パリ同時多発テロの捜査が進むにつれ、実行犯グループの素顔が徐々に浮かび上がってきた。また、テロ襲撃犯がイスラム難民に紛れて潜入した疑いが浮上し、難民受け入れに対する影響を懸念されている。フランス政府は非常事態を宣言し、各国政府による国境閉鎖が相次ぐなど、テロ事件は欧州社会に深刻な打撃と不安を与えている。
11月15日付
『CBSニュース』は、仏警察が唯一生き残ったテロ実行犯の兄弟のサラ・アブディサラム(26歳)を国際手配し、行方を追っていると報じている。サラは、テロ攻撃に使ったレンタカーをベルギーで借りたことが判明しており、仲間2人と逃亡している。仏警察はテロ襲撃の数時間後、ベルギーとの国境付近でサラの乗った車を職務質問したがそのまま見逃してしまった。
死亡した7人のテロリストのうち3人はフランス国籍、2人はベルギー国籍である。...
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11月15日付
『CBSニュース』は、仏警察が唯一生き残ったテロ実行犯の兄弟のサラ・アブディサラム(26歳)を国際手配し、行方を追っていると報じている。サラは、テロ攻撃に使ったレンタカーをベルギーで借りたことが判明しており、仲間2人と逃亡している。仏警察はテロ襲撃の数時間後、ベルギーとの国境付近でサラの乗った車を職務質問したがそのまま見逃してしまった。
死亡した7人のテロリストのうち3人はフランス国籍、2人はベルギー国籍である。
●オマル・イスマエル・モステファイ(30歳):パリ南部郊外に住むフランス国籍のアルジェリア人で、劇場襲撃の主犯とみられている。2004~2010年に8回の逮捕歴があり、2010年にフランス治安当局の過激派監視リストに入っている。熱心なイスラム教徒であり、2013~14年の間にシリアに渡航した形跡がある。モステファイの家族や仲間7人が拘束されている。
●アマド・アルモハマド(25歳):シリア人。競技場で自爆。但し、傍で見付かったパスポートは偽造とみられる。ギリシャ当局によるとアルモハマドは、10月3日にギリシャに入国、同7日にマケドニア経由でセルビアに入国している。
●イブラヒム・アブデスラム(31歳):ベルギー在住。テロ襲撃に関わったフランス人3人兄弟の1人で自爆死した。
●ヨセフ・サラヘル:27歳のエジプト人
●ビライ・ハドフィ:20歳のフランス国籍
●ベルギー人2名(氏名不詳)
また、仏捜査当局は、テロ襲撃犯が着用していた自爆用ベストには過酸化アセトンという強力であるが不安定な爆薬が使われていることを明らかにした。このベストは、ヨーロッパで爆薬の専門家が作ったものと推定される。
11月16日付
『ロイター通信』は、ベルギーのモーレンベークが、イスラム過激派の欧州での拠点になっていると報じている。モーレンベークは、ベルギーのブリュッセル首都圏地域に位置する19の基礎自治体の一つであり、ベルギー国内の約50万人のイスラム教徒の多くが住む地域にある。ベルギーは地方分権が強く、フランス語圏とオランダ語圏での対立があるため、治安当局の仕事はやりにくい。また、ベルギーは湾岸諸国からイスラム原理主義者の移住を受け入れてきたことに加え、巨大な武器の闇市場がある。このため、イスラム過激派にとっては格好の隠れ場所になっている。
オランダ・レーデン大学テロ・テロ対策センターのエドウィン・バッカー教授は、「ブリュッセルではベルギーに帰属意識を持たず、非常に孤立していて警察の目が届かない地域が幾つかある」と語っている。また政治状況が複雑なため、イスラム教会での憎しみを煽る説教やシリアでの戦闘への勧誘などを取り締まる立法なども立ち遅れている。ベルギーの政治制度は極端な地方分権であるため、小国でありながら銃火器の密売の一斉摘発すら難しい状況であり、ベルギー当局はイスラム過激派の影響拡大を恐れている。
11月15日付
『BBCニュース』は、パリで起きたテロ事件は、EUの難民対策と国境政策に重大な影響を与えると報じている。早くもポーランドのヨーロッパ担当相が、「難民は安全が確認された場合にのみ受け入れる」述べている。EUで決まった難民配分スキームでは、ポーランドは4500人を受け入れることになっているが、それが実行されるかは疑わしい。EU委員会は、日曜日、難民危機に対し“身勝手な行動”を執らないよう加盟各国に警告したが、難民流入ルートがテロリストに利用されたことがはっきりすれば、難民締め出しの動きは加速する。テロ事件は欧州の社会不安を深め、政治的には右翼がこの機会を利用しようとしている。今回のテロ事件によって、難民問題はより複雑で対処が難しくなったことは間違いない。
また、テロ事件は、シエンゲン協定で取り決めたヨーロッパ内での移動の自由に影響を与えている。ドイツを含め多くの国が同協定の履行を一時中断し、フランスは今一時的な国境出入国管理を敷いている。同放送は、欧州統合の重要な枠組みであるシエンゲン協定を守ろうとする強い決意はあったとしても、各国の国境管理が長引けばそれだけ欧州域内での移動の自由は危うくなってくると警鐘している。
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