これまで何度か報じたとおり、2018年5月に首相に返り咲いたマハティール・ビン=モハマド氏は、前任のナジブ・ラザク前首相が進めた親中政策の見直しを公言し、中国主導による大鉄道建設や天然ガス輸送パイプライン敷設プロジェクトの中止や撤回を断行している。しかし、中国との関係を絶つまでは考えておらず、同首相はこの程、一度中断した東海岸鉄道建設計画を再開させただけでなく、一大輸送基地構想も復活させた。いずれも、中国指導部が推進する“一帯一路経済圏構想(OBOR)”に寄与することとなり、マレーシア・中国間の経済協力体制が改めて強化されるとみられる。
4月20日付
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「マレーシア、中国関与の大プロジェクトの2つ目も復活」
マハティール・モハマド首相は4月19日、中国資本が絡むバンダル・マレーシアプロジェクト(BMP、注後記)と呼ばれる一大輸送基地建設計画を復活させることを閣議決定した旨発表した。
この決定の1週間前、マレーシア政府は、中断していた中国関与の東海岸鉄道建設計画について、請負中国企業が当初の総工費を3分の1削り、440億リンギ(106億ドル、約1兆1,770億円)まで減額してきたことから、再開を決めている。...
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4月20日付
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「マレーシア、中国関与の大プロジェクトの2つ目も復活」
マハティール・モハマド首相は4月19日、中国資本が絡むバンダル・マレーシアプロジェクト(BMP、注後記)と呼ばれる一大輸送基地建設計画を復活させることを閣議決定した旨発表した。
この決定の1週間前、マレーシア政府は、中断していた中国関与の東海岸鉄道建設計画について、請負中国企業が当初の総工費を3分の1削り、440億リンギ(106億ドル、約1兆1,770億円)まで減額してきたことから、再開を決めている。
両プロジェクトとも中国関与の一大インフラ・プロジェクトで、この復活によって、中国指導部が推進するOBORに大きく寄与することになる。
そして、マハティール首相は、今週に中国で開催される第2回OBOR関係国サミットに出席する予定である。
今回発表されたBMPは、40%の権益を政府が有し、残りはマレーシア事業会社のイスカンダール・ウォーターフロント・ホールディングス及び中国国営企業の中国鉄路工程総公司(CREC)が保有しており、総工費1,400億リンギ(338億ドル、約3兆7,520億円)の壮大なプロジェクトである。
同プロジェクトが2011年に立ち上げられた際、政府系投資機関の1Malysia Development Berhad(1MDB)が推進していたが、債務超過問題で60%の権益が上記2社に売却された。
しかし、その後1MDBに関わるナジブ・ラザク首相(当時)の不正資金問題が発覚し、同プロジェクトは中断され、また、2018年5月の総選挙において、マハティール現首相への政権交代という事態に繋がっている。
なお、クアラルンプールとシンガポールとを繋ぐ高速鉄道建設計画は、コストがかかり過ぎることが理由で中断されたままであるが、同首相は、BMP建設が進められた後も、同高速鉄道用の発着駅建設のスペースは十分確保されているので、将来復活させることになっても問題はないと付言している。
(注)BMP:2011年5月に前政権のナジブ・ラザク首相が立ち上げた一大輸送基地建設計画。クアラルンプールを世界第一級レベルの首都に造り直すべく、空軍基地跡地にシンガポールと繋ぐ高速鉄道、大量高速輸送システム、コミューター網、更に12本の高速道路を設ける計画。
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