原油の動向について分析する専門家は、これまで世界経済の減速と貿易戦争を理由にあげて、原油価格が急騰するリスクを軽視してきた。しかし中東での緊張の高まりがエネルギー市場を脅かすかもしれないと米国シンクタンクの専門家は指摘する。
6月13日の攻撃の後、原油価格は4%も上昇した。またトランプ政権はイランによる攻撃であるとしてイランを非難している。
今回の攻撃は、5月に発生した原油タンカーへの攻撃とあわせ、中東地域の緊張が高まることによる影響の大きさを改めて示すものとなった。...
全部読む
原油の動向について分析する専門家は、これまで世界経済の減速と貿易戦争を理由にあげて、原油価格が急騰するリスクを軽視してきた。しかし中東での緊張の高まりがエネルギー市場を脅かすかもしれないと米国シンクタンクの専門家は指摘する。
6月13日の攻撃の後、原油価格は4%も上昇した。またトランプ政権はイランによる攻撃であるとしてイランを非難している。
今回の攻撃は、5月に発生した原油タンカーへの攻撃とあわせ、中東地域の緊張が高まることによる影響の大きさを改めて示すものとなった。米国のシンクタンクの専門家は「今回のような事態は原油価格の急騰を引き起こす恐れがある。」と考えている。トランプ政権が5月にイラン核合意から離脱して以降、米国とイランの緊張はすでに高まっている。イランは米国による経済制裁への報復として、ホルムズ海峡を閉鎖すると繰り返し警告してきた。
専門家は今後のイランの行動について、次のように予想している。
「イランは、海軍、空軍、ミサイルなどの手段を使ってペルシア湾を航行する船舶を攻撃できる。またはイラン軍の代わりとして手先となる非公式な軍事力を使って攻撃を仕掛けるかもしれない。たとえば、攻撃はイラン国旗をかかげない船舶で行われる可能性があり、または、イラン軍の制服を身につけない戦闘員が攻撃する可能性がある。そうすればそのような攻撃にイラン政府が直接関与したと言えなくなるからだ。そしてイランとしては、必ずしも本格的な戦争を始める必要もない。米国や中東諸国からの本格的な反発を引き起こさない程度の、散発的で、低レベルの攻撃を続ける可能性がある。しかしたとえそのような攻撃であっても、原油価格のリスクプレミアムは高まる。」
またペルシア湾の航行が難しくなった場合の代替ルートについては、ペルシア湾経由での輸送量を補うことはほぼ不可能であることも指摘している。
「オマーン湾とイエメンに近いアデン湾でイラン海軍がプレゼンスを高めている。イランは公式には、イランの活動は密輸とソマリア近海の海賊に対処するためであるとしている。さらに、重要な原油ルートとして多くの船が航行するホルムズ海峡を通らずに原油を輸送できる代替ルートは限られている。まず、イラクからトルコに抜けるパイプラインがバイパスルートとして考えられるが、供給余力はほとんどない。次に、サウジアラビアから紅海のヤンブー港に向けるパイプラインの方が輸送量は大きいが、現在ペルシア湾で輸送される原油の量と比べると、たとえこのルートを最大限に活用できたとしても、ペルシア湾経由の輸送量の20%を超えることはない。唯一供給余力が期待できるルートとしては、サウジアラビアのパイプラインとUAEのパイプラインだけだ。それでも、それらのルートの供給量は、2016年の数字で一日あたり660万バレルにすぎない。そしてこれらのバイパスルートにもリスクがある。たとえばサウジアラビア政府は、紅海のヤンブーのパイプラインが今年5月、武装したドローンの攻撃を受けたあと、パイプラインを閉鎖した。」
緊張が高まった場合には供給不安が高まりかねない。
閉じる