ロシアが仕掛けたウクライナ戦争が中々収束しないが、そうした中、ロシア人高官が次々亡命している。これには、元ロシア人実業家で現在フランスに亡命中の人権活動家の支援が多く関わっている。
1月25日付
『CNNニュース』は、「ロシア人高官、ある人物の助けで次々亡命」と題して、ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)の独裁に嫌気してロシア人高官が次々に亡命しているが、これには元ロシア人実業家で現在人権活動家に転じている人物の支援が大きく関わっていると報じている。
元ロシア人実業家で現在フランスに亡命中のウラジーミル・オセチキン氏(41歳)は、『CNN』のインタビューに答えて、2015年9月にロシア当局が差し向けたとみられる暗殺グループの襲撃の様子を生々しく語った。
同氏は、家族と共に間一髪で難から逃れ、そのままフランスに渡って亡命申請を行った。
同氏は、2007年に経営していた会社にロシア内務省(1991年設立、現ロシア親衛隊)による査察の際に賄賂を要求されたが、断ったところ詐欺罪をでっち上げられ、4年余り投獄された。
その際に目の当たりにした刑務所での人権侵害行為等に怒りを覚え、2011年に仮出獄後に囚人の人権擁護運動を展開する「グラグ・ネット」を立ち上げ、人権活動家に転じている。
かかる背景から、フランスに亡命後も、ウラジーミル・プーチン大統領の独裁政治に反発し、特にウクライナ軍事侵攻に声高に非難した。
そこで、同大統領は、同氏を筆頭に国外退去した上でロシア政府批判を強めるオリガルヒ(新興財閥)の取り締まりを強化し始めた。
そこで同氏は、真相究明のジャーナリスト兼汚職撲滅運動家として精力的に活動した。
同氏が『CNN』に語ったところによれば、この活動を続けている最中、ロシア在の仲間からの内部通報で、二度も暗殺グループの襲撃から逃れられたとする。
例えば昨年2月には、チェチェン(ロシア南西端、カスピ海西側)から逃れた仲間の活動家から、“ロシア当局が、(暗殺グループに)前金を払ってオセチキン氏を排除しようとしているから気を付けるように”とのメールによる警告を受けていたという。
しかし、オセチキン氏の「グラグ・ネット」を通じて得られたロシア政府内の腐敗情報によって、多くの政府高官に“やり場のない憤り”を感じさせている。
特に、ロシア連邦保安庁(FSB、1995年設立、ソ連国家保安委員会KGB後継組織)の高官は、組織内の腐敗を内部告発者に転じることとなっている。
同高官は「#変革の風」のハンドルネームで活動を始め、様々な内部情報をオセチキン氏宛に発信している。
一方、同高官とは別に、プーチン政権の暴挙に嫌気して、多くの政府高官が国を逃れるようになっている。彼らは一様に、ウクライナ軍事侵攻が契機となったと発言している。
オセチキン氏によれば、次の高官らは彼の支援で亡命しているという。
●アンドレイ・メドベージェフ(26歳):今年1月、ノルウェーに脱出。民間雇い兵組織「ワグネル・グループ」(2014年活動開始)の元指揮官。ウクライナ東部の前線に送られてきた元囚人傭兵が大砲の盾にされていること、また、逃亡しようとした兵隊が無残に殺害される事態に嫌気。
●エムラン・ナブラチェコフ(39歳):昨年末、ベラルーシ経由ポーランドに亡命。FSB所属の元中尉で、トルコやシリアに派遣され、ロシア国外退去の反政府活動家らの諜報活動に当たっていたが、FSB上層部が、ウクライナのために戦う“志願兵”をテロリストと呼称していることに嫌気。
●マリア・ドミトリエワ(32歳):昨年10月、フランスに亡命。FSB所属の医者。ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU、1918年前身設立、海外でのスパイ活動等)担当が派遣先のアフリカでマラリアに罹患しても機密扱いされたことや、チェチェン高官の司法上の免責事態、更にはロシア軍の汚職状況を知るところとなり亡命決意。
なお、これら亡命した元高官について、二重スパイではないかとの懸念の声が欧州内から上がっているが、オセチキン氏は、“ロシア連邦の真のスパイは、自身の助けなどなくとも堂々と欧州に入国している”として、しっかり見極めるよう警鐘を鳴らしている。
閉じる