アンゲラ・メルケル首相(66歳)は、今秋での政界引退を表明している。後任候補としては、中道右派の与党・キリスト教民主同盟(CDU、1945年設立)のアルミン・ラシェット党首(60歳)が本命と考えられている。そしてこの程同氏が、対ロシア政策に関し、ウクライナへの威嚇行為等があれば現在工事が最終段階にあるノルド・ストリーム2天然ガスパイプライン(注後記)の建設中断もありうるとして、ロシアを牽制する発言をした。なお、訪独中のアントニー・ブリンケン米国務長官(58歳)は、同プロジェクトはウクライナの安全保障を損なう地政学的プロジェクトだとして、改めて建設反対を表明している。
6月27日付
『ロイター通信』:「ドイツCDUの首相候補、ロシア側に狼藉あらばノルド・ストリーム2プロジェクト建設中断も辞さずと牽制」
アンゲラ・メルケル首相の後任と目される、アルミン・ラシェットCDU党首は6月26日、ロシア側がウクライナへの威嚇圧力行動を取るようなことがあれば、ウクライナ経由の天然ガス供給パイプラインと競合するノルド・ストリーム2プロジェクトについて、完工間近であろうとも中断措置はありうると発言した。...
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6月27日付
『ロイター通信』:「ドイツCDUの首相候補、ロシア側に狼藉あらばノルド・ストリーム2プロジェクト建設中断も辞さずと牽制」
アンゲラ・メルケル首相の後任と目される、アルミン・ラシェットCDU党首は6月26日、ロシア側がウクライナへの威嚇圧力行動を取るようなことがあれば、ウクライナ経由の天然ガス供給パイプラインと競合するノルド・ストリーム2プロジェクトについて、完工間近であろうとも中断措置はありうると発言した。
米国は以前から、同プロジェクトの完成によって、欧州によるロシアへのエネルギー依存率が高まり危険であるとして反対を表明してきている。
ただ、同プロジェクト開発主体であるロシア国営企業ガスプロム(1993年設立)及び西側合弁企業によると、同プロジェクトの建設工事は95%程と完工間近となっているという。
今回、ラシェット党首が発言したのは、同日に行われた他政党の首相候補と言われる政治家らとの外交方針討論会の場である。
同党首は、“仮にプロジェクトが完工した後であっても、ロシア側がウクライナへの圧力強化のために同プロジェクトを利用するならば、同プロジェクトの稼働停止も辞さない”と付言した。
また、中道左派のドイツ社会民主党(SPD、1863年設立)のオーラフ・ショルツ党首(62歳)もラシェット氏に同調して、“同プロジェクトによって、ウクライナ経由の天然ガス供給や同国の安全保障が脅かされる恐れがある場合、同プロジェクトを支持することはできない”と言及した。
しかし、環境政党の緑の党(1979年設立)党首で、世論調査で支持率が2番となっているアンナレーナ・ベアボーグ氏(40歳)は、同プロジェクトそのものに真っ向から反対している。
同党は、今年9月の総選挙でSPDを抑えて第2党に躍進する勢いであるが、ベアボーグ党首は、“ウラジーミル・プーチン大統領(68歳)は、同プロジェクトによる天然ガス供給量を倍増させることで優位に立ち、ウクライナのみならず欧州連合(EU)そのものをも不安定にしようと企んでいる”と糾弾した。
ベアボーグ氏はその他、ラシェット・ショルツ両氏よりも強く中国、ハンガリー問題について強硬意見を述べている。
すなわち、同氏は、中国が人権侵害を続けている新疆ウィグル自治区で生産された商品を欧州に輸入すべきではないとして、中国の政策を非難している。
また、同氏は、同性愛を容認するような教材を学校が使うことを禁止する法律を制定しようとしているハンガリーに対して、価値を共有できない国へのEUからの助成金供出は止めるべきだとも主張している。
これに対して、ラシェット氏は、気候変動対策で中国との連携は必要であるので、中国と対話を継続する道は残しておくべきだと反論した。
また、ショルツ両氏は、中国を孤立化させるのは反対で、“世界を分断するような対応は慎むべきだ”と強調している。
更に、ハンガリー問題に関して両氏は、ハンガリー最高裁の判断を待った上でEUの態度を決めるべきだと主張した。
(注)ノルド・ストリーム2:2005年のロシア・ドイツ間の合意に基づき建設されて2011年に稼働開始した、バルト海底を経由してロシア・ドイツ間をつなぐ天然ガスのパイプライン(ノルド・ストリーム)を能力倍増させるプロジェクト。2019年に完工予定で立ち上げられたが、2014年のロシアによるクリミア半島併合問題に伴う対ロシア制裁の一環で、建設工事が大幅遅延している。
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