エチオピア北端のティグレ州で今週初め、エチオピア政府軍のものとみられる無人攻撃機が空爆し19人が犠牲になった。同地ではティグレ紛争(注1後記)が泥沼化しているが、ノーベル平和賞選考委員会がこの程、エチオピアと隣国エリトリア(1993年エチオピアより独立)間の和平を達成させた功績でノーベル平和賞を受賞していたエチオピアのアビィ・アハメド首相(45歳)に対して、同紛争泥沼化の原因を作っているとして異例に戒告を行った。
1月13日付
『ロイター通信』:「ノーベル委員会、かつてノーベル平和賞受賞のアビィ首相が紛争激化を推進しているとして非難」
ノーベル平和賞選考の任に当たっているノルウェーのノーベル委員会(注2後記)は1月13日、2019年にノーベル平和賞を授与しているエチオピアのアビィ・アハメド首相に対して、同国内のティグレ州における内戦や人権蹂躙問題を主導していることを理由に、非常に稀な戒告を行うと発表した。...
全部読む
1月13日付
『ロイター通信』:「ノーベル委員会、かつてノーベル平和賞受賞のアビィ首相が紛争激化を推進しているとして非難」
ノーベル平和賞選考の任に当たっているノルウェーのノーベル委員会(注2後記)は1月13日、2019年にノーベル平和賞を授与しているエチオピアのアビィ・アハメド首相に対して、同国内のティグレ州における内戦や人権蹂躙問題を主導していることを理由に、非常に稀な戒告を行うと発表した。
同委員会は声明で、“エチオピアの首相でありかつノーベル平和賞受賞者として、アビィ・アハメド氏には、紛争を終結し平和を取り戻す特別な責任を負っている”と強調した。
更に、“2019年受賞時において、長く続いた独裁制や民族間対立を収めたとの功績が認められたものであった”にも拘らず、2020年11月にエリトリア国防軍(EDF)をティグレ州に招き入れて同州内の紛争を泥沼化した、として非難した。
これまでに、数万人が犠牲となり、また、エチオピア政府が昨年6月以降ティグレ州向けの食糧や医療援助物資を押収していることから、数百万人が飢餓に遭っている。
世界保健機関(WHO、1948年設立)の事務局長で、かつてティグレ州の地域保健局長も務めていたテドロス・アダノム・ゲブレイェソス氏(56歳)は1月12日、同州に医療援助物資を届けたいとのWHO要請をアビィ政権が拒否したこともあって、“目下、ティグレ州の惨状は世界で最悪となっている”と糾弾した。
また、ノーベル委員会も、“現地の人道問題は非常に深刻で、十分な人道支援が行えない事態は全く受け入れられない”とも強調している。
エチオピア政府軍は昨年12月末以降、更に進軍していくのを止めたと表明しているが、現地で救済に当たる支援グループによると、空爆が続いていてこれまでに50人以上の市民が犠牲になっているという。
更に、ジョー・バイデン大統領(79歳)がアビィ首相との電話会談で懸念を伝えた1月10日当日にも、ドローンによる空爆が行われて17人が犠牲になっている。
(注1)ティグレ紛争:2020年11月初に開始された、エチオピア各州や北隣のエリトリアを巻き込みつつ進行中のエチオピア政府軍とティグレ防衛軍(TDF)間の内戦。エチオピア政府軍にはエチオピア国防軍(ENDF)、エチオピア連邦警察、その他地方の警察部隊、憲兵隊に加え、EDFが参戦。TDFには、ティグレ人民解放戦線(TPLF、かつてエチオピアを支配した勢力)、ENDF離反兵士、ティグレ州民兵、義勇軍が参加。これまでに1万人以上が犠牲となり、国内避難民が250万人以上発生。
(注2)ノーベル委員会:ノーベル賞受賞者の選定に関わる作業の大半を担当する作業部会で、ノーベル賞の各部門に対応して5つのノーベル委員会がある。4つの委員会(物理学、化学、生理学・医学、文学)は、それぞれの賞のスウェーデン国内の授与機関内に設置された作業部会で、5つ目はノーベル平和賞を担当するノルウェー・ノーベル委員会である。
閉じる