日本三大美祭り、あるいは曳山祭り(山車)のひとつである、秩父夜祭(注1後記)が開催されている。日本古来の神道に基づくもので、300年余りの伝統がある。そこで米メディアが、同祭を引き合いに、今年盛大に行われている天皇即位の一連の儀式について、是非を論じている。
12月4日付
『AP通信』:「日本で数世紀続く神道の祭が挙行」
1年に一度開かれる、秩父夜祭が始まった。
数百人の成年男女や若者が、多くの提灯で飾られた山車を引き、夜空にはいくつもの花火が打ち上げられている。
これは、日本に古くから伝わる土着の宗教である神道の下での祭祀である。
神道では、数百の神々が森、河川、山に宿ると信じられている。
そこで人々は、神々の宿る精霊の存在を信じ、時には助けを求める。...
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12月4日付
『AP通信』:「日本で数世紀続く神道の祭が挙行」
1年に一度開かれる、秩父夜祭が始まった。
数百人の成年男女や若者が、多くの提灯で飾られた山車を引き、夜空にはいくつもの花火が打ち上げられている。
これは、日本に古くから伝わる土着の宗教である神道の下での祭祀である。
神道では、数百の神々が森、河川、山に宿ると信じられている。
そこで人々は、神々の宿る精霊の存在を信じ、時には助けを求める。
また、先祖は神になったとされ、同様に人々を助けてくれるものと考えている。
かかる伝統の下で行われる秩父夜祭は、2016年にユネスコ無形文化遺産に登録されている。
ただ、この祭に訪れる20万人の人たちの多くが、神道に基づく祭祀の意味を良く理解しておらず、彼らは山車や花火の美しさを愛で、また、露店の食べ物に舌鼓を打つばかりである。
日本の人々の宗教への関心は混沌としており、新年には神社に詣で、仏式の葬式を挙げ、更に、キリスト教徒は僅か1%しかいないのに教会で結婚式を挙げている。
伝統の観点から言えば、日本において神道と仏教は長く共存してきた背景があり、日本人にとって宗教間に大きな垣根がないと言える。
日本には、神社が8万余りあるが、それと同じくらいの寺院がある。
仏教は、中国を経由して日本に6世紀頃伝わったが、それ以前から伝わる神道とうまく共存してきたことが寺院の多さに繋がっていると考えられる。
しかし近代の神道は、特に太平洋戦争を引き起こした旧日本軍が拠り所としてきたことから、世界から厳しい批判の目に曝された。
特に、当時の天皇が神格化され、旧日本軍が天皇の名の下に戦争を推進したことが暗い歴史とされている。
しかし、現在の日本においても神道は健在で、今年即位した徳仁天皇が、神道に基づく様々な儀式を行っている。
先月行われた大嘗祭(注2後記)では、今回のために特別に造られた大嘗宮(後日解体)において、新天皇が夜通し、日本の伝統的な神々に感謝を伝える儀式を行った。
同祭にかかる費用は総額27億円(約2,500万ドル)で、全て税金で賄われる。
これについて、約200人のグループが昨年、税金からの拠出について憲法違反だとして提訴している。
一方、徳仁天皇の弟君の秋篠宮殿下は昨年、かかる儀式に税金を投じることに反対の意を唱え、かつ、政教分離の観点からも問題があるとコメントしている。
(注1)秩父夜祭:ユネスコ無形文化遺産に登録されている埼玉県秩父市にある秩父神社の例祭であり、毎年12月1日から6日に行われる。12月2日が宵宮、12月3日が大祭であり、提灯で飾り付けられた山車の曳き回しや、冬の花火大会で全国的に知られている。祭りは寛文年間(1661~1673年)から続くとされ、300年以上の歴史がある。日本屈指の極めて豪華な祭りであり、一連の行事が国の重要無形民俗文化財に指定されている。
(注2)大嘗祭:日本の天皇が皇位継承に際して行う宮中祭祀であり、皇室行事。新天皇が即位(現代では国事行為となる即位の礼の各儀式が終了)した後に新穀を神々に供え、自身もそれを食する。その意義は、大嘗宮において、国家、国民のために、その安寧、五穀豊穣を皇祖天照大神及び天神地祇に感謝し、また祈念することである。
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