昨年末の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、「化石燃料からの脱却に向けたロードマップ」が承認されたものの、長らく求められてきた「石油・石炭・天然ガスの段階的廃止」については何ら合意されなかった。その懸念が増幅するかのように、2023年の化石燃料消費量が史上最多となったことが分かった。
6月20日付米
『CNNニュース』、21日付欧米
『ロイター通信』は、世界を異常気象が襲う中、その主要因と考えられる化石燃料消費量が昨年史上最多となったと報じている。
世界では、熱波、集中豪雨、大干ばつ等、地球温暖化に伴う異常気象が発生している。
直近でも、インドやサウジアラビアを襲った熱波によって、多くの人が犠牲になっている。
その地球温暖化を引き起こす主要因として、石油・石炭・天然ガスの化石燃料消費が考えられるが、直近で発表された研究報告書によると、2023年における化石燃料消費量は史上最多となったという。...
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6月20日付米
『CNNニュース』、21日付欧米
『ロイター通信』は、世界を異常気象が襲う中、その主要因と考えられる化石燃料消費量が昨年史上最多となったと報じている。
世界では、熱波、集中豪雨、大干ばつ等、地球温暖化に伴う異常気象が発生している。
直近でも、インドやサウジアラビアを襲った熱波によって、多くの人が犠牲になっている。
その地球温暖化を引き起こす主要因として、石油・石炭・天然ガスの化石燃料消費が考えられるが、直近で発表された研究報告書によると、2023年における化石燃料消費量は史上最多となったという。
英国非営利法人エネルギー研究所(EI、注後記)、英国経営コンサルタント会社KPMG(1987年設立)、及び米経営コンサルタント会社A.T.カーニー(1926年前身マッキンゼー・シカゴ設立)が共同で分析・評価したもので、6月20日に公表された同報告書骨子は以下どおりである。
<全体>
・石油、石炭、天然ガス消費量は前年比+1.5%増。特に、石油の消費量が初めて1日当たり1億バレル(約1,600万キロリットル)超となったことが主要因。
・上記より、化石燃料燃焼に伴って発生した二酸化炭素量は、前年比+2.1%増えて史上最多となる400億トン超。
・化石燃料生産量は、エネルギー源全体の81.5%で、僅かながら前年比▼0.5%減。これは、化石燃料以上に再生可能エネルギー生産が増えたことによる。
・主要先進国における化石燃料消費量はピークを迎え、今後漸減傾向。米国では総エネルギー消費量の80%に、また、欧州でも産業革命以来となる70%以下に減少。
・ガソリン消費量は日量2,500万バレル(約400万キロリットル)と、コロナ禍前の2019年実績をわずかに上回る程に回復。
・再生可能エネルギー(水力除く)は前年比+13%と過去最大レベル。前年比+67%増となった風力と太陽光発電の増加が主要因。なお、総エネルギー源に占める割合では8%と前年比+0.5%増。
・水力を含めた再生可能エネルギーが占める比率は全体の15%。
<各国・地域状況>
・中国では、「ゼロコロナ政策」終焉に伴う電力需要急増によって化石燃料消費量が+6%増と過去最高を記録。但し、それ以上に再生可能エネルギーが増加(世界の再生可能エネルギーの63%を占める程)したため、エネルギー源全体では化石燃料比率は減少。
・インドでは、化石燃料消費量が+8%増加。特に石炭消費量は過去最大となり、北米・欧州合計消費量を上回る程。
・欧州全体の天然ガス消費量は前年比▼7%。また、そのうちロシア産天然ガス供給量は2021年(ウクライナ戦争前)の45%から15%まで大幅減少。
・米国における石炭消費量は前年比▼17%減少で、過去10年間で半減。
EIのジュリエット・ダベンポート所長(55歳、2022年就任)は、“世界全体でエネルギー消費量が最大化されており、それを化石燃料で補う結果となっている”とコメントしている。
また、KPMGのサイモン・バーリー副会長兼エネルギー・天然資源部門長も、“再生可能エネルギーの貢献度が過去最高を記録したものの、世界のエネルギー需要が増加し続けていることから、化石燃料由来のエネルギー比率が実質的に変わっていないことを意味している”と述べている。
(注)EI:2003年設立の英国非営利法人。公共の利益のためのすべての用途でエネルギーと燃料の科学を促進するために設立。
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