせた。
プーチン大統領はこの会議の中で、経済制裁を強化する欧米諸国などを非難し、ウクライナから黒海を経由しての小麦などの輸送が出来ないことについて「ロシアは輸出を妨げておらず、西側が意図的にヒステリー状態を作り上げている」などと述べ、持論を繰り返し、友好国との結束を重視する姿勢を強調した。...
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BRICSの拡大首脳会合がオンラインで開催された。中国が主催し、インドネシア・アルゼンチン・サウジアラビア・エジプト・タイ・カザフスタン・UAE・ナイジェリア・セネガルの首脳陣が出席した。
ロシア・プーチン大統領や中国。習近平国家主席など、普段はこわもての指導者たち全員がオンライン上で子どものように手を振り、仲良しであることを強く演出してみせた。
プーチン大統領はこの会議の中で、経済制裁を強化する欧米諸国などを非難し、ウクライナから黒海を経由しての小麦などの輸送が出来ないことについて「ロシアは輸出を妨げておらず、西側が意図的にヒステリー状態を作り上げている」などと述べ、持論を繰り返し、友好国との結束を重視する姿勢を強調した。
BRICSの世界におけるGDPに占める割合は約24%、世界の貿易に占める割合は16%と侮れない規模である。プーチン大統領によればBRICSは、現在、通貨バスケットに基づく準備通貨の開発作業を進めているという。SWIFTを置き換えるような大掛かりなシステムを指向しているものとみられる。
一方、G7はBRICSのメンバーであるインドと南アフリカに加え、アルゼンチン・セネガル・インドネシアを26日から行われるG7サミットに招待している。両方に参加している国が出てきており、さながら欧米中心の秩序からの脱却を試みる中ロを中心の新興勢力BRICSと、従来からの世界秩序を守りたいG7の勢力争いの様相を呈してきている。
気になるのは両陣営に参加するインドのような国の存在であるが、インドはBRICSに加わっている一方、クアッドやIPEFなどの欧米陣営にも加わっている。今のところ両陣営の調整弁的な役割を果たしており許容できる存在であるが、この先、どうなっていくのかについては注視していく必要がありそうだ。
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米国・ウイグル製品輸入禁止の法律・施行(6月22日)
中国の新疆ウイグル自治区で強制労働によって生産された製品の輸入を全面的に禁止する米国の法律が21日施行された。
今後、米国に製品を輸出する企業が強制労働に関与していない証拠を求められるケースが増えると見込まれている。
去年1月には米国の税関当局が強制労働に関与していない十分な証拠がないとしてユニクロのシャツの輸入を差し止めた事例があり、今後日本企業にも影響が及ぶ可能性がある。
財務長官・米国「対中関税の一部引き下げ検討」(6月20日)
米国のイエレン財務長官はABCテレビの番組でトランプ前政権が中国からの輸入品に科しバイデン政権が引き継いでいる関税措置について、「われわれは皆中国が不公正な貿易を行っていると認識しており、これに取り組むことは重要だ」と強調した。
一方で「トランプ政権から引き継いだ関税の中には戦略性に欠け物価を引きあげているものがある。一定の負担を軽減するため関税の一部の再構成を検討している」と述べ、政権内で対中関税の一部引き下げを検討していることを明らかにした。...
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米国のイエレン財務長官はABCテレビの番組でトランプ前政権が中国からの輸入品に科しバイデン政権が引き継いでいる関税措置について、「われわれは皆中国が不公正な貿易を行っていると認識しており、これに取り組むことは重要だ」と強調した。
一方で「トランプ政権から引き継いだ関税の中には戦略性に欠け物価を引きあげているものがある。一定の負担を軽減するため関税の一部の再構成を検討している」と述べ、政権内で対中関税の一部引き下げを検討していることを明らかにした。
バイデン大統領は記者団から対中関税の撤廃や引き下げの可能性について問われると「考えをまとめているところ」と述べ検討していることを認めている。
背景には秋の中間選挙が迫るなか、記録的インフレの緩和につなげたいという思惑があるとみられるが、不公正とされる貿易慣行への是正へ向けた具体策を中国側から引き出さないあまま関税を引き下げれば一方的に譲歩したという批判は免れないだけにバイデン政権は難しい決断を迫られている。
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