主要7ヵ国首脳会議(G-7サミット)が5月19~21日に広島で開催される。今年の議長国日本は、G-7メンバー外の8ヵ国を同サミットに招待しているが、その意図・思惑についての専門家分析を米メディアが詳報している。
5月15日付
『AP通信』は、G-7サミット議長国の日本が、メンバー国以外の8ヵ国首脳を招待した意図・思惑について詳報している。
今週広島で開催されるG-7サミットにおいて、台頭する中国牽制や、ウクライナ軍事侵攻を止めないロシアに対する制裁強化等が協議されることになる。
議長国日本は、上記主題に関わる合意及び結束を国際社会にアピールする上で、補完する意味もあってメンバー国以外の以下の8ヵ国首脳を招待している。
それらの国を招待した思惑について、専門家の分析は以下である。
●インド
・クワッド会議(注1後記)一員として、中国牽制に加担。
・2023年の主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)議長国として、対ロシア非難声明発信に期待。
・更に、G-7がエネルギー・食糧安全保障・気候変動・公共衛生・開発等で連携が必要と考えるグローバルサウス(注2後記)との橋渡し役としてG-20に期待。
・但し、旧ソ連時代から現在のロシアに至るまで武器供与に依拠していることから、国連総会における欧米諸国の度重なる制裁決議にも棄権票。
・エネルギー源もロシアに頼っており、現在ロシア産原油購入量が大幅増。
・新興国連合BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)の一員。
●ブラジル
・BRICSの一員。
・2024年のG-20サミット議長国。
・但し、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(77歳、2023年就任)は親中派で、就任後早々と訪中した上で、最大の貿易相手の中国との関係強化を画策。
●豪州
・クワッド会議メンバー。
・米同盟国であるばかりか、日本との連携強化の上で「自由で開かれたインド太平洋」拡充政策で協調。
・日本の外務省は豪州を「特別な戦略的パートナー」と位置付け。
・昨年、日豪間で、軍事・防諜・サイバーセキュリティ等をカバーする新たな安全保障協定を締結。
●韓国
・尹錫悦大統領(ユン・ソンニョル、62歳、2022年就任)主導の下、日韓関係修復軌道。
・日米韓3ヵ国連携強化で対北朝鮮警戒強化。
●インドネシア
・2023年の東南アジア諸国連合(ASEAN、1967年設立の10ヵ国政府間連合)議長国。
・日本として同国のエネルギー源に期待し、また経済連携発展を希望。
●ベトナム
・共産党一党独裁国ながら、米国との連携強化模索。
・1974年に南シナ海南沙諸島(パラセル諸島)を中国によって収奪され、以降領有権問題でしばしば中国と対立。
●コモロ連合(1975年フランスより独立、アフリカ大陸東岸沖・インド洋西端に位置)
・2023年のアフリカ連合(AU、2002年発足のアフリカ大陸55ヵ国の政府間連合)議長国。
・国連総会等での発言・意思表明を、AU統一決議として発信していることから、対ロシア制裁決議等でのAU対応は重要度大。
●クック諸島(1965年NZより独立)
・2023年の太平洋諸国フォーラム(PIF、注3後記)議長国。
・日本や欧米諸国は、直近の中国による南太平洋地域での影響力拡大を強く懸念しており、PIFとの連携強化を模索。
・日本としても、福島原発に貯蔵された処理水の太平洋への放出が年内に始まることから、かねて日本政府の対応に透明性が欠けていると批判してきたPIFの翻意に期待。
(注1)クワッド会議:日・米・豪・印4ヵ国でつくる連携や協力の枠組み。メンバー国は、民主主義等の価値観を共有していて、それぞれ連携を強めることで、インド太平洋地域で存在感を高める中国の行動を抑えたい狙いを持つ。
(注2)グローバルサウス:一般的に発展途上国を指し、それらの多くが主に南半球に位置することに由来。世界銀行における低中所得国、国連における発展途上国の交渉グループ、あるいは冷戦期における第三世界等と表現。G-7としては、権威主義の中ロに取り込まれないよう連携強化を望むが、彼ら自身は国益最大化のために、欧米のみならず中ロとも等距離外交を望む。
(注3)PIF:米・英国・フランス等の旧宗主国主導の南太平洋委員会(1947年設立の地域協力機構)に対抗して、島嶼国の主体性を堅持し、結束を図ることを目的として1971年設立。加盟国は、パプアニューギニア・フィジー・ソロモン諸島・ツバル・サモア等16ヵ国に援助供与国の豪州・NZを加えた18ヵ国。
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