ロシアの侵攻により、ウクライナでは多くの都市が紛争地と化した。医療従事者たちは、これまで見たことのない怪我への対応や経験したことのない大量の患者を次々と受け入れる事態に直面している。こうした中、ウクライナの医療時従事者たちが、トリアージの方法を含めた、戦時下での緊急医療の施し方について学ぶ機会をフランスが提供し始めた。
仏
『ユーロニュース』によると、ウクライナから9人の医師が、例外的にウクライナ当局から1週間のフランス滞在を許可された。シリア内戦において医療を施した経験を持つフランス人のラファエル・ピティ医師のもと、集中的に、密度の濃いトレーニングを受けることができた。ピティ医師は、これまで11年間に及び、3万4千人以上の看護師や救急隊員をシリアで育成してきた経験を持つ。「私たちが教えるのは、病院で治療を受けることが出来る手前の、被害者を安定させ、治療を待っている間の、救おうとするための手順だ」と説明している。
麻酔医、蘇生医、救急医、外科医など、ウクライナの医療従事者の中から特別に選ばれた9人は、自国に戻った後、自らがトレーナーとなってウクライナ国内の医療従事者達を訓練していく。6月末にはウクライナ西部リヴィウにトレーニングセンターが新しく開設されるという。
仏紙『レゼコー』によると、ピティ医師は、紛争地帯では「素早く行動できることが必要だ」と述べている。「戦場で負傷した人の半数は、出血や窒息で最初の1時間以内に死亡する。そのため、この1時間の中で、被害者の死を防ぐことができる」対策を学ぶ必要があるという。
「戦時中の医療従事者というのは、時間的なプレッシャー、被災者の流入によるプレッシャー、現場の動きによるプレッシャーなど、常にさまざまなプレッシャーにさらされる。」反面、「病態はそれほど広範ではない。主に、火傷患者、圧死者、爆風、外傷を受けた手足、胸部、腹部、頭蓋骨」だという。
このトレーニングに参加したイゴール・デイネカさんは、「今、最も必要なのは医療機器と訓練を受けた人たちだ。医師だけでなく、戦場で活動するための訓練を受け、負傷者をどこでどのように避難させるかを知っている、広い意味での介護者だ」と述べている。
マリウポリ出身の麻酔蘇生医、アルテム・アハンツェフさんは、医療機器の面で「緊急に必要なのは止血帯」だと述べた。別の医師、イゴール・デイネカさんは、例えばトリアージの際に、絶対的緊急性と相対的緊急性を非常に迅速に区別することができる「超音波検査」の不足をあげている。ピティ医師は、今後「1台2500ユーロ(約34万円)のこの種の機器を購入し、すべての病院に設置できるよう寄付する予定だ」と述べている。
なお、ウクライナでは医療関係者は、ロシア軍にとって格好の標的となっているため、特に紛争地では身分を明かさないことが大切だという。
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