インドのナレンドラ・モディ首相は、来年の国政選挙を前に、経済的な保証や社会的な保護の要求に応え、成長を促進する目的のため、年度予算の見直しをした。現在インドの公的医療費は国内総生産(GDP)の1%にも満たない予算しかなく、世界で最も低い国の1つである。今回政府が発表したのは、貧困世帯を中心に1億世帯に対し、最大年間50万ルピー(約85万円)の医療費を政府が負担するというものだ。これは現在拠出している額の約15倍にあたり、インドでは5回の心臓手術に相当するものだ。これにより5億人がその恩恵を受けることになるという。
モディ氏は自身のツイッターで「貧しい生活の中で、病気の治療というのは大きな心配の1つである。今回の計画で多くの人々が心配から解放されるだろう。」と発言した。また、同国のアラン・ジェートリー財務大臣は演説の中で「政府は確実に国民皆保険へ向けて動き出している。」と述べ「これにより世界の医療プログラムよりも多くの人々をカバーすることができる。さらに健康の保証だけでなく、雇用の創出にもつながる。」と話した。
インドでは健康保険を持っておらず、1日の収入がわずか数ドルしかない人も数多くいる。医療機関の整備にも大きな課題が残っており、公立病院が少ない。昨年の統計では13億人の人口に対し、正規の医師は100万人ほどで、公立病院は1万5000ヶ所に満たず、予算不足と人員不足の状況を抱えている。国民の多くはやむなく私立病院を受診するが、治療費が支払えず借金をしたり、家財を売る人も多い。そのため、実現すればこの制度は国民の大きな助けとなる。
しかし、満額を出せば7800億ドルを拠出し、総予算の3割ほどを占めることになり、相当な負担となる。実際にこれらの金額がどこから捻出されるのかは明らかになっていない。また、同国では私立病院の規制が不透明で、この制度を悪用する可能性もあるため、貧しい人々を守るためにどのような規制プログラムが組まれるのかも注目されている。
閉じる