これらの進化の証拠は、100万年以上にわたる原始人の考古学的記録が観察される南ケニアのオリゴザイリー盆地で発見された。3月15日付サイエンス誌に発表された3つの研究によれば、ヒトの行動の変化は激しい環境変動の期間中に現れる。地形を変化させる地震や、変動する気候などの予期せぬ状況下であっても、技術革新、社会的取引、初期の記号を用いたコミュニケーションが、原始人が生き伸び、必要な資源を確保するのに役立った、と科学者らは述べる。
国立自然史博物館の人類の起源プログラムの責任者、リック・ポッツ氏は次のように述べている。「精神的能力と複雑な社会生活を伴うこの行動の変化は、我々の系統を他の原始人と区別させる出発点だったかもしれない。」
ポッツ氏は、ケニア国立博物館と協力して30年以上にわたり、人類の起源に関する研究をオリゴザイリーで率いている。オリゴザイリー盆地で見つかった人類最初の証拠は、約120万年前のものだ。何万年もの間、人々は握斧と呼ばれる、大きな石切り道具を作り使用していた。2002年、ポッツ氏と同僚のブルックス氏とその研究チームは、オリゴザイリー盆地でより小さく、より慎重に成形された沢山の道具を発見した。バークリー地質年代学センターのデイノ氏は同位体年代測定を行い、これらの道具が32万年前~30万5千年前と、思いのほか古いものであったことを明らかにした。これらの道具は、慎重に細工され、大きな万能型の握斧よりも高度なものであった。多くは柄に取り付けられ、おそらく槍として使用されるよう設計されたものであり、他は削器や千枚通しの形をしていた。
旧石器時代、握斧が地元の石を使って製作されていたはずだが、スミソニアンの研究チームは地元のものではない黒曜石でできた小さな石の尖頭器を発見した。チームはまた、黒曜石のないオリゴザイリーに、鋭利な火山石の破片を発見した。これらの石の化学組成は15~55マイル離れた複数の地域の黒曜石と一致し、古代の大地を越えて貴重な石を移動させて取引を行っていたことを示唆している。
チームはまた、岩石が色材として使用された証拠として、遺跡で黒と赤の岩(マンガンと黄土)を発見した。「色材が何に使われていたかはわからないが、我々考古学者は複雑な記号コミュニケーションの始まりと考えている。今日、色が衣服や旗でアイデンティティを表現するのに使われているのと同様に、これらの色材は原始人が同盟関係を表明したり、遠隔地の人々との関係を維持したりするのに役立ったかもしれない」とポッツ氏。
地質学的、地球化学的、古生物学的及び動物学的証拠に裏付けられ、約36万年前に始まった長期にわたる不安定な気候がこの地域に影響を与え、地震が絶えず地形を変えていたことがわかっている。環境変動はオリゴザイリー盆地の住民に重大な試練をもたらし、不足する時期に資源を確保できるよう旧石器時代においても技術や社会構造の変化が見られたはずだとポッツ氏らは考える。
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