英国のマンチェスター大学の研究チームは、8日、医学雑誌「PLOS Biology」で調査結果を発表し、骨粗しょう症の治療薬として設計された医薬品が、ヒトの毛包に劇的な効果をもたらし、毛髪を薄くする原因である「分子破壊」を取り除き、代わりに新しい髪の成長を促進すると報告した。
脱毛は男性にはより一般的だが、女性の55%以上も加齢による脱毛を経験し、そのうち約20%は中程度または重度の脱毛を起こす。...
全部読む
英国のマンチェスター大学の研究チームは、8日、医学雑誌「PLOS Biology」で調査結果を発表し、骨粗しょう症の治療薬として設計された医薬品が、ヒトの毛包に劇的な効果をもたらし、毛髪を薄くする原因である「分子破壊」を取り除き、代わりに新しい髪の成長を促進すると報告した。
脱毛は男性にはより一般的だが、女性の55%以上も加齢による脱毛を経験し、そのうち約20%は中程度または重度の脱毛を起こす。市場には、経口薬やクリームといった数々の薄毛治療製品が出回るが、これまでのところ効果はまちまちである。
研究でははじめにシクロスポリンA(CsA)の分子メカニズムを同定しようとした。CsAは、移植の拒絶反応および自己免疫疾患を抑制するために1980年代から一般的に使用されてきた。しばしば重篤な副作用を生じるが、最も軽微で最も興味深い副作用は、美容上望ましくない髪の成長を促すというものであった。
そこで研究者らは副作用の軽い化合物を探し始め、骨粗鬆症を治療するために開発された化合物であるWAY-316606が、重篤な副作用を伴わずにCsAと同じメカニズムで育毛を促進することを発見した。化合物は毛髪成長を妨げるたんぱく質を標的とした。
試験では40人を超える患者の毛包に、薬剤を6日間投与した。毛包はすぐに毛成長の「成長期」入り成長を始めた。2日後、投与した毛包での毛髪成長速度は有意に増加した。
主著者のネーサン・ホークショー氏は、この発見は何年も解決策なく脱毛症を抱えている人々に真の希望をもたらすと語った。「興味深いことに、CsAの毛成長促進効果を以前にマウスで研究したとき、今回と非常に異なる分子メカニズムの作用が判明した。その研究に固執していたら、我々はいつまで経っても見当違いの努力をしていたことだろう。脱毛症では検討されてこなかったこの新しい薬剤が人の髪の成長を促進するということは、技術移転的な可能性故わくわくする。しかし、この薬物または同様の化合物が脱毛症患者において効果的で安全かどうかを判断するために、今後は臨床試験が必要である。」と説明した。
骨粗しょう症を治療するために使用される薬が、確実に髪の成長を促進し、薄毛に悩む人々が感じるストレスや恥ずかしさを和らげることに期待がかかる。
現在英国では、男性の脱毛症治療にミノキシジルとフィナステリドの2種類の薬剤が使用可能である。いずれも中程度の副作用があり、効果が見られない場合もある。植毛手術も治療選択肢の一つだ。
閉じる